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凡人と神様  作者: 遺志又ハ魂
第二部 【詰むまでの物語】
46/72

第45話 『末期の自覚』

「で? しばらくここに居ていいか?」

「貴様、あんな仕打ちをしておいて、よくもそんな平然としているな……儂はびっくりじゃ」


盛大に漏らした竜に滞在許可を求める。

もともと赤かった厳つい顔が更に真っ赤だ。

ちなみに蝙蝠は巨体を丸めて落ち込んでいる。

どちらも涙目。怪獣を泣かせちまった。

しかし、現状を鑑みるに、んなことは知らん。


俺はお漏らし出歯亀をおぶったまま、急かす。


「いいのか悪いのかさっさと答えろ!」

「わ、わかった。わかったからそう怒るな!」


すっかり俺にびびっている真紅の竜。

ファンタジーの代名詞も案外大したことない。

やれやれ、まーた勝ってしまったようだ。

虚しい勝利。いや、本当に。お恥ずかしい。


ふっと自嘲しつつ、遠い目をしてると。


「儂の住処に案内してやる。ついてこい」

「あ、それはそれはご丁寧にどうも」


気を遣われて、元来の腰の低さに戻る。

そんな俺に更に怯えて、真紅の竜が先導。

ついていく前に、泣き虫巨大蝙蝠を促す。


「いつまで泣いてんだ。さっさと行くぞ」

「ハ、ハイ。イウトオリニ、シマスカラ……」


もとより従順な蝙蝠が、更に傅くように。

そんな親分の姿を見て配下達は道を開ける。

ワイバーンも俺に畏怖を覚えたらしい。


魔王として一皮剥けた俺は、竜の住処へ。

そこは世界樹の葉と枝で作られた竜の巣。

鳥の巣のような構造をしている、そこに降下。


「客人など初めてじゃ! ゆっくりしていけ」

「では、遠慮なく」


俺は即座にお漏らし出歯亀を降ろそうとして。


「こら、儂の巣を汚す気か?」

「あ、これはこれは失礼しました」


見咎められたので、出歯亀を着替えさせる。

まるで起きる気配のない彼女を念力で浮かせて、衣服をひん剥き、水弾で洗浄。

異空間からボストンバッグを取り出し、そこに入っている姉ちゃんの下着を履かせる。

これで、パンイチ出歯亀エルフの完成だ。

紳士な俺は、痒くなる前に清潔にしてやった。


隣に寝かせて俺も腰を下ろすと、尋ねられた。


「それで、貴様は一体何者なんじゃ?」

「だから糞魔王ですってば」

「まったく意味がわからん。邪神か何かか?」


誰が邪神だ。説明するのが億劫だな。

記憶を見せようにも、頭がデカすぎる。

パクッと食べられたらどうしよう。


そんな心配をしていると、竜は気を遣って。


「なんじゃ、小僧。 儂が怖いのか?」

「率直に言えば、とても恐ろしいですね」

「ふむ。ちょっと待つがいい」


素直に心中を告げると、竜がいなくなった。

ポカンとしていると、巣の中央に誰かいる。

それは俺よりも背の高い赤い女性。誰だろう?


赤髪の彼女は一風変わった服装をしていた。

剥き出しの肩と豊満な胸を惜しげもなく晒し。

ハイレッグで美しい脚線美をこれ見よがし。


前世で例えるならば、バニーガールかな。

美脚には網タイツの代わりに真紅の鱗模様。

ただし、うさ耳の代わりに、二本の角が。

それはさっきまで居た竜の角によく似ている。


とりあえず美人でエロいのでガン見してると。


「何をジロジロ見ておる」

「いえ、どちら様ですか?」

「おお、そう言えば名乗ってなかったな」


赤い女性は赤髪をファサッと夜風に靡かせ。


「我こそはこの世界唯一の竜にして、翼竜の王。よりわかりやすく言えば、竜王じゃな」

「りゅ、竜王様……?」

「そうじゃ。歓迎するぞ、客人」


ニッと笑う彼女の白い歯は、ギザギザ。

それは紛れもなく、竜の牙であり。

となると、もしかして、この美人さんは?


