スキルの本質
「大丈夫、大丈夫!」
誰かの声がする。女の子かな
重いまぶたをひらくと、そこには青髪の目鼻立ちの整った女の子が、心配そうにこちらを見ていた。
「良かった」
「君は誰」
「私はミシェル・クール。君はもしかしてアルト・ナーグルくんかな」
「俺のこと知ってんだ」
「オートでも有名だからね」
「お礼を言ってなかったな。ありがとうミシェル」
「無事ならそれでいいよ。それより何があったの」
「酷い頭痛に襲われて、ワイバーンにボコボコにされてた。どうして俺は体に怪我を負ってないんだ」
「それは私のオリジナルスキルで水を操って助けたの」
「そうか、下手したらここで死んでたかもしれないな本当にありがとう」
「ううん。それよりもアルトくんのスキルってオリジナルスキルも覚えられるの」
「どうだろう」
スキルカードには飛行と加速以外の記載がなかった。
「無理みたい」
ミシェルの顔を見ると心配そうな目差しでこちらを見てきた。
「どうした」
「ねぇアルトくんどうして君はSPが0なの」
「えっ、」
確かにスキルカードにはSP0と記載があった。
「それがどうかしたの」
「えっとSPのこと知らないの?」
「うん」
「SPはスキルを覚えるときか戦闘系なら使うときに消費するポイントのことで、0なのにスキルを覚えたり使うと酷い頭痛に襲われるって、神殿で言われなかった?」
「言われてないな。多分神に選ばれたとかで興奮して、教えるのすっ飛ばしてたんだろうな。これはどうしたら増えるんだ」
「SPはレベルを上げることで増えたりするけど、元々のスペックみたいなものだから中にはレベルを上げても、4とか5しか増えない人もいるよ。でも、戦闘系で使ったSPは一日で回復するよ」
「そうなのか、どうやって帰ろう」
「今日はどうやってここまできたの」
「スキルで送ってきてもらった」
「その人はくるの」
「俺がスキル覚えたこと知ってるから多分こない……」
もう辺りも暗くなってるしな~どうしよう本当に
「私の使ってる倉庫に泊まる?」
「えっ」
「私今日は暗いからそこで泊まろうと思ってるから」
「いいの出会ったばかりの男」
「このまま放っおいたら私が王に殺されちゃうよ」
冗談めかして笑う
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
この時の俺はこのゴッドアイとこの世の中のSPのことを甘く考えていた。俺は冒険者には絶対向かない人間だったんだ
「ここの倉庫は普段何に使ってるの」
「討伐のときによくこの辺でしてるから帰れなくなりそうなときに使ってるの」
「へぇ~凄いな」
「そんのことないよ。それよりご飯作るけど苦手な物ある?」
「ないよ」
「私料理のスキルレベル5なんだ。だから美味しいよ多分」
家事スキルは最高7まで上がる。そう考えるとすごいな
「多分なんだな」
「人に食べさせたことないから」
「そっか~」
「まぁ見ててよ」
「わかった」
俺が倒したワイバーンの肉だろうか、他にも野菜を切って煮込んでいる。シチューか美味しそう、だ、な
「うっああああ」
体が光始めた。まさか料理スキルもなのか、でも戦闘系以外のスキルは個人のスペックを表すものでSPは使わないはずじゃ
ブッチ
意識がきれてその場に倒れ込む
「えっ、アルトくん!」
意識が戻ったのはベットの中だった。隣にはミシェルが顔と腕をベットにのせて眠っていた。
また、助けてくれたのか。感謝してもしきれない。
先ほどのことを考えると俺はどうしても認められない。感情が芽吹き始めていた。
ゴッドアイのスキルは最強ではなく最弱のスキルなのではないか。
見ただけで習得できる。これは強制的に習得させられ本来ならSPなんて要らないスキルでも使ってしまう。
これのどこが神に選ばれた最強のスキルなんだよ……
「これが王に知られたら俺はどうなってしまうのか……」
ミシェルをベットに入れて、俺は床で何も考えないように眠った。