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106帝都捕り物

 ペレクは夜中、ふと目を覚ます。

 そのこと自体は珍しくないのだが、今日にかぎっては嫌な胸騒ぎがしていた。


(まさかな)


 彼は自分のよくない考えを打ち消そうとして、失敗する。

 彼の立場的には今いる場所は敵地だと断言してもよい。

 だからこそ、普段あまり信じていない予感や勘の類を信じる気になった。

 そっと身支度をすると隠し持っていた転移魔術の魔紙をとり出す。

 手のひらに収まるサイズの赤い紙は、破った者を転移させる使い捨ての魔術具である。

 何度でも使えるタイプの魔術具は、ペレクのような者には与えられない。

 使い捨てでも逃走手段を与えられるだけマシだと彼は割り切っていたし、事実今回のような場合は役に立つ。

 ところが、彼が紙を破っても転移魔術は発動しなかった。

 

「な、何故だ?」


 彼は思わず言葉に出してうめく。

 まさか不良品を掴まされたのかという疑念が浮かぶ。

 あくまでも素人に過ぎない立場では「転移魔術封じ」の可能性はとっさに思いつけなかった。

 そんな彼の部屋のドアが不意にノックされる。


「夜分失礼いたします。帝国騎士団【アインスブラウ】の者ですが」


(て、帝国騎士団だと?)


 ペレクはぎょっとした。

 【アインスブラウ】は通称第一騎士団と言われていて、帝都の防衛と治安維持を役目とする。

 帝国の正規騎士だけで構成されているのだから、当然非常に錬度が高い。

 決して目をつけられてはいけないと散々教えられたものだ。

 

(一体どうして騎士団が……)


 もしかしてずっと目をつけられていたのかと思う。

 帝国が大陸一の強国であるという事実が余計にその疑惑を強くする。

 まさか偶然知り合ったバルが連絡し、その日のうちに騎士団が動いたなど彼に分かるはずがない。

 いわば過大評価が原因の誤解だった。

 

(本当に帝国騎士団だったら、私に逃げられるはずがない)


 ペレクは観念する。

 どうやって命だけは助けてもらおうか必死に頭を働かせながら。


「時の神よ、御身の力を我に貸し与えたまえ。【アンロック】」


 カギをすぐに開けずに時間を稼ごうとしていたら、あっさりと魔術で開けられてしまい、ペレクは恐怖する。

 

(アンロックなんてマイナーな魔術を普通に使ってくるとは、さすが帝国騎士団か!)


 全員が魔術を使いこなすエリート集団という風評はいつわりではなかったのだ。

 もちろん、彼にとって凶事である。

 武装した騎士が三人入ってきたところで、彼は無言で両手を挙げた。

 

「ほう、物分かりがいいですね」


 若い騎士が感心したように言う。


「抵抗はしない。だが、弁明はさせてほしい」


「いいだろう」


 年長の騎士はそう答えて、ペレクを連行するよう指示を出す。

 抵抗すればこの場で始末する予定だったが、抵抗しないならば話は別だ。

 宿に迷惑にかけないようにすればよい。


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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『神速詠唱の最強賢者《マジックマスター》』

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