「さっきの赤い竜が、貴女ですか?」

「そうじゃ。どうした、惚れちゃったのか?」


惚れる以前に驚いた。まさか、メスだとは。

てっきりオスだとばかり。声も全然違う。

竜の時は威厳たっぷりだったのに、今は美声。

とはいえ、少しハスキー気味。良い声だ。


竜王様は真紅の瞳で、上空に待機している蝙蝠を一瞥して、まるで嘲るように、鼻で笑った。


「なんじゃ、お前は人化も出来んのか?」

「シツレイナ、トカゲデスネ。デキマストモ」

「えっ!? お前も出来るのか!?」


意外な返答に仰天する間もなく。

挑発された蝙蝠が消え去る。見失なってると。

背後からチョンチョンと肩を突かれて。

振り返ると、そこには黒衣を纏った美女が。


「ココデスヨ、マスター」

「うおっ!? お前、蝙蝠か!?」

「ハイ、オキニメシマシタカ?」


クルリとその場で回って見せる、黒い美女。

濡羽のような艶やかな黒髪と黒真珠の瞳。

お気に召すも何も、びっくらこいた。

まさかこいつもメスだとは。信じられない。


竜王よりも高い、透き通るような美しい声音。

同じく透明感のある白い肌。胸は慎ましい。

背に纏うマントは蝙蝠の皮翼だろうか。

首回りのふわふわなファーがアクセント。

下は柔らかそうな生地のロングスカート。

それには大胆スリットが切り込まれていて。


そこから真っ白な美脚が覗き、妖艶さを演出。


「アマリ、ミラレルト、ハズカシイデス」

「あ、ああ、悪い」

「ふん。そんな貧相なエサのどこがいいんじゃ? 儂なんか、こんなに肉付きが良いぞ?」


見惚れていたら、竜王様が悩殺ポーズ。

真紅の髪をかきあげて、巨乳を強調。

思わず前かがみになりそうだ。なってるけど。


そんなへっぴり腰な俺を、蝙蝠美女が詰る。


「ムネナンカ、カザリデス。マスターニハ、ソレガ、ワカラナイノ、デスカ? フケツ、デス」


うん。不潔は余計だよね。確信犯かな?


「たわけ。飾れぬ女など女ではないわ!」


なんか名言ぽいけど貧乳全否定すぎる竜王様。


「ダマリナサイ、ダニク」

「だ、駄肉、じゃと……?」

「ワタシガ、クイチラカシテ、アゲマスカ?」

「その前に貧相な貴様を腹に収めてくれる!」


気炎を吐いてガンくれる両者。

平和主義者の俺はもちろん2匹を止める。

それと同時に身の上も明かしてしまおう。


不仲な2匹の頭を両手で鷲掴みにして、凄む。


「やめろ。てめぇら、また漏らしたいのか?」

「ひっ! わ、悪かった。あ、謝るから!」

「モウ、オモラシハ、ゴメンデス」

「なら、ちょっとばかし大人しくしてろ」


トラウマを刺激して黙らせ、上映開始。

俺が糞魔王と呼ばれるまでの顛末を見せる。

記憶を垣間見せると竜王様は納得した様子で。


「なるほどな。異世界とはこのことか」

「ワ、ワタシガ、マルヤケニ……」


蝙蝠美女は青ざめて、呆然としている。

ま、前世での彼女の最後は悲惨だったからな。

あの爆弾で黒焦げになった蝙蝠を竜王は嘲笑。


「なんと情けない。儂なら平気じゃったぞ」

「ウルサイデスヨ、ヒフキトカゲ」

「火も吹けぬ癖に生意気じゃぞ!?」

「うるせぇ! 喧嘩すんなっての!!」


すぐ喧嘩を始める2人を叱りつつ竜王に尋ねる。


「それで竜王さん。ちょっと聞いてもいいか」

「ん? なんじゃ?」

「さっきの白い神、どっかで見なかったか?」


俺の記憶に刻まれた、白い神。

この異世界に来てからその声は聞いてない。

エルフの里にも、あいつはいなかった。


だから、神の所在を竜王に尋ねると首を振る。


「いや、永く生きて来たが、見たことがない」

「そうか。なら、この世界にはいないのか」


どうやら神は転生していないらしい。

それは俺にとってある意味絶望だった。

全員が転生するわけではないとすれば。


俺の姉ちゃんも、いないかも知れない。


わざわざ神のことを尋ねたのは怖かったから。

姉ちゃんの不在を認めたくなくて。

だから、敢えて聞かずに、話題を逸らす。


「神がいないなら、あんたがこの世界のワールド・オーナーってことか?」

「いや、確かに儂は強大じゃが、それは違う」


自分で強大とか言っちゃう竜王様。

しかし、自称の通りその存在感は圧倒的だ。

恐らく、俺を除いて、この世界で一番強い。

それだけの存在が、違うという。

この竜王様が、ワールド・オーナーじゃない?


