お兄ちゃんは心配性? 1
ど、ど、ど、どうしてこんなことに。
親切心から不良を助けただけのはずだったのに。
こんなのってあり!?
あたしのファーストキスがっ!
高校生になって恋をして、彼氏ができて、胸をときめかせながらのファーストキス。
放課後。誰もいなくなった教室。あたしのふるえる肩にそえられる相手の手もまたぎこちなく、お互いに戸惑いながら唇をかさね…。
という幻想は早々にぶちこわされた。
背中を壁におしつけられ身動きのできない状態で無理矢理、唇をうばわれている始末。
抵抗のために上げたあたしの両手は男の片手で簡単に頭の上で封じられてしまった。
「んっ」
少し開いていた唇のすき間から舌がわりこんでくる。
もう片方の男の手であごをつかまれているので顔を動かすこともできず、なされるがまま男の舌を受け入れる。
気持ち悪っ。
生あたたかいナマコのような感触が咥内を蹂躙する。
だがそんなことよりも、もう息が続かない。
そう思ったとき、ようやく唇が離された。
あたしは百メートルをダッシュしたあとのように息をきらせていた。
「なんや息の仕方しらんかった? もしかしてファーストキ」
男は最後まで言葉を続けることができなかった。
なぜなら、あたしの拳を頬に見舞われたからだ。
「なんてことするのよ! 変態」
あたしは頭に血が上っていた。
呆然とする男にあたしはさらなる復讐を思いつく。
右足で男の下腹部をおもいきり蹴ったのだ。
運悪くというか、見事というか、蹴りは急所に直撃したらしい。
男はあたしに謝るかのように地面にひざまずいた。
「ざまあみろ」
捨て台詞とともに、うずくまる男を残して、あたしは走った。
この場に残っていたら何をされるか、分かったもんじゃない。
でも、あたしはすっかり失念していた。
この見知らぬ男があたしの名前を知っていたことを。




