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兄妹以上、家族未満。  作者: 木島冴子
お兄ちゃんは心配性?
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お兄ちゃんは心配性? 3



「あっ、ママ」


入学式が終わり、体育館を出ると真知子ママの姿が見えた。


ママは保護者の中でもとりわけ若いからすぐにわかる。


あたしはそばに駆けよろうとした。


と、よく見ればママのそばには背の高い男の人が立っている。


父さんにしては脚が長い。しかも学園の制服を着ている。


男子生徒がママと話をしているらしい。


ママに近づくにつれて相手の顔が見えた。


あたしはその顔を知っていた。


現在、絶対に会いたくない奴ナンバーワン。


ママのとなりにいるのは、先ほどまで壇上にいた生徒会長の島崎藤吾だった。


歩みを止めて呆然と立ちつくすあたしをママが見つけて手をふる。


「修子ちゃん」


気まずそうな表情のママに導かれるまま、あたしは生徒会長の前に立った。


どうして真知子ママとこいつが一緒にいるの!?


問いただしそうになるのをがまんして、あたしはそれぞれの顔を見くらべる。


ママは顔を伏せたまま考え込んでいる。一方、島崎藤吾は柔和な笑みをうかべている。


「こんにちは」


あたしの混乱をよそに島崎は礼儀正しく挨拶した。


もちろん京都なまりの声で。


「こ、こんにちは」


思わず、あたしも挨拶を返した。


やっぱり他人の空似かな。


たしかに今朝の男に似てはいるんだけど印象が違う。


今朝は猛禽類が獲物を見つけたような鋭く切れ長の目をしていた。


今は眼鏡をかけているせいもあるが、切れ長の目は同じでも人当たりのよさそうな優しい目だ。


ママが何も言わないので、お互いに簡単な自己紹介をかわして、いよいよ本題にあたしは切り込んだ。


「ところで、島崎さんは真知子ママのお知り合いですか?」


島崎はふと眉をひそめた。


あたしの質問に思ってもみなかったらしい。


それから島崎はママの方を向く。


「なんや母さん、話していないの?」


えっ! なんですと。か、か、母さん?


あたしは自分の耳を疑った。


「ちょっと黙っていて、藤吾」


動揺するあたしの表情を読みとったママは珍しく声を荒げる。


今まで聞いたことのない怒った声だった。


「修子ちゃん、ごめんなさい」


謝るママの声はいつもと同じに戻っていた。


あたしは状況がのみこめず二人を交互に見る。


どことなく顔立ちが似ていなくもない。


髪色はともかく目鼻立ちはママにそっくりだった。


「これって……」


あたしは言いよどむ。


あきらかに血縁関係がある、その一言がどうしても言えなかった。


そしてママが謝る理由もわからない。


「本当はもっとはやく言うべきだったんだけど…」


ママは言葉をにごす。


ああ、とても嫌な予感。


あたしは耳をふさぎたかった。


「真知子さん」


緊張感を損なうのんびりとした父さんの声がした。


スーツを着た父さんがあたし達の輪に加わる。


説明を! プリーズ、マイ、ダディ。


あたしは無言の圧力を父さんにそそいだ。


「ああ、藤吾くん」


と、あたしを無視してとなりにいる島崎に声をかけた。


この父親、娘は眼中になく、となりの見知らぬ男子生徒に声をかけるのか?


しかも藤吾くん? かなり親しげである。


「お久しぶりです、寺山さん」


二人は知り合いらしい。


あたしは耐えきれず、父さんのスーツの裾を引く。


「なんだ修子いたのか。小さくて気づかなかった」


そこでようやく娘の存在に気がついた父親は説明が必要なことを知った。


あたしの身長が低いのは今にはじまったことじゃない、と文句を言う前に父さんは話しはじめる。


「修子、こちらは島崎藤吾くん。真知子さんの実の息子さんだ」


気づいていたさ。


だって、母さんって呼んでいたもんね。


だからどうしたのよ? 感動の再会? 大いに結構。


でも、あたしには関係ない。


そう思っていたあたしへ向けて、父さんは衝撃の一言を放った。


「今日から藤吾くんも一緒の家に住むことになった。これからは家族だ。お兄ちゃんだぞ」


「…はぁっ!?」


まさに晴天の霹靂。


あたしの叫びは春の青空へとすいこまれていった。




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