王都(1)
朝日が昇り始めたころに目が覚めた。
顔を洗い朝ご飯を食べ僕は準備を始めた。
「弁当、水筒、ハンカチ、ティッシュ....」
一つ一つ確認しながら鞄の中に入れた。
「カケル、準備終わった?」
「終わったよ~」
僕は鞄を持ち母のところに行った。
「体調はどう?ちゃんと元気?」
「元気だよ、ママ」
母は僕をぎゅっと抱きしめた。
「いっぱい楽しんでくるのよ」
「うん!!」
母はずっと抱きしめていた。
「熱いよ、ママ」
「そうね」
母は離れた。
「ちょっと鞄を貸してちょうだい」
「はい」
母は手渡された鞄に何かをつけた。
「何つけたの?」
「これはね、カケルを守ってくれるお守り、カケルが怪我しないようにって願いが込めてあるのよ」
僕は手に取り眺めた、お守りには古代文字のようなものが刺繍されていた。僕は不思議なお守りに魅了されていた。
「カケル行くわよ」
「はーい」
僕は鞄を背負い外に飛び出した。
「おじさん、おはようございます」
「おう、おはよう、おまえはこっちから乗ってくれ」
僕は馬車の荷台に乗り込んだ。
「カケルをお願いね」
「おう」
しばらくすると馬車はゆっくりと動き始めた。
「いってきまーす」
「元気で居るのよ」
母は手を振り見送ってくれた。
馬車はスピードに乗り始め家は見えなくなった。
「なんだこれ」
馬車の中にはぽつんと犬のぬいぐるみが置いてあった。一人さみしかった僕はぬいぐるみを抱きながら外を眺めていた。ぬいぐるみを抱いているなぜか安心できた。
「ボウズ、王都で行ってみたいところはあるのか?」
「大きな時計塔に行ってみたいです」
「そうか~そんなら明日には連れてってやるよ」
おじさんと少し仲良くなった頃にはお昼になっていた。
「これ、おじさんの分です」
「おう、ありがとな」
僕たちは弁当を食べた。
僕は再びぬいぐるみを抱きかかえ外を眺めていた。見たことの無い景色だったので飽きはしなかった。
やがて馬車は大きな門の前に止まった。門の近くに居た兵士が馬車に向って歩いてきた。
男は振り返ると。
「ボウズ、俺がいいって言うまで絶対に喋らないでくれ」
「わかった」
男は馬車に魔法を掛けた。
「入国紋を提示せよ」
男は首から下げていたものを取り兵士に渡した。
「確かに入国紋だ、次は荷台を確認させてもらう」
「おう」
兵士は馬車の後ろに行き荷台の布をまくった。
「何も無いな」
兵士は男のもとに戻り入国紋を返した。
「入国を許可する、通ってよし」
「おう、感謝する」
馬車は進み始め大きな門を抜けた。
「ボウズ、もういいぞ」
「うん」
僕が喋ると魔法が解けた。
「あと少しで家に着くからな、もう少し待ってくれ」
僕は馬車のから町を眺めていた。道の脇には貧相な家が並んでいたが、国の中心に向かうにつれて店が沢山並び、少し豪華な家が現れた。
「着いたぞ」
僕は犬のぬいぐるみを抱きかかえ、鞄を背負い馬車を降りた。僕が降りると馬車は男の指輪に吸い込まれるように消えてった。
「こっちだ、入ってくれ」
「おじゃましま~す」
家の中は素朴だったが裕福そうだった。
「あら、この子がカケルくん?かわいいわね~私アンナ、よろしくねー」
家に入ると明るいお姉さんがいた。
「よろしくお願いします」
「自分のお家だと思って過ごしてちょうだい」
「ありがとうございます」
元気に答えた。
「お~い、こっちだ」
僕は走って男のもとに向った。
「ここがおまえの部屋だ、好きに使ってくれ」
「ありがとうございます」
部屋にはベッド、机、クローゼット、箱が置いてあった。
「何か訊きていことがあったら俺に言ってくれ、あと、もう少しで夕飯だから、その箱を片づけたたらこいよ」
男は部屋から出ようとした。
「おじさん」
「おぉ、どうした?」
半分閉まった扉から頭をだした。
「このぬいぐるみ馬車から持ってきてしまったんだけど...」
「おぉ、それか忘れてたな」
男が魔法を唱えるとぬいぐるみは光り出した。おじさんは魔法を唱えると部屋から出て行った。
一瞬強くぬいぐるみは光った。
「ワン、ワン、ワン、ワン」
眩しくって目を閉じていた僕の顔を何かが嘗める感触がした。
「コロー」
「ワン」
僕は時間を忘れてコロとじゃれ合っていた。
「あっ、そうだった、おじさんに言われたことを済ませなくちゃ」
僕は鞄をベッドに起き部屋にあった箱を開いた。箱の中には僕の服がぎっしり詰まっていた。
「急ぐぞコロ」
僕は服をクローゼットにしまうとコロと部屋を出た。
今週金曜次話投稿予定