来訪者(1)
子犬の名前はコロになりました。
ピクニックから数日後
「トン、トン、トン」
扉を叩く音に起こされた。
母が扉を開くと、がたいの良いこんがり日焼けした男が立っていた。
「よぉ、元気してたか」
「元気よ、あんたは変わらないわね」
「まぁな」
男が家に入ってきた。
「ここに座って」
「おう、すまん」
母は男を机に座らせた。
「紅茶入れるわ、砂糖とミルクはいるわよね」
「おう、砂糖いっぱいで頼む」
「あんた、若い頃と同じ生活をしてたら病気になるわよ」
「俺は根っからの甘党だからな、大丈夫だ」
男は誇らしく言い、母は苦笑いした。
僕はベッドから出て母の居る方に向った。
「ママ、おはよう」
「おはようカケル、顔を洗っておいで」
黙って頷いた。
「おぉ、ボウズじゃねぇか大きくなったな~」
男は僕に近づき大きな手で僕の頭を撫でてきた。
「うぅぅぅ」
僕の頭は左右に揺らされた。
「すまん、つい強くしてしまったな」
僕は大きな手から解放されて外へ歩いて行った。外には馬車が置いてあり、その側でコドラが休んでいた。
「赤ん坊だったボウズがこんな大きくなっていたとはなぁ」
「もう、10歳ですからね、月日が経つのは早いわね」
「そうだな、あれから九年になるか...」
しばらくして
「はい、紅茶」母はこれでもかというほど砂糖を入れた紅茶を男に出した。
「おっ、ありがと」
男が紅茶を飲んだ。
「久しぶりに飲んだがエレナの入れる紅茶はやっぱ、うめぇな~」
「いつもありがと」
微笑みながら言った。
僕が顔を洗い戻ってくると
「朝ご飯出来てるわよ、ここに座って」
「はーい」
僕は机に座った。
しばらくすると、美味しそうな匂いに誘われコロがやってきた。
「おはようコロ」
「ワン」
コロは元気に挨拶をした。
僕とコロは一緒に朝ご飯を食べた。
朝ご飯が終わると
「カケル、今日はコロと一緒に外で遊んできてちょうだい」
「はーい」
「ワン」
僕は動きやすい服に着替えた。
「これお弁当だからお昼に食べてね、コロの分も入っているから」
「はーい、いってきまーす」
「気をつけていってらっしゃい」
僕とコロは勢い良く家を飛び出した。
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「おまえが俺を呼ぶって事は何か起こったのか」
母も机に座った。
「この前、ルコ山にピクニックに行ったとき奴らがいたの..」
「本当か、で何人いた?そつらの名前はわかるか?」
男は顔色を変えて言った。
「男二人で、残念だけど見たことない人」
「何か特徴は無いか?」
母は少し考えた後
「二人は兄弟みたいだったわ、兄のほうは奇妙な色のゴーレムを召喚してたわ」
「うぅ~ん」男は考え始めた。
「もしかすると、デコボコ兄弟かもしれんな」
「何体もの属性ゴーレムを召喚する兄デコワトルと超巨大ゴーレムを召喚し大地を砕く弟ボコルド、四年くらい前、学院の大会で上位に入っていたやつらだ」
「違うか?」
男は記憶を手の上に映し出す魔法を唱え母に見せた。
「おそらくその人達だわ、ゴーレムの色が同じだもの」
「てことは、デコボコ兄弟だな」
「奴ら、まだおまえを探しているのか、まったくクソやろう共だぜ」
母は微笑んだ。
「あんたに頼みたいことがあるのだけど...」
「俺に出来ることなら何でも言ってくれ、あいつにはデカイ借りがあるからな」男は微笑みながら言った。
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家を飛び出した僕は湖に向っていた。
「今日はキラキラな魚見つかるかな~」
「ワン」
「コロは見つかると思うんだな、今日はいつもと違う気がするもんな~」
「ワン、ワン」
湖に着いた。
「僕はこっち探すから、コロはあっちね」
「ワン」
僕とコロは湖の周りを駆け回った。
しばらくして
「コロー、そっちに居たかぁ-」
「ワゥ~」
コロと合流した。
「やっぱり見つからないな~、お腹すいたしお弁当にするかコロ」
「ワン!」
僕とコロは平らな岩に座って弁当を取り出した。
「これはコロの分な」
「ワゥ~」
弁当を開いた。
「うわぁ~大好きな唐揚げだ~」
「いっただきまーす」
唐揚げに箸をのばそうとすると
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
腹の鳴る音が聞こえた。
「コロか?」
コロは首を左右に振った。
辺りを見渡すと木の後ろからこちらを見つめている男の子が居た。男の子は僕の視線を感じすぐに隠れてしまった。
コロと僕は弁当を置き木に近づいて行った。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ」再び大きな音が響いた。
コロは木の後ろに駆けて行った。
「ワンワン、ワンワン」
「うわぁ、こっちくるな~」
男の子は、コロに押し倒され顔を舐められていた。
「やめろ、やめろ、やめてくれ~」
僕が男の子に近づくとコロは離れた。
「まったく、顔がベタベタではないか」
手で顔を拭いた。
「大丈夫?」
「大丈夫ではないわ、まったくしつけをしてないのかおぬし」
怒った様に言った。
「ワン、ワンワンワン」
コロは嬉しそうに男に再び近づこうとすると
「来るな、来るな、僕に近づくんではない!!おまえー見てないで早くその犬をどうにかしろーーー」
「ははは、コロは君のこと好きみたいだね」
「ワン」
元気よく返事をすると男に飛びついた。
「やめてくれぇぇぇぇーーーー」
再び顔を舐め始めた。