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23.また失敗

「また失敗か!」


 とある場所にて組織の幹部が怒鳴った。

 その秘書である女性が仕方なく応える。


「ふたりほど失いましたが、どちらも捨て駒です。我々の計画に支障はありません」


「そんなことは分かっている!」


 幹部は秘書を怒鳴りつけた。


「問題は連続して失敗したということだ! 何故失敗する!?」


「そんなの簡単です。帝国にちょっかいを出すからでしょう」


 と秘書の女性は思ったが、声には出さない。

 今の幹部にそんなことを言えば殴られるどころではすまない危険が高いからだ。

 彼女は命がけで諫めるほどの忠誠心を幹部に対して持っていない。


(馬鹿な男ね。帝国なんて他の国を潰したあと、こっちの戦力をたっぷり充実させてから相手にすればいいのに)


 秘書はこっそりため息をつく。

 彼女が見る限り、上司の幹部はどうしようもなく愚かだった。

 戦力的には最強と言われる帝国ではあるが、彼らの計画的には後回しにして支障はない。

 それなのに上司はちょっかいを出して、闇の召喚術の使い手と集団転移魔術の使い手を失ってしまった。

 彼らふたりは実力的には高くなかったが、召喚術と集団転移の使い手は組織の中で割と珍しい。

 「帝国の戦力を調査し、あわよくば削っておく」という名目で上級幹部から貸し出されたのだが、貸し出したほうもまさかふたりとも失うとは夢にも思っていなかっただろう。


(そりゃ責任も追及されるでしょうし、荒れるのは無理ないわね……私まで咎められなきゃいいけど)


 残念ながらただの幹部や秘書ごとき、代わりはいくらでもいる。

 秘書は冷静に自分だけ助かる計算をし始めていた。


(それにしてもおかしいと言えばおかしいわよね。ガーゴイルの群れは帝都に差し向けたのだからまだわかる。けど、それ以外の地域でも損害らしい損害が出なかったなんて。まるで全部こっちの手を読まれている?)


 彼女は計算するタイプであり、相手も自分と同様に計算していると思っている。

 それだけに少々深読みしすぎる癖があった。

 彼女は自分を切れ者だと思っているが、実はそうでもない。 

 組織の上はこの両名が協力し合えば割とバランスがとれたコンビになると期待していたのだが、幹部は功を焦って暴走しがちだし、秘書はそれを本気で止めないという始末だった。

 

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

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