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魔界の将軍ルバロン

「ルバロン様!」


 部下たちの悲鳴をともなった報告にルバロンは愕然とする。


「馬鹿な……あいつらが人間に敗れたというのか」


 先鋒を任せた両軍団長は、ルバロンが率いる配下の中で一、二を争う実力者だった。

 その両雄が討たれたとなると、敵の将と戦えるのは彼しかいないことを意味する。


 兵たちは混乱し、面白いように人間どもに倒されて、数の利を活かせていない。


「このままでは負けもありうるな」


 と言ってルバロンは恐怖する。

 地上征服の最大の敵はこの大陸の東に位置する帝国のはずだった。


 こんなところでつまずいてはいられない。

 公爵は決してルバロンを許さないだろう。


「私が出る」


 ルバロンは叫ぶと一気に駆け出す。

 敵に押されて逃げ出している兵たちをかき分ける。


 兵たちは混乱していてもルバロンに気づいたらしく、驚いて道を開けてくれた。

 行きがけの駄賃とばかりに、彼らの背を追っていた人間の兵士たちの喉を斬っていく。


 ルバロンが両手を軽く振るだけで一気に五名が地に倒れる。

 彼の攻撃を一度でも止めることができる兵士は一人もいない。


 死体を量産し、血の雨を降らせながら前進してくるルバロンの存在が、やがて王国軍に知られる。

 勝利を確信し歓喜と魔軍への嘲りを浮かべていた王国軍は凍り付く。


 戦局を単騎でかえようとする圧倒的存在の出現に、剣神と武神は舌打ちをする。


「このまま押し切りたかったんだが」


「さっきの奴らが軍団長だろ? ということは将軍か、それよりも上のやつか?」


 彼らも一応伝承を学び、魔軍の階級について多少の知識をえていた。

 元帥の下に将軍がおり、その下に軍団長と呼ばれる猛者たちがいる。


 そして将軍は軍団長を統率できるほどの強さを持っているという。


「念のため、二対一でいくか?」


「そうだな。大切なのは勝つことだ」


 剣神と武神は短く打ち合わせをすませ、にやりと笑った。

 彼らにとって大切なのは勝つことであり、手段は二の次である。


 いい意味でも悪い意味でもなのだが、今回の場合はいい方向に働いたと言えるだろう。

 

「いくぞ!」


 彼らは馬に乗って一気にルバロンに迫る。


「魔界の将軍と見た! 名乗るがいい!」


 と剣神が叫ぶ。


「グラオザーム元帥直属の将軍、ルバロンだ。グラオザーム一の武勇を自負する者なり!」


 ルバロンは人間たちにとって意外なことに律儀に名乗る。

 彼は魔界の民の中でも比較的珍しく、この手の礼儀をに明るい。


「我らは王国の剣神!」


「そして武神!」


「我らの手で死ぬがいい!」


 剣神と武神は同時に叫び、馬から降りてルバロンに襲い掛かる。

 二対一の戦いがはじまった。


 と思ったのは人間たちだけだった。

 ルバロンは両手にまとった漆黒の魔力を刀剣状に変えて、左右同時に撃ち出す。

 

 その速さと鋭さは人間に防げるものではなかった。

 剣神はかろうじて反応したが、剣ごと体を二つに割られる。


 武神のほうは反応することもできずに首をはね飛ばされた。


「こんな奴らのせいでガズーとラズーを失うとはな」


 ルバロンはつまらなそうにつぶやく。

 魔界の将軍は軍団長よりも格段に強い。


 そのことを剣神と武神が瞬殺されるという形で、王国軍たちは思い知らされた。


「け、剣神様と武神様が!?」


「に、二対一でうそだろ……」


 指揮官にして最大戦力の二人をあっという間に失った王国軍は仰天し、恐怖し、逃げ出す者たちが現れる。


「さあ、殺せ!」


「オオオオオオ!」


 ルバロンが叫ぶと劣勢だった魔軍が叫びで応え、再び前進をはじめた。

 形勢はこれにて決定し、王国軍は敗れて撤退していく。


 と言えば聞こえはいいが、実際は散り散りになって逃げだしたのだった。

 他の方面でも王国軍は敗れ、王国は都市の九割を失った。

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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりの更新だな……次回も待ってます!
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