吉報
「ヴィルヘミーナ様がマーズリー元帥を倒しました!」
という報告が帝都の城にもたらされ、歓喜の声が爆発する。
「すげええ!」
「一人で元帥を倒してしまったか」
日頃ミーナのことを快く思っていなかった人たちも、彼女の力に素直に感謝した。
さらにもう一人伝令が駆け込んできて、勝報をもたらす。
「クロード様、マヌエル様、シドーニエ様がグラオザーム元帥を倒しました!」
「本当か!?」
「これでこの大陸に攻めてきていた魔軍は壊滅状態!」
「オオオオオオオッ!」
城が大いに揺れ、皇帝と宰相は微笑で黙認する。
八神輝が負けたら人類は滅亡するという過酷すぎる状況にさらされていたのだ。
少しくらい解放された喜びを味わってもいいだろう。
だが、彼らだけは喜びにひたっているヒマはない。
「クロードたちを呼び戻し、休息させろ。他の軍も追撃は禁止する。交代で休みに入れ」
「はっ!」
皇帝の判断は臣下思いであると同時に、冷酷でもあった。
国外に逃走した魔軍がどうなろうと帝国は関知しないのである。
もっとも、魔軍を撃退するのに帝国だけ頑張るのはおかしいし、新手が現れることに備えるという理由もあるので、
他国に非難されるいわれはないと彼らは思う。
「お見事です」
と宰相の近くにいたバルが言った。
「陛下のバルトロメウス温存策、見事に的中ですな」
と宰相も皇帝を褒める。
最強のバルを抜きに元帥を撃破できるのか、というのは賭けでもあった。
最悪の場合ミーナが二連戦するか、さらにバルも出ざるを得ない展開もありえたのだ。
「ここまではな。肝心なのは敵の首魁を、バルトロメウスが倒せるかだ」
皇帝はまったくうれしそうにせず、慎重な態度を崩さない。
「休息をとったミーナを念のために連れていきたいのですが」
とバルは希望を言う。
万全を期すなら自分一人では足りないかもしれないと。
「当然だな。お前とヴィルヘミーナぬきでも元帥を倒せることがわかった。むしろ二人で行ってもらいたい。
さすがに三人目は送れないが」
と皇帝の返事に彼はうなずいた。
彼らについてこれるとしたらクロードくらいのものだろう。
だが、クロードは帝国の守りに必要だ。
バルとミーナが敵の首魁、公爵と戦っている隙に他の魔軍がやってこないとはかぎらない。
公爵の情報はあまりにも少なく、どうしても慎重になってしまうのだった。
まず、ミーナが自力で戻ってきて城に顔を出す。
「どうだった、ヴィルヘミーナ?」
と宰相が問いかける。
「かなり手ごわいな。無傷で勝つためには杖と首飾りの両方を使わざるを得なかった」
彼女はそう言ってまだ身に着けている二つを、指で示す。
「元帥の強さが杖を持ったミーナ級と考えると、クロードにマヌエルとシドーニエをつけて正解でしたね」
とバルは言った。
「クロード一人だと負けていた可能性が高かったか」
皇帝はため息をつく。
魔軍は思っている以上に強大だ。
「だが、元帥は二体とも倒せましたぞ」
宰相は希望を提示する。
「そのことだが、直属の将軍がそばにいた。他の者の話を聞くと、将軍のそばに直属の軍団長が」
とミーナは話す。
「つまり公爵のそばには直属の元帥がいるかもしれない」
「うむ……バルトロメウスの希望もあって、そなたも一緒に行ってもらいたい」
彼女の警告に皇帝はうなずいて言う。
「私も、ですか?」
ミーナは確認するようにバルを見る。
「公爵直属の部下や護衛がいた場合、お前に排除してもらいたいんだ。さすがに公爵と同時に戦って勝てる自信はない」
と彼は言う。
「御意。ポーションを飲めば五分ほどで回復するので、少しだけお待ちください」
彼女はそう言ってポーションを取り出して飲み干す。
「それで? 敵の首魁はどこにいるのかわかったのか?」
と彼女は皇帝に問いかけた。
「推測だが、中央大陸から動いていない。こちらの諜報に気づいていながら無視している気配すらある」
皇帝はそう答える。
「各地に送り込んだ部下を倒したらいつでもかかってこいと言わんばかりだ」
宰相が付け足した。
「その自信が命取りになると教えてやるべきですね」
ミーナがバルに好戦的な笑みを向ける。
「もちろんだ」
彼は大きくうなずいた.