「この世界の主は、別におる」

「そいつは一体、誰なんだ?」

「それは自分の眼で見極めるがいい」


なんだよ、勿体振りやがって。だけど、まあ。

せっかく転生したのだ。気長に探索しよう。

その途中で姉ちゃんが見つかるかも知れない。


漠然と、そんな淡い希望を抱いていると。


「ふみゃ……? ここ、どこれすか……?」


気絶していた出歯亀新聞記者エルフが起きた。

寝ぼけ眼で周囲を見渡す。そして気づく。

自分がパンイチであることに。悲鳴をあげた。


「きゃああ!? なんでパンツなんれすか!?」

「盛大に漏らしたからだ」

「も、漏らした!? てゆうか、このパンツ誰のですか!? わ、私のパンツはどこに……?」

「あそこで干してある」


俺は宙に浮かぶ彼女のパンツを指差す。

水弾によって洗浄済みの下着を、念力で浮かせて乾かしていたのだ。感謝して欲しいものだ。


「きゅ、吸血鬼さんが、やったれすか!?」

「あん? 何のことだ?」

「怪しい魔法でお漏らしさせたのですか!?」

「違うよ。俺はただ、好意でだな……」


事の次第を説明しようとすると、被害者2匹が。


「実は儂も先刻、辱めを受けばかりじゃ!」

「ミギニ、オナジク」

「こ、こんなお美しい方々まで侍らせて……」


こいつらこんな時だけ息を合わせやがって。

2匹の証言は、認めたくないが真実であり。

しかも人化しているので、言葉は伝わった。

ワナワナ身を震わす出歯亀エルフ。万事休す。

俺が弁明する前に、速やかに判決は下された。


「最低です! 吸血鬼さんは鬼畜です!!」


鬼畜呼ばわりされた。これにはカチンときて。


「お前が俺に小便浴びせたからだろうが!!」

「浴びたのですか!? 私のおしっこを!?」


あ、これは良くない。誤解が加速した。

血の気の引いた出歯亀は怒り心頭で。

新聞記者として担当編集に怒鳴り散らした。


「紙とペンを持ってくるれす!」

「いや、待て。お、落ち着けって。な?」

「うるさいですよ! さっさと持ってこい!!」

「は、はいっ! ただいまっ!!」


記者は先生だ。編集は命令に従い、下界へ。

空間魔法で出歯亀の家に転移。道具を回収。

もう面倒になって、部屋の床を闇のゲートに変えて、丸ごと世界樹の上まで移動させた。


あっと言う間に引っ越しは済み、用意完了。

普段愛用しているタイプライターには目もくれず、書き殴るようにパンイチのまま、記事の執筆に没頭する出歯亀新聞記者お漏らしエルフ。


段々と白んできた夜空。オーロラも消えかけ。

夜明けが近い。切実に早く夜が明けて欲しい。

なんとか、朝刊に間に合わないよう、祈るが。


「おら! さっさと刷って配ってくるれす!」

「は、はいっ! ただいまっ!!」


神速で記事を完成させて印刷と配達を命じる。

編集者は、記者様には逆らえず、急いで複写。

中身を確認する暇もなく、転移ゲートで配達。


誠に残念ながら、夜明け前に、配り終えた。


「またこれで俺の悪評が広まるわけか……」


ぐったり疲れて、世界樹のてっぺんに戻ると。


「オカエリナサイマセ、マスター」

「ああ、ただいま。新聞記者は?」

「早かったな、小僧。小娘はそこじゃ」


仕事の完了を報告しようと思ったら、寝息が。


「くぅ……くぅ……すぴー」

「どんだけ寝るんだよ、お前は」

「むにゃむにゃ……吸血鬼さんの、馬鹿」


出歯亀新聞記者お漏らしエルフは、寝ていた。

寝言は苛つくが、我慢。そんなことよりも。

パンイチで身体を丸めているのが、寒そうで。

物理結界を張り、透明度を調整して暗室作成。


まるで犬小屋のようだが、2人なら丁度いい。


俺もいろいろあって、気疲れした。

