工藤桜子 バンドワゴン効果
ガラッ!!
「誠ちゃ~ん見て見てー」
いきおいよく桜子が保健室に入ってきた。
思わず誠史郎は眉間にしわを寄せた。
「保健室は・・・」
メガネに手を当てながら注意しようとしたその時、
「じゃーん!やっと手に入れたの!」
思い切り誠史郎の声を遮り、
桜子が少女コミックを手にして見せた。
「もうね、どこの本屋さんでも売り切れでやっと手に入れたんだよ!
これね、主人公の女の子に好きな子がいて、でも彼には彼女がいるんだけどあきらめきれなくて、
そうしたら文化祭の実行委員で一緒になって・・・」
「もういいから黙りなさい。君みたいな行動が典型的なバンドワゴン効果だな。
それより声が大きい!
そしてマンガの持込みがいいとは校則で見当たらないと思うが?」
桜子を追い出したいので誠史郎は山積みの書類を持ちながら少し早口で言う。
「えへ。それは内緒にしてて」
ペロリと桜子が舌を出す。
「でもバンドワゴン効果って何?」
「流行、人気を好意的に受け取る事だよ。生徒会選挙などがわかりやすいものだね。
人気のあるほうに票を入れやすくなるだろう?結構小さいけど身近なものだよ」
ため息交じりに誠史郎が説明をする。
「さ、マンガを没収されたくなければそろそろ下校しなさい」
桜子は苦笑いしながら保健室を出て行った。