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68.デュオニュースの覚書

 いつか来たるであろう日に備え、子孫のためにこれを遺す。

 魔界の民は魔界扉イビルゲートを自力で開けることができない。

 魔界扉を開けるのは地上界の者だけであるという。

 だが、それとは別に「悪魔召喚の儀式」を行えば、魔界の民を呼び出すこともできる。

 今回の戦いはとある王国で政争に敗れた貴族が、起死回生を狙って悪魔召喚で魔界の将軍を呼び出したのが全ての始まりだ。

 将軍は貴族に力を与えて反撃させ、魔界扉を開きやすくさせたという。

 将軍クラスが地上に来たところで、魔界扉を開くことはできない。

 あくまでも地上界の者たちを利用する必要があるらしい。

 そして開いても一度に地上に来れる魔界の民の数には上限があるみたいだ。

 でなければ九の元帥が全員現れなかった理由が分からない。

 現時点で分かっている限りの情報だ。

 肝心の何をどうすれば魔界扉が開くのかという件は関与したと思われる者たちが全て殺されており、魔界の民の誰もしゃべらなかったため、条件の詳細は不明である。

 地上界の者が馬鹿なことさえしなければ事態の再発は防げるかもしれないが……無理なのだろうな。

 魔界の民と彼らを手引きした地上界の馬鹿どもは、一枚岩ではなかった。

 魔界の民からすれば地上界の生物は全て蹂躙する対象、もしくは奴隷の如き存在に過ぎないのだろう。

 このような事態を引き起こした馬鹿どもに同情の余地はないのだが、それを差し引いても魔界の奴らには嫌悪する。

 対悪魔魔術を開発し、後世に伝えていくよう頼んでおいた。

 万が一の場合、対抗手段として残っているかどうかまでは責任とれない。

 わが子孫たちに愚か者がいないことをわれらが神に祈っておこう。

 次に魔界の奴らについてだ。

 魔界の元帥は九名おり、その上に四の公爵がいるという。

 元帥は九の軍団を従えていて、三の将軍と九の軍団長がいる。

 私と仲間が戦って思ったのは将軍と軍団長は強いが、彼らさえ倒せば残された軍団は大混乱に陥るということだ。

 強力な個である上官が全てを決めるという、特定の個に依存しきった制度が採用されている。

 上にいくほどより強大な実力を持っている魔界の民ならではのシステムなのかもしれない。

 そのおかげで我々は少ない戦闘回数で、グレゴー元帥と直接対決に持ち込むことができた。

 また同じようなことがくり返されたならば参考にしてもらいたい。

 グレゴーはどうやら戦術に明るくないらしく、将軍を失って混乱している部下たちを立て直すことができなかった。

 ただし、それを補って余りある強さだった。

 神々より授かった七つの武器のうち五つが破壊されてしまい、仲間のうち生き残ったのは私とラインハルトだけだった。

 グントラムが自らの命と引き換えに発動する禁忌魔術を使ってくれなかったら、私たちも危なかっただろう。

 回復魔術に関しても見直す必要がありそうだが、私はあまり得意ではない。

 グントラムさえ生きていてくれれば何とでもなったものを……。


                                    「デュオニュースの覚書」より


「以上です」


 ミーナが読み終えると、黙って聞いていた皇帝、宰相、八神輝は複雑そうな表情になる。

 

「肝心な点が分からないままだから、正直あまり参考にはならなかったな。いくつか分かったことはあったが」


 みなが思っても遠慮したことを遠慮なくはっきりと言ったのはバルであった。

 彼は自分が言うのが最も波風が立たないと考えての発言である。

 

「否定はできませんね」


 ミーナは怒らずに答えた。

 皇帝がけわしい表情で口を開く。


「バルトロメウスが元帥と不意に遭遇した理由も、説明はできると思う。元帥と言えど、己の力で魔界扉を開くことができないのだ。つまり、開くための何かをやろうとしていたところを、バルトロメウスが発見したのではないか」


「バルトロメウスが見回りしていてくれたのが幸いでしたね」


 皇太子アドリアンが安堵の表情で言う。

 バル以外の者であれば元帥に返り討ちにされていたかもしれないのだから、当然の反応だった。

 

「魔界の民が自分たちだけで魔界扉を開けないのは、朗報だったと思います。同時に、敵勢力についても分かった気がします。奴らは魔界勢力を利用しているつもりで、利用されていそうだ」


 クロードの発言に続き、マヌエルが疑問を投げる。


「けどよ、奴らはなぜこの国を狙ったのかが分からんな。まさかこの国に魔界扉があるって言うんじゃないだろうな?」


 他の面子も予想していなかったわけではないのだろう。

 重苦しい空気が場を包み込む。


「それはおかしいな」


 バルが口を開く。


「それだったらもっと戦力を集中させていたか、あるいはもっと目立たたないように行動したんじゃないか? 魔界扉を開かないかぎり、魔界の戦力を大量に呼べないならな」


「……訳が分からんな」


 皇帝はため息をつく。


「おそらく魔界側と地上側はかみ合っていない。意思疎通も適切に行われていない。だからこそだと考えたほうがいいかもしれない」


 彼はそう言うとミーナにたずねた。


「魔界扉を探す方法などは書かれていないのだな?」


「ありませんね。おそらくそこまでは分からなかったのでしょう。祖デュオニュースはインヴァズィオーンを経験したと言っても、全ての出来事に立ち会っていたわけではないのですから」


 彼女は淡々として答える。


「それは仕方がないな。何しろ世界規模の戦いだったのだから」

 

 いくらデュオニュースが長寿のエルフで偉大な魔術師だったとしても、世界で起こっている全てを把握できるはずがない。


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