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凡人と神様  作者: 遺志又ハ魂
第一部 【詰まらない物語】
1/72

プロローグ 『神様の声』

神様の声が聞こえる。


なんて言ったら大抵は失笑され、大半は距離を取り、残りの心優しい極小数は精神科を紹介するだろう。


しかしながら俺はそんな迫害を受けることはない。いや、受けることが出来ない。それはある意味幸福で、あらゆる意味で残酷且つ、残念な立場である。


何故幸福なのかはわざわざ説明するまでのことではないが、何故残酷且つ、残念なのかは説明が必要だ。


だが、長々と説明せずとも一行で済む。


それは、世界に干渉出来ないから。


それが理由であり、それこそが現実だ。


何を言ってるかわからないって?

それはそうだろう。敢えてそうしてる。

何故ならばそれを解説することが俺の役割であり、これから述べる長ったらしい証明の本文であるからだ。


何にせよあらかじめ言っておくが、オチも含めて『つまらない』話であり、期待するだけ損ってもんだ。


それでも語るのはその後に控える物語の為であり、前提を提示しなければ過程も結果もその後も繋がらないからである。


ご理解頂けたであろうか?

当然、理解できないだろう。

だからこそ、言葉を費やす意味がある。


費やした結果、理解に繋がり、その後の物語を楽しめるのであれば、幸いだ。

人の不幸は蜜の味がするだろう?


さて、どこから話したものか。

何から解説するべきか……そうだな。

まずは、『神様の声』を解説しよう。


それが始まりであり、それに尽きる。

俺の立場の幸福と残酷さと残念具合が、そこに詰まっている(とはいえ、つまらないのだが)。


『神様の声』


この単語に何を思い浮かべるだろう。

神秘? 綺麗な声? なるほど、確かに。

夢のお告げ? 予言? うむ。一理ある。


夢や希望を想像可能な単語に思える。

だけど、そんなに良いもんじゃない。

なにせ俺はそれにより絶望したのだ。


しかし、元凶ではない。

けれど、それは残酷なものだった。

そして、限りなく現実的なものである。


その『神』は自らを全知全能と称した。

全知全能とは言わずもがな、全てを知り、全ての能力を備えた存在。

その大言は確かに、噓偽りはなかった。


では、そんな存在にこう言われたら?


《お前には一切何も才能が備わってない》


ほらな? 一気につまらなくなったろ?

これだけで俺の立場は察することが出来ると思う。というか、そのまんまだ。


何一つ才能のない凡人。それが俺だ。


ありがちだって? とんでもない。

『神』だってなかなかお目にかかれない存在らしいぜ。それほどの凡人。


そんな凡人が『神様の声』を聞けるって矛盾。しかしながらそれは矛盾しない。

何故なら他の者には聞こえないから。また矛盾してるって? んなことないさ。


ほら、冒頭を読み返してみろ。


俺が『神様の声』が聞こえるって言った時、どう思った? 失笑しただろう? 何言ってんだこいつってさ。

それが答えた。はっきり言って、笑えない話だ。

誰も、そんな妄言など信じるわけがない。


才能は認知されて始めて才能となる。

だからこそ、俺は凡人なのだ。

俺以外にその声は聞こえないのだから。


とはいえ、なんと言っても『神の声』。

そりゃあもう、ぶっ飛んだ発言のオンパレード。予言や予知を超越したミラクルテレパシーなんだからな。


それを聞いたまま口にすりゃ、あらゆることが出来ると思うだろう。当然だ。

ああ、出来るんだろうぜ。俺以外には。


世界に干渉出来ない凡人以外には、な。


回りくどすぎて、謎が謎を呼ぶ形とはなったが、それはもちろん本意ではない。

あらかじめ述べた通り、これは『つまらない』話なのだから。


一応、何度も念を押しておく。

あとからつまらないと言われても困る。

つまり(とはいえ、つまらないのだが)、これはチキンな俺の予防線と思って頂きたい。あるいは、予防接種かな。


予防接種も済ませたところで本題だ。


俺が始めて『神の声』を聞いた話。

といっても、人から聞いた話なのだが。

いや、人ではなく、『神』から聞いた話なのだが。

裏の取りようのない、伝聞である。


それは俺がこの世に産まれる前に遡る。

母親の腹の中で丸まってた時の話。

だから、俺には記憶がない。中にはその頃の記憶を持っている奴がいるのかも知れないが、既に白状したとおり、俺には才能がない。そのようなスキルがない。


そんな胎児の頃から、『神』は俺に語りかけていたそうだ。こんな感じに。


《HEY! 待ってたぜベイビー!》


当然ながら、俺は腹の中で泣き喚いた。

読んで下さってありがとうございます。

2話以降も読んで下されば嬉しいです。

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