これからのこと
レオグルさんが私を庇ってから2日後。
彼は普通に働いていた。思わず怪我をした場所を触り、大丈夫なのかと何度も聞いたが平気だと繰り返された。
「本当は1日で良いんですが、あの後エーデルを宥めるのに時間がかかって。すみません、シャリー様。ご心配をおかけして」
「いえ……私の方こそ、ごめんなさい」
「あれは気にしないで下さい。ゼファー様の戯れですから」
本当に気にしていない。
でも、私と共に居るディル君とレファール君は揃って不機嫌。
「次は容赦しない」
「それ協力する。ぶっ飛ばしたいよね、ホント……」
変な所で盛りあがっている。
止められないから良いのかな。そう思っていたら「いました!!!」と同時に抱き着かれた衝撃に倒れそうになる。
幸い、レオグルさんのまとめて支えられてます。
「シャリー、探しましたよ? 今日で最後なんですからレナリともっと話しましょう」
「その辺で良いわよ。あとで兄様に、時間稼ぎに使った文句を言って来るから。ごめんなさいね、戦闘狂の所為で怖い思いしたでしょ?」
「あ、えと……レオグルさんとディル君に守ってもらったので、大丈夫です……」
金髪で紫色の瞳のエーデル様。
銀色の瞳に灰色の髪のレナリ様。……2人も、美しすぎるのに私に優しいです。
「でしょでしょ? レオグル、カッコイイもの!!!」
「エーデル。すぐに自慢するのはよくないわ」
「事実だもの」
「今回、アレスも頑張ったんだし自分のお兄さんの事も褒めないと」
「それはレナリの担当ってことで♪」
「……今、しょんぼりしているアレスが居るけど良いの?」
「レナリが慰めれば解決」
しょうがない子って言いながら、物陰からどんよりとした空気を纏うアレス様を見付ける。
そのままズルズルと引きずられていくんだけど……。
ディル君は「いつもあんな感じ」と言うから問題ないみたい。
「今回の事でヴァンパイヤの事を嫌いにならないで下さいね? 怖くなったら、また屋敷に遊びに来てください。あ、なら本部に――」
「レファール様の被害を受ける方が増えます」
「……うぅ。もうちょっと我慢します」
レオグルさんがピシャリと止める。
エーデル様も、アレス様と同じようにしょんぼりとしている。……流石、兄妹。
慌ただしく本部に戻ると、最初に室長から叱られました。
「ディル!!! 君、純血種を相手に喧嘩を売ったんだってね?」
「シャリーお姉さんが危なかったから仕方なく」
「本音は?」
「……前々からむかついてた、から」
「ダリュー様も居て止めなかったんですか」
ギロリと睨むも、ダリューさんは笑顔で「ラーバルに任せてました」と言い切った。
「ならこれ。ダリュー様宛――中身は請求書」
「え」
ラーバル様からの内容は簡単だった。
ダリューさんに対して、壊れた部分の請求書としてこれから200年分の給料を天引きするというもの。
王城を一部、破壊したのだから当然だよなと言う文句付き。
「……」
「シャリーさん。君はディル君とダリュー様と組んで、夢魔の討伐。全部消化するのに、そんなに時間は掛からない。元々はダリュー様の血が原因なのは知ってるしね。腐れ縁だし、君に助けられた人達が多いから手伝ってるんだし」
「イルト」
「文句は受け付けないです。騒動を止めれば良いものを、貴方が見逃したようだし? ラーバル様からあとで王城に来いだと」
「その間、食費は」
「知らない。自分でどうにかして」
涙目なダリューさんがちょっとだけ可哀想だった。
それを見ていると喧嘩していたのがバカらしくなって、ダリューさんに言ったんだ。これから一緒に生きるんですから仲良くお願いしますって。
「2000年分、寂しい思いをしていたのなら――今度は私が埋めます。寂しがり屋なダリューさん」
「俺も俺も♪」
驚いたように目を見開くダリューさんだったけど、彼は参ったのだと言った。
引き離すつもりで全然引き離せなかった。
だから、今度こそ――手を離さないでいるんだって。
その笑顔はいつものダリューさんで、私が知っている安心できて好きな人だ。
今までの好きな人達の分も含めて、私がダリューさんの事を寂しくないです。そう言ったら、恥ずかしながらも「よろしくお願いします」と言ってくれたんだ。






