来訪者(2)
コロが舐めるのを止めると男の子は白目をむいていた。僕が頬を突っついてもビクともしなかった。
「やり過ぎだぞ、コロ」
「ワゥー」
落ち込んだように鳴いた。
体を揺らしたり、顔をつねったりしたが白目のままだった。僕は水筒で湖から水を汲み顔に掛けてみた。
「うゎ、冷た」
男の子は飛び起きた。
「何をするんだおまえは、すやすや寝ていた人に水を掛けやがって」
「体は大丈夫なの?」
「まったく問題ないが...」
「それは良かった..」
僕が一息つとくと
「良くないわぁぁぁー、おまえのせいで悪夢にうなされたんだぞこっちは、大きな犬に襲われることがどんなに恐ろしかったか、おまえはどう責任をとってくれるんだーーーー」
男の子の頭が爆発しそうだった。
「顔に水を掛けてごめんなさい」
「ワゥ~」
コロと僕は素直に謝り頭を下げ続けた。
「もう良い、二度とこんなことはするな」
「わかりました..」
「ワン」
コロはうつむいていた。
「さっきから犬も謝っているが、何かあったのか?」
「えっと、それは...」
「何かあるのなら、早く申すのだ!!」
「うぅぅぅ...」
僕が話すべきか悩んでいると。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~」
男の子は恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
「お腹空いたの?」
「そうだが、何か問題があるか!」
逆ギレするように言った。
「弁当はあるの?」
「無い」
俯きながら言った。
「なら、僕の弁当一緒に食べない?」
男の子はキラキラした目で僕を見つめた。
「良いのかもらって...」
「もちろんだよ、一緒に食べよ」
僕は男の子の手を掴み平たい岩まで引っ張って行った。
三人で弁当を食べ始めた。
「むっ、なんと美味しいのだこれは」
男の子は一口囓った唐揚げを持ち上げながら言った。
「美味しいよね~唐揚げ」
「これは唐揚げというのか..なんていう名前のシェフが作ったんだ?」
「ママだけど...」
「そうか、ママというシェフが作ったんだなー、ぜひ我が家で雇いたいと伝えてくれぬか?」
「ママってお母さんのことなんだけど...」
「なんと、母上様が料理をなさるのか珍しいなー、シェフは雇ってないのか?」
「雇ってないけど...」
「おぬしの家庭は変わっておるなー」
僕は男の子を不思議思った。色々会話しながら昼食を食べ終えた。
「唐揚げ美味しかったぞ、ありがとうな」
男の子は礼を言った。
「ワン、ワン」
「おぉ、コロも食べ終わったか、弁当美味しかったな~」
「ワン」
大きく返事をした。
「これからどうするんだ」
「湖で魚探しだけど...」
僕は七色に光る魚のことを話した。
「なんと、そのような魚が居るのか、僕も見てみたいから一緒にさがすぞ」
弁当を食べ終えた三人は湖の周りを歩き始めた。
「う~ん、なかなか見つからないね」
「そうだな~」
「ワゥ~ン」
しばらく歩い疲れた二人は木の側で一端休憩を取ることにした。二人は寝そべりながら空を眺めていた。
「見つからないな~」
「今日は見つけられる気がしたのに...」
「少し休んだらあと一周だけ探すことにするか」
「そうだね」
「君ってどこに住んでるの?」
「ユスティム王国だぞ」
「王国には大きな時計塔があるんでしょー行ってみたいなー」
「あれは王国のシンボルだからな、間近で見るともの凄い迫力なんだぞー」
「いつかは行ってみたいな~」
「王都に来たら僕が案内してやるよ、いっぱい凄いとこに連れてってやると約束してやる」
「ちょっと小指出して」
僕は小指を自分の小指と絡ませると五回上下に振って小指を離した。
「何したんだ?」
「ママが教えてくれたおまじない、これをすると絶対に約束が果たされるんだって」
「僕が約束を守らないはずは無いな」
僕は微笑んだ。
雲の流れを見ていると
「ワンワンワンワン」
段々と近づいてくるのが分かった。
「ワンワンワンワン」
コロは寝そべっている僕を前足で起こした。
「どうしたんだ?キラキラな魚でも見つかったか?」
「ワン」
大きく吠えながら頷いた。
コロは頷くと、すぐ湖に駆けて行き、やがて止まりこちらに吠えていた。僕は飛び起き、寝そべったいた男の子を起き上がらせ手を引っ張ってコロを追いかけた。
「はぁはぁはぁはぁ、急に、走り出して、どうかしたのか?」
息を切らしながら訊いてきた。
僕はコロのもとに着くとすぐに湖を見ていた。
「いた~」
「何が、居たんだよ-」
「探してた魚が居るんだよ」
男の子は僕の指さす方を見た。
「うゎ~~~」
男の子は七色に光る魚に魅了されていた。
「家にあるどのお宝よりも綺麗だ~」
「でかしたぞ、コロ」
思いっきり撫でるとコロは大きく尻尾を振っていた。
後編は来週月曜日投稿予定