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冒頭2

 ~ロレーシュ ウラージュオスト ロレーシュ軍海軍基地


 けたたましくサイレンが鳴り響いている。ここは戦場。次々と沈められていく軍艦に焼き尽くされる街並み。日本皇国がロレーシュにかつての北方領土の権利を求めて宣戦布告が行われたのはつい5時間前だ。電撃作戦の前にロレーシュ自慢の極東艦隊はすでにほぼ壊滅状態にある。ロレーシュ海軍はウラージュオストの軍港を放棄し、残りわずかとなった戦艦数隻を撤退させる気のようだ。

「こちら三徳、第一魔装部隊各員に告ぐ。敵残存戦力を追撃しこれを撃滅せよ」

『了解』

 部下六人からの威勢のいい返事が届く。ここで敵海軍戦力を討ち漏らすのは面倒だろうから、軍港制圧は海軍のやつらに任せるとしよう。

「こちら魔法軍所属三徳です。九重艦長、敵海軍戦力はウラージュオストを放棄し、華寧方面へ向かっております。我々はかの艦隊の追撃および掃討を行いますので、軍港の制圧をお願いしてもよろしいでしょうか」

 九重艦長は海軍では珍しく親魔導士の人物だ。きっと了承してくれるだろう。

「承知した。我が艦隊はこれよりウラージュオストの制圧作戦を開始する」

 よし、俺も追撃に行くか。

 魔力を放出して、撤退していく艦隊を追う。

 試作機時代から乗っているが、ウイングアームズはあれから劇的な変化を遂げた。まず、魔力の消費量が格段に少なくなり、魔導士は戦闘魔法を自由に使えるようになった。もう一つの課題、身体保護機能も俺のアイデアがうまくいったため、魔導士は身の安全を保障されている。これに関しては戦いが終わったらより深めていく必要があると思うがな。


 なんてことを考えていると、アラーム音がなり、体から一気に魔力が抜けていく。魔法障壁が展開された直後にミサイルが炸裂する。油断は禁物だな。自動障壁展開は魔力をドカ食いする。注意しなければな。

 爆風によって乱れた態勢を整えて、敵艦に向き直る。そう簡単にはあきらめないか。誰だって死にたくないもんな。でもな、こっちも覚悟して戦場にきてんだよ。

 腰部にマウントしていた剣を手に取り、構える。

 俺は遠距離魔法が苦手なんでな。楽に死なせてやれねぇが勘弁してくれよ。

「魔法式起動、中級魔法『獄炎』の展開を確認。目標を沈黙させる」

 魔法陣を纏った剣に魔力を思いっきり込める。

 自分の背丈の何倍にもなった獄炎をまとった剣を、敵艦橋へ向けて急接近しながら横一文字に叩き込む。いとも簡単に鋼が熔解していき、やがて真っ二つになった。司令部を落とされた船体は沈黙した。残りの艦も沈めようとし、加速しようとしてやめた。残りはもうすでに部下の『大衝波』によって転覆したか、『深霧』によって互いに衝突して沈んだり大破したりしてしまっている。部下たちも上手くやったようだ。


 この魔法による戦果、世界各国も驚いているだろう。たった7人の魔導士によって極東艦隊が全滅したとあれば。

 あと少しだけあいつの用意した舞台で踊るとしよう。残酷な殺戮ショーを演じることになっても。


「三徳より各員、次の作戦への参加は任意だ。残存魔力量が乏しいものは九重艦隊の立華に帰投せよ。余裕のあるものは陸軍戦力を叩く。魔導銃の準備を」


 ウラージュオスト上空で部下たちと集合し、預けていた魔導銃を受け取る。

 これが対人魔法兵器『種子島』か。戦艦など大型兵器を相手にしない時でも魔力を節約したいからな。ありがたい武器だぜ。


「制圧を開始する」

 ウラージュオストに部下たちと共にひっそりと舞い降りる。結局、部下たちは欠けることなく制圧作戦を開始した。ビルの陰から道路の戦車や歩兵たちをロックオンし引き金を引く。銃口からまっすぐに小さな火球が放たれ、それは歩兵の額に穴を穿ち、命を奪う。