なので、休むことにする。

人化した怪獣2匹にひらひら手を振って。


「んじゃ、俺も休むからお前らも仲良くな」

「この蝙蝠と2人っきりにするなっ!!」

「ワタシモ、ゴイッショ、サセテクダサイ」

「あーもう。わかったよ。ならさっさと入れ」


なんか2匹も結界内に入りたいらしい。

喧嘩されるよりはマシだと思い、許可。

ちょっと空間を広げるも、すし詰め状態。


しかも何故か2匹は妙に俺とくっつきたがり。


「小僧の隣は儂じゃ!」

「マスターハ、ワタシノ、マスターデス!」


おやおや? これはもしかすると?

なんとなく、期待が膨らむ。恋の予感がする。

同時に鼻穴も膨らませて、咳払いして、問う。


「こほん。君達、そんなに俺が好きなのか?」

「はあ? 何を言っとる。寝言は寝て言え」

「マスター、キモイ」


あー……うん。いや、わかってたよ?

わかってたけどさぁ……やっぱキツいよね。

だけど、泣いたりしない。男の子だもん!


そんなキモいピエロな俺でも。

理由を尋ねる権利はある。あるよね?

そう自分に言い聞かせて、震える声で。


「じゃ、じゃあ、なんで隣で寝たいの……?」

「小僧の濃厚な魔力を受け取る為じゃ!」

「ソレダケガ、モクテキ」


なるほどな。……もう、泣いていいかな?


「ぐすっ……勝手にしろ。バカヤロー」

「マスター、ナンデ、ナイテル、デスカ?」

「思春期か? まあ、それはともかく、小僧」


2匹は慰めもせずに傷口に塩を塗って。


「その小娘が邪魔じゃ。食っていいか?」

「食べちゃ駄目」


その返答は、驚く程スムーズで。

俺は傍で寝ている出歯亀新聞記者を庇う。

パンイチの彼女を右腕で抱え込む。

そんな自分を不思議に思いつつ、提案。


「右隣は出歯亀。左隣は1日交代だ」

「ふむ。やむを得ないか」

「デハ、キョウハ、ワタシガ」


ピタッと左腕に絡みつく蝙蝠美女。早業だ。

竜王様のこめかみに筋が浮かび、イライラ。

また喧嘩かなと、思いきや。竜王は閃いた。


「そうじゃ! 上に乗っても構わんか?」

「ええ。もちろんです。ささ、お早く」


すぐにその俺得すぎる名案に飛びついた。

ドンッと薄い胸板を叩いて、胸を高鳴らせる。

すると竜王様はなんだか嫌そうな顔をして。


「なんか露骨すぎて、ドン引きなんじゃが……」

「いいから早くしろ! 間に合わなくなるぞ!」

「いや、既に手遅れじゃろうが……」


末期の自覚がある童貞の上に、竜王が乗る。

つるりとした真紅の鱗も、堪らないのだが。

特筆すべきは、ツルスベのお尻と、胸部だ。

その大きな柔らかいお胸を押しつぶされて。


もう、ゴールしたいと思って、ふと、気づく。


あ、息が出来ない。だけど、それでも、いい。


たとえ、死んでも、ここから俺は、動かない。


「わ、我が人生に、一片の悔い無し……ぐへっ」

「ん? おい、蝙蝠。お前の主人が死んだぞ?」

「ヘイキデス。フジミノ、ヘンタイデスカラ」


不死身の変態は、何度も死に、蘇生して。


その度に、竜王の柔らかな胸を、堪能して。


そして、また死んでゆく。何度も、何度も。


さて、余談ではあるが。

その日の朝刊にはこう記されている。

乱れた筆跡で、書き殴った、タイトル。


【糞魔王、ついに本性を現す!!】


『無理矢理記者を娶った糞魔王は、世界樹のてっぺんまで連れ去り、意識を奪った後に暴行。

記者の知らぬ間に美女2人までも毒牙にかけた。

その詳細は、記すことすら、憚れる』


いや、憚れるならば、書くなっつーの。

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