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とある夢師と少女のその後  作者: 垢音
本編全9話
8/11

ひと悶着


「ダリュー。頼むから殺気出さないで……皆怖がってるから」

「誰の所為だと思ってる」

「私だって言いたいの? 今まで参加してなかった君が悪いんだろうに」




 私の回答にラーバルはため息交じりで答えた。

 今では純血種なんて名前が変わっているが、本来は始祖と呼ぶ方が正しい。ま、古い言い方を嫌って変えたいらしいがどうでもいい。

 

 血が特殊でヴァンパイヤよりも支配力は上。

 その気になれば、この場に来ている者達を全員操るのも可能だ。


 まさに化け物そのもの。畏怖を込められるのも納得というものだ。




「ねぇ……何でそんなに怒ってるの? 会議に呼んだのが理由じゃないよね。もしかして立ち尽くしてた彼女が原因?」




 無言で睨めばラーバルは納得するが、ポンと手を叩いて一言。




「レナリに護衛を頼もうか」

「何でそうなる」




 同じ純血種でそんな事をしたら目立つ。

 会議の前に今まで顔を合わせていなかった者達に挨拶を軽くすませる。ハンターの動向、ヴァンパイヤの中で怪しい動きをしている者が居ないかの報告をする為のものだろうに。


 食事はどうでもいい。

 酒もいらない。女もどうでもいい。


 イライラが募る……。

 シャリーに叩かれた頬が未だに熱を持ったように、うるさく知らせて来る。




(何でこんなに乱される……)




 避けられるのは覚悟していた。いや、そうなるように仕向けた。

 なのにおかしい。

 仕向けたのに、凄く息苦しい。イライラする……。




「くそっ……」




 乱暴に髪をかきむしれば、遠くで何かが壊れる音が聞こえた。

 ラーバルも不思議そうに振り向き、足早に向かえばレファール君がある男の腕を捻り上げていた。




「何度言わせれば気が済むの? 彼女は今回初めてで、僕達の客人なの。余計なことしないでくれないかな。ゼファー様」

「だがその女。匂いからして人間だろう? 抹殺するべきかと思ってな」




 既にやるべきことは終わっているが、シャリーは控室にいたはずだと記憶している。

 私とラーバルと同じ白い髪。短く切りそろえられ、体格のいいあの男はゼファー。純血種の中で戦闘狂としても有名だ。


 大人しいと思ったが、最後の最後で……。




「人間がここに居る理由を聞こうか。誰の眷族だ?」

「っ……」

「ゼファー様。戯れはお止めください」




 レファール君が牽制をする中、レオグル君が対処しようと動く。

 だが、奴が動くのが早い。


 シャリーに向けて血で作られた槍を生成し放たれるまで2秒。当たる直前に黒い壁がシャリーを守った。怪我はないが、ディルがキレるのもまた早い。

 その証拠に、彼の目が――私と同じ紅くなった。




「お前、殺すっ……!!!」

「ディル君っ」




 シャリーが止めるのとディルがゼファーを蹴ったのは同時。

 その余波で部屋は壊れ、涼し気に止めているゼファー。その間にレオグル君はシャリーを連れて行こうとするも、見えない壁に阻まれているのか突破が出来ない。


 


「アレス。ここに集まっているヴァンパイヤ達を避難させて。ここからホールなら距離はあるから被害は出さないようにする。レナリを使って、時間稼ぎをよろしく」

「人の妻を時間稼ぎかよ……」

「その前に私の妹だ。どう使おうがこちらの自由だろ?」

「うわぁ。お前……後で覚えておけよ」




 舌打ちをしたのは、銀髪に紫色の髪を1つに結んだアレス君。

 レファール君の兄であり、彼の性格の大部分は兄の影響だ。徹底的にエーデルちゃんを守る様に教育し、悪い噂があれば即座に叩き潰す武闘派。


 ……恐ろしい一家です。




「レオグルさん……!!」

「へい、き……です」




 泣きそうなシャリーの声に慌てて振り向けば、片膝をつき両腕から血を流しているレオグル君が見える。

 それに激高したレファール君は血の魔法でゼファーへと攻撃。

 向こうもそれを読んでいたのか、同時に放たれる魔法。




「待った、待った……!!!」




 ラーバルが止めるのも聞かずに、大きな爆発と強烈な光。

 結界を消したと同時にレオグル君とシャリーをアトワイル家の屋敷へと転送し、エーデルちゃんには念話を飛ばして事情を説明。


 それが終わり部屋だった場所を覗けば、目を回して倒れているディルと両腕を失くしていたゼファーが立っていた。




「ふんっ。純血種でないのが悔やまれるな……。俺の部下として来る気はないのか、レファール・アトワイル」

「誰がお前なんかの所に行くかバーカ。前に姉さんにちょっかいを出したから、今回はお返しだよ。次は足を消す」




 彼は母親の遺伝子の影響か、自分の体を自由に操作できる。

 いつもは少年の姿だが、今は青年との姿で瞳も元の紅い目。


 純血種の色と似ている事から、ハンターに狙われないようにと魔法で偽装していたが……怒ると普通に元に戻る。




「いいから止めろ!!! レファール、エーデルに言うからね!!!」

「うっ。それは酷いよ、ラーバルお義兄ちゃん……」

「うるさいっ。ゼファー、お前も覚えておけ!!!」




 ラーバルが怒っている間に、ディルの事を抱き上げると「ぶっ、とばす……」と気絶していても殺す気で動いている。

 安心して良いんだか、悪いんだか……。


 レファール君に押し付けて、屋敷の戻る様に言いむすっとしたまま「次に会ったら、問答無用で倒す」と物騒な事を言いながら去って行った。




「ダリュー。ここはお前に任せる。こっちは後始末が大変なんだ」

「どうぞ」




 文句を言いながら各方面に指示を出すラーバル。

 遠ざかる気配に安心したと同時――ゼファーの胴体を真っ二つにする。




「っ!!」

()()()()()見切れないなら、彼女に手を出すな。私を挑発したいんだろうが、次はないと思え。お前の持っている領土を更地にしても良かったんだぞ。さぞ眺めがいいだろうな……」





 血が特殊だから再生も早い。

 一応、脅しだと分からせる為に半分くらいは更地にしてもいいな。



 イライラしてたのもあってか、ゼファーの領地を軽く潰したのはいい気分だ。奴の部下が驚愕したように見ていたから「脅しだ」と言って姿を消した。


 アトワイル家に戻ったら、エーデルちゃんには泣きつかれて大変な目にあった。

 その間、アレス君に殺気を飛ばされる私の気持ちが分かりますか?


 貴方方を敵に回したくないので、大人しくしてて欲しいんですけど!!!




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