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凡人と神様  作者: 遺志又ハ魂
第一部 【詰まらない物語】
13/72

第12話 『根拠不明な太鼓判』

「やあ、おかえり。待ちくたびれちゃったよ」


吸血鬼化した後、神がパチンと指を鳴らすと、学校の図書室に瞬間移動した。便利な力だ。

出迎えたのは生徒会長。すっかり日が暮れて、月明かりに照らされた図書室の中央で、何かに座って待っていた。姉ちゃんの姿が見えない。


「姉ちゃんはどこだ?」


俺が聞くと、会長はくすくす嗤って。


「ほら、ボクのお尻の下だよ」


言われて、気づく。変わり果てた、姉ちゃん。

辺りには無造作に手足が転がっていて。

胴体だけの姉ちゃんが、うつ伏せで会長の尻に敷かれていた。余りのことに、節句する。


そんな、嘘だ。

間に合わなかった。

信じられない。信じたくない。

姉ちゃんが……死んだなんて。


「おい、ポンコツ。生きてるか?」


神が呼びかける。

しかし、それは無意味に思えた。

だって、こんな有様で生きてるわけがない。


絶望する俺の耳に。


「うっ……ぐっ……!」


聞こえる筈のない、声が聞こえた。


「は、はい……ご主人様。……なんとか」


掠れたその声は、姉ちゃんのものであり。


「いや〜噂には聞いてたけど、頑丈だね。さすがはワールド・オーナーのお人形さんだ」


やれやれと呆れたように会長がため息を吐く。

生きていた。姉ちゃんは、まだ生きている。

それがわかった瞬間俺は動いた。風より速く。


「姉ちゃんから、離れろぉおおおっ!!」


吸血鬼化によって引き上げられた身体能力を発揮して、瞬時に距離を詰め、拳を振るう。

それをひらりと躱して、会長は後ろに下がる。


「んん? どこかで修行でもしてきたのかな? 見違えたよ。次の相手は、彼ってことかい?」

「ああ。こいつが、お前を倒す」

「なにそれ、本気? ウケるんだけど」


おどける会長に、神が答える。

すると、生徒会長は腹を抱えて笑って。

次の瞬間には、表情を一変させた。


「戯れもいい加減にしなよ、ワールド・オーナー。あまりボクを舐めて貰っちゃ困る」


怒気を露わにボブカットが燃えあがる。

そんな激おこな会長には構わず、俺は胴体だけとなった姉ちゃんを抱き起して、声をかけた。


「姉ちゃん、姉ちゃん! 大丈夫か!?」

「みっともないとこ見せて、ごめん」

「こっちこそ、待たせてごめん」


自嘲気味に口の端を上げる姉ちゃんに、思わず涙が溢れそうになる。容態を確認すると、驚いたことに出血はほとんどなかった。四肢の切断面からは血の代わりに白い液体が流れている。


そしてその断面には機械のような物も見えた。


会長は姉ちゃんを『お人形』と呼んだ。

それを踏まえて察するに、どうやら姉ちゃんは人間ではないらしい。サイボーグっぽい。

しかし、それはこの際どうでもいい。

いま俺がするべきことは、ただひとつ。


「俺が、会長を倒す……!」


燃える生徒会長を睨みつける。

会長とて、無傷ではない。

戦闘の余波で、制服がボロボロである。

ノーブラのほどよい下乳や、ノーパンのスカートの際どいスリットなどが見て取れた。

その不埒な視線に気づいた会長が、嘲笑う。


「はっ。君ごときに、ボクは負けないよ?」


陽炎が揺らぎ、熱量が増す。熱い。焼ける。

チリチリと髪が焦げる匂いがして、途端に不安になった。あれに本当に勝てるのだろうか?

そんなチキンな胸中を見透かした姉ちゃんが。


「大丈夫。あなたなら、勝てる」


根拠不明な太鼓判を押された。

是非とも裏打ちをして貰いたいもんだ。

すると姉ちゃんは、こう付け加えた。


「ご主人様の言うことは、絶対だから」


更に勝算が曖昧なものとなった。

あの神が勝てると言うなら、勝てる……か。

まあ、なんだかんだ言っても神様だしな。

その予言には、間違いはないのだろう。


たまに、嘘をつくけどな。


「んじゃ、姉ちゃんは休んでてくれ」

「ん。頑張って」


優しく姉ちゃんの胴体をその場に横たえて、立ち上がる。燃え盛る生徒会長と、対峙する。

大丈夫。もう今までの俺じゃないんだ。


モブを卒業した自分の力を、信じよう。


「姉ちゃんを傷つけたお前は許さねぇっ!!」

「ふん。かかって来なよ、シスコンっ!!」


吸血鬼となった俺のデビュー戦が火蓋を切る。

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