表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/141

93.今後の懸念

しばらくは週1ペースの更新になります

「さて……やりすぎた気もするが、仕方ないよな」


 ギーゼルヘールは文字通り灰となった旧城塞都市トーリアを見て、気まずそうに頬をかいた。

 都市シュタットクラスを放置していれば、ゆくゆくは力を蓄えてもっと大惨事を引き起こしていただろう。

 いくつか考えられる選択肢で最悪なのは、聖国そのものが攻め滅ぼされてしまい、国家シュミットが誕生することだ。

 

「後のことは陛下たちに任せよう」


 ギーゼルヘールは強いが、政治や外交は素人でしかない。

 聖国との交渉は専門家に任せるべきだった。

 帝都に帰還し、報告すると皇帝や宰相たちは頭を抱える。


都市シュタットクラス……話に聞いたことはあったが、今の世の中で現実化するとはな」


 皇帝がぼやいたのは無理もない。

 魔術や魔術具、装備、文明が発達した結果、魔物の大規模な襲撃に対しても早めの対応が可能になった。

 事態が深刻化する前に発見され、鎮圧されやすくなったのである。


「よもやと思ってそなたを差し向けたが、まさか本当にそのような事態になっていたとは」


「聖国も対処能力はあったはずなのですが?」


 皇帝に対してギーゼルヘールは不思議そうに言う。

 聖国は大国のひとつとして数えられるだけの国力を持っている。

 どうして城塞都市を失うほどの事態になってしまったのか、彼は首をかしげたかった。

 宰相が苦虫を噛み潰したような表情で答える。


「あの国は国王派と神殿派の仲がかなり悪い。情報をきちんと共有して協力し合えば恐れるに足りない事態でも、協力せずに事態を悪化させてしまったのだろう」


「迷惑な話ですね……」


 ギーゼルヘールは顔をしかめた。

 力が足りなかったならばまだ分かるし、救いの手を差し伸べるべきだと彼は思う。

 しかしながら、内輪もめが原因で解決できることを解決できないとなると、迷惑以外に何と言えばいいのだろうか。


「いずれにせよ聖国には通達し、それなりの報酬を要求する。ご苦労だった、下がってくれ」


「はっ」


 皇帝に拝礼をしてギーゼルヘールは退出し、そのままクロードのところへ向かう。

 彼が通されたクロードの屋敷の応接室にはバルとミーナが先に来ていた。


「ふたりとも来ていたのか」


 ギーゼルヘールはそう言ったものの、声に驚きはない。

 メイドが彼にもお茶を出してくれ、引き下がったところでクロードが口を開く。


「それでどうだった? 陛下の取り越し苦労だったのならいいのだが」


「酷いものだったぞ」


 ギーゼルヘールは顔をしかめ、吐き捨てるように言った。

 皇帝の前では遠慮したが、今この場では必要ない分力がこもっている。


「まさか生きているうちに都市シュタットクラスの魔物を見ることになるなんてな」


都市シュタットだと?」


 クロードは唖然とし、バルは軽く身じろぎをし、ミーナですらピクリと眉を動かした。

 

「ギーゼルヘールが派遣されたのは正解だったわけか。いつものことながら、陛下には恐れ入る……」


「同感だな」


 クロードの感嘆にバルはうなずく。


「このままではまだまだ陛下は退位できないぞ。少なくとも、事態が落ち着いたと思われるまではな」


 ギーゼルヘールも賛成した。


「そうだな。アドリアン殿下は決して暗愚ではないが、火急の事態への対応については未知数だ」


「ところで都市シュタットクラスとなると、ただ敵を倒して終わりとはいかなかっただろう?」


 クロードの問いに彼は首を縦に振る。


「ああ。やむを得ず、城塞都市を丸ごと破壊してきた。後で聖国に難癖をつけられなければいいのだが」


 ギーゼルヘールの不安は、クロードもバルもよく理解できた。


都市シュタットクラスが出現して、都市ひとつの被害ですんだのは幸いとすべきだが、それが分かるような聖国ではないな」


 バルが舌打ちし、クロードは苦々しい表情になる。


都市シュタットになるまでにどれだけ被害が出たのか、想像しただけで胸が痛くなる。後手に回った聖国の上層部どもの無能さには吐き気がする」


 という発言にギーゼルヘールが目を丸くした。


「おいおい、ずいぶんと過激だな」


「無能なトップなど害悪でしかないわ」


 クロードは吐き捨てるように言う。

 その語気の強さにギーゼルヘールは沈黙を選ぶ。

 

「問題はそれだけではないだろうな」


 バルは不意にそのようなことを言った。


「どういう意味だ?」


 ギーゼルヘールが渡りに船とばかりに問いかけてくる。


「八神輝の力はこれまであまり知られていなかった。わが師ユルゲンが一国を潰したのも、今となっては誇張と思われているくらいだ」


 バルの言いたいことはすぐに彼やクロードも察した。


「……そうだな。八神輝の力に誇張はないと知った、他の国がどう出るかだ。狙ってやったのなら、魔物側にも策士がいるな」


 クロードが忌々しそうな表情で舌打ちをする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