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第二次インヴァズィオーン

 人類は各地で敗北を重ね、生活圏の半数を魔軍に制圧されてしまった。


「ここが地上か……なかなか悪くないな」


 そしてとうとう四公爵の一角、アビスが降臨してしまう。

 地上侵略軍の総大将としてアビスは眼前に揃った部下たちに命じる。


「人間ども駆逐せよ。地上を我らが神に捧げよ」


 アビスの命令で、まだ制圧できていない地域に元帥一名と将軍三名が派遣された。

 リヒト帝国がある大陸に上陸したのは、グラオザームが率いる軍団だった。


 彼らは大陸西方に着いたのだがこれは別に狙ったわけではなく、ただの偶然である。


「まずはこの国を潰して、それから東へと進んでいこう」


 グラオザームは部下にそう話す。

 最初の生贄となったのは王国だった。


「進め進め!」


 グラオザームは拠点を部下に作らせ、どっしりと腰を下ろす。

 補給もいらずすぐに増殖する使い捨ての部下たちをまず先遣隊として送った。


「ま、魔物だ! 魔物の大軍勢が攻めて来たぞ!」


 最初に接触したのは王国西部の砦だった。

 物見兵が必死に叫び、王国人を混乱に陥れる。


 慌てて王都へ伝令が走るが、魔軍の包囲の完成のほうが早く殺されてしまった。

 西方辺境砦は国の中枢に急を知らせることもできず、魔軍にあっけなく攻め落とされる。


「弱い弱い。こんなものか」


 人語を話せる魔物の一体が愉悦の笑みを浮かべながらつぶやく。


「いいねえ。もっと殺してえよ」


 他の魔物が血に酔いながら自身の希望を告げる。

 

「もっと殺せるさ。地上生命はこれから皆殺しにするんだからな」


「違いない!」


 魔物たちは自分たちが強者であり、狩る側だと信じて疑っていなかった。

 彼らは詳しい情報を与えられていないし、地上に攻め込んでから連戦連勝である。


 自然と気は大きくなっていて、自分たちが負ける可能性などまったく考えていなかった。




 王都が異変に気付いたのはかなり遅かった。

 王国は東西に広い国土を持つ上に、辺境に通信用の魔術具が普及していなかったのが大きい。


 辺境を軽視していたことと、魔術具の研究開発が帝国ほど熱心ではなかったことが挙げられる。

 魔軍は王国辺境を飲み込み、勢力を拡大させてから東の大都市に向かって進撃をはじめた。


 王都には何とかその知らせが届く。


「魔軍は三手に別れ、シャール、リグル、エトワールの三つの都市を目指して進んでいます。それぞれ十五万前後と思われます!」


「十五万ずつだと!?」


 知らせを受け取った王都の重臣たちは驚き慄く。


「三都市はどれも主要な都市で、三つを失うと国の命運は大きくかたむいてしまうぞ」


「たかが魔物ごときが、そんな戦略を理解しているというのか?」


 相手は魔界の軍勢だと言われているのに、国の西部の多くを失陥しているというのに、まだ魔物を軽視する者たちは珍しくない。

 

「だが、これはチャンスだ」


 十六柱傑の一人が言った。


「ここで敵の軍勢の首魁を叩けば敵の指揮系統は瓦解する。そうすれば反抗可能だろう」


「王国軍の主力はまだ残っているからな」


 彼らの言うことはけっして間違いではない。

 精強な王国軍五万と、各領主の私兵たちはまだ無傷で残っている。


 冒険者たちもいるので、指揮系統さえ潰せば劣勢を挽回するのは不可能だと言えなかった。


「だが、ここまで全敗なのだぞ?」


 国王はさすがに不安を隠せず、十六柱傑に咎めるような視線を送る。


「我々がまだ出撃していませんでしたからね」


 十六英傑たちは自信たっぷりに答えた。


「切り札を使わず、軍の精鋭も使わずでの連敗です。領土失陥が痛いのはたしかですが、致命傷とはほど遠いのでご安心ください、陛下」


 軍の総司令官も笑顔を作って国王に話す。


「それはそうだが……」


 主力が一切戦っていないのは事実なので、国王も若干落ち着きを取り戻した。


「口上は立派だが、今のところ軍が全敗しているのも事実だぞ?」


 宰相が嫌味たっぷりな言い方で、総司令官と十六英傑に冷たい水をかける。

 むっとした総司令官が言い返す。


「ご安心あれ。我らが見事魔軍を打ち破り、奪われた領土を解放してご覧に入れましょう」


「頼むぞ」


 国王の一言で話の流れは決まった。



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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

― 新着の感想 ―
[一言] わざとか!?わざとやってるのか!?…王国はわざと悪い方悪い方を目指しているのか!? …と思ってしまうくらい、戦略以前に王国の考え方そのものが酷過ぎる…(苦笑)
[一言] 帝国の密偵はこの状況を報告していないの?
[一言] どう読んでも十六英傑が死亡フラグを立ててるようにしか見えないw 八神輝>>>越えられない壁>>>十六英傑>>将軍>騎士>>兵士 このぐらいかな?
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