「いたぞ、あいつらだ。よくも俺らの街を。お前ら撃てー!」

 無数の弾丸や砲弾が俺らにめがけて飛んでくるが、最小限の展開にとどめた魔法障壁によってことごとく防いでいく。やはり相手の攻撃は通じないか。結局、予想通り無慈悲な殺戮をすることになるのか。その後はただただ機械的に引き金を引いていた。


 また一人、また一人と、殺していく。頭を穿ち、心臓を抉る。手をもぎ、足をそぐ。戦車は機能せず、ただの火薬庫だ。彼らロレーシュ兵にとって、こんなに馬鹿げたことはないだろう。俺ら魔導士のエゴによって仕組まれた戦争。その被害者とも言える彼らに罪悪感を覚える。しかし、賽は投げられた。もう止まることはできない。

 空が白み始めてきた。もう部下も俺も魔力が切れそうだ。体力も限界に近い。当たり前か。夜通し戦闘すれば誰だってそうなるだろう。でももう戦う必要はない。敵は降伏した。俺らの勝ちだ。だが勝利の喜びなんて欠片もなく、後味の悪さだけが残った。

 その後、他の上陸部隊と合流し、旗艦立華へと帰還する。もう俺らの出番は終わった。あとはなるようになるだろう。

 罪悪感に疲弊したせいか、俺はぐっすり眠りに落ちた。目が覚めたら、皇国に帰り着いていて、もう戦争はおおかた終結していた。


 あれからしばらくして、ロレーシュ側が北方諸島およびウラージュオストの領有権と引き換えに和平を提案してきたそうだ。日本皇国側は念願の領土奪還だけでなく、ウラージュオストという極東の要所が得られることになりこの条件を快諾。たった一晩だったがこれにて日露戦争は幕引きとなった。

 そして、久遠の目論見通り魔法戦力の脅威が世界に知らしめられることになった。きっと世界は変わっていくだろう。それがどういった結末になるか俺にはわからない。でも、これから俺にはやらなきゃならないことがある。魔装士のための学校設立と俺より後の世代の魔導士が罪を背負わないようにすることだ。世迷言といわれても殺しあわなくていい世界を目指さねば。



「やあ三徳君、作戦の遂行ありがとうね。今回の戦争によって、これから魔導士の立場は大きく変わっていくよ。念願叶って一安心したね」

「久遠、まだ世界の答えは出ていない。だからこそ、お前にお願いがある」

「なんだい?君達には嫌な役目を押し付けたからね。何でも聞くとしよう」

 久遠にしては珍しく素直に応じたな。まあ、こっちにしてみれば好都合だ。

「魔装士が兵器とならないよう協力して欲しい。未来の人々がまた悲しみを背負わないようにな」

 彼の眉がピクリと動く。そしてうっすら笑みを浮かべる。

「当り前じゃないか。私の行いが魔導士へ不利益をこうむらせるのは私の本意ではないのでね。これからは君の手助けをしていくとしよう」

 魔導士のためだけに活動するわけじゃないんだが、こいつに行っても無駄かな。まあ、協力してくれるだけでいいとするか。



 それからの俺たちは魔装士教育に努めると同時に、魔装士たちが世界的に協力するための組織を立ち上げた。

 世界でも、各国が魔法戦力の前には現行兵器で太刀打ちできないと悟り、魔導士の育成へと方針を切り替えた。

 これからどうなるかわからないが魔装士たちが殺しあわないでいい世界を俺たちは目指していこう。

評価、ブクマよろしくお願いします。

見直し編集しましたが、まだ若干まとめきれてないかな。頑張ります。

ただいま本編執筆中です。随時更新していきたいのでよろしくお願いします。

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