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魔軍の大攻勢

 グラオザーム元帥が率いる魔軍の攻勢は止まらず、王国は首都を含む四つの都市以外すべて

攻め落とされてしまった。


 一方でアビス公爵はグラオザームだけに任せていると時間がかかりすぎると判断し、他の元帥も

動かすことに決める。


「帝国にも軍を送れ。戦神バルトロメウスとやらの首を持って来た者こそ、第一功だぞ」


 とアビスは告げた。


 魔界の軍勢は彼らなりに調査し、帝国八神輝とバルトロメウスの存在も把握し、その上での戦力投入

である。


 ラオブ元帥はアビス直属として残ることになり、派遣されたのはマーズリー元帥と直属の軍団だった。

 

 彼らは転移ゲートを使い、一気に帝国の各地へと押し寄せる。


「あ、あれは魔物の軍勢だ! 大軍が攻めてきたぞ!」


 錬度も士気も高い帝国兵は、転移してきた【魔界の軍勢】にすぐ気づき、大きな声と魔術具で味方に知らせた。


「ほう? なかなかいい反応だ」


「話に聞く帝国とやら、有象無象とは違うというわけか」


 マーズリー元帥はにやりと笑う。

 それでこそ落とし甲斐があるのだし、第一功を立てられるというものだ。


「さあ、殺せ! 地上の民は皆殺しだ!」


 彼の号令に配下の軍勢たちが雄たけびをあげる。

 

 帝国に攻め込んだのはマーズリー元帥が率いる軍勢約四十万。

 元帥の下には四名の将軍と十二の軍団長がいる。

 

 マーズリーは三の将軍が率いる約三十万の軍勢を、三つの地域にバラバラに転移させて進撃させた。

 兵力分散の愚を犯したとは断じるのは難しい。


 個々の能力では平均的な人間よりも、【魔界の民】のほうが上回っているからだ。

 

 マーズリー自身、特に慢心したつもりはなかった。

 ゲパルドゥを討った存在を意識しているから、手元に将軍一名と十万の軍勢を置いたのである。


「まずはあぶり出しだな。帝国が保有する最大戦力たちをな」


 とマーズリーはつぶやく。

 


 まず最初に動いたのはフリューリング将軍で、手近の町ラールを一個師団に襲わせる。

 彼らは特に敵の精鋭を撃破しようというタイプではない。


 むしろ非戦闘員をなぶり殺しにしたいという残念なタイプだ。


「女子供は逃がせ! 城に急いで連絡しろ! 男たちは武器を手に取って戦え!」


 いきなり襲われた町の長の決断は早く、指示も間違いとは言えなかった。

 だが、やはり先手を取られたのは痛かった。


「私たちだって戦えます! 徴兵されて訓練を受けているんだから!」


 女性たちはそう言ったが、町長は彼女たちの意見を退ける。


「この町は死ぬ。正規軍や騎士団、八神輝が来るまで少しでも多くの時間を稼ぐためにな」


 無表情で厳かに言った町長の言葉に、女性たちは声を失う。

 魔物の大勢力に奇襲された時点で、彼は覚悟してしまったのだ。

 

「なに、単なる捨て石にはならないさ」

 

 彼は笑みを浮かべて女性たちを城へと逃げるよう、再度すすめる。

 彼女たちが脱出するよりも先に、敵の先鋒が町に押し寄せてきた。


「さあ! 逃げろ! 我々が心配なら、何とかえらいさんを説得して、騎士団か八神輝を連れて来てくれ」


「わ、わかりました」


 女性たちは泣きそうになるのを堪え、小さな子供たちと年寄りの手を引いて、町を後にする。


 それを気取られぬために、最前線で魔物と武器を交える若い男性たちは、威勢がいい声をあげた。


「かかってきやがれ、魔物ども! 帝国の民はみな戦士だ! 簡単には負けねえぞ!」


 徴兵されて戦闘訓練を受けたことがある男たちばかりなので、完全な嘘というわけではない。

 だが、半分くらいは虚勢だった。


 数時間の戦いの果てに、ラールの町は陥落した。


「……女どもがいないな。幼子もいない。逃がしたか、小癪な」


 部下の報告を受けて町の様子を見に来たフリューリング将軍は舌打ちをする。

 女子供を殺しつくさねば、地上の民を滅ぼすことにはならない。


「まあいいわ。しょせんは町一つよ。我々の本当の目的は帝国の大都市だ。万単位の兵と民を殺しつくし、地上の民を絶望させてやろう。

そうすれば八神輝とやらも出てくるだろう」


 と言い放ち、フリューリング将軍は部下たちに前進を命令する。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

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