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兄妹以上、家族未満。  作者: 木島冴子
未知との遭遇
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未知との遭遇4



体育館らしき大きな建物裏に男子生徒が四人いた。


紺色のブレザーにネクタイが男子の制服だが、四人のうち三人はタイをしていなかった。


ブレザーのボタンも外し着くずしている。


典型的な素行不良生だ。


残りの一人は、三人に囲まれていた


「てめぇ、二年のくせに生意気なんだよ。三年に意見しようっていうのか」


不良の一人が胸倉をつかんだ。


因縁をつけられている。


彼はきっちりネクタイをした模範的な男子高校生だ。


黒いネクタイは二年生を示している。


恐喝? いじめ?


あたしは植込みのかげから様子をうかがっていた。




道を尋ねようと近寄ったものの、どうも聞ける雰囲気ではなかったので、こうして身をかくしてあとをつけてきてしまった。


どうしたらいいのかもわからず、のぞいていることしかできない。


先生を呼んでこられればいいのだが、迷子のあたしは職員室の場所すらわからない。


いざとなったら、あたしが止めにはいろう。


覚悟を決めてふたたび彼らの様子をうかがった。


喧嘩をふっかけられている生徒は何もいわず、ただ黙っていた。


不良たちはその態度も気に入らないらしい。ついに拳がふり上がる。


うわっ。


とっさにあたしは目をつぶった。


暴力の場面にはなれていない。


ごき、ばき、ドカッ。


殴りあう音がする。


「うっぐぅ」


苦痛の声がした。


あー、やられちゃった。


おそるおそる指のすきまから見れば、倒れている生徒が一人…ではなく三人だった。


「なんや、手ごたえないなぁ。もっと、楽しませてぇな」


せせら笑う京都なまりの声は不良たちのものではない。


三人の不良が地面にうずくまっていた。


彼らの顔は赤く、鼻血を出している者もいた。


不良を見下しているのは連れてこられた男子生徒だった。


京都なまりの男は地面に伏す不良たちに容赦なく蹴りを入れ続けたあと、金髪の不良の髪をつかんで頭を持ち上げた。


「ぶさいくな面さらして、かわいそ」


口の端を切って血を流している不良をあざ笑う。


こいつ性格が歪んでいる。


あたしの中でなにかが切れた。


「ご、ごめん…な…さ」


「ごめんですんだら、警察いらんへん」


そして、男はそいつをさらに痛めつけようとした。


「やめなさい」


あたしはこらえきれず植込みから飛び出した。


三対一という卑怯な手を使ったこいつらも悪いけど、ものには限度ってものがある。


謝っている人をこれ以上痛めつけるなんて許せない。


「?」


手をとめて不思議なものでも見るかのように、あたしを凝視する男子生徒。


ちょっと、いや……かなりかっこいい。


さらさらの髪は薄茶色(たぶん天然色?)。ブレザーはボタン一つくずさず、黒いネクタイもきっちりしめている。外見はいたって真面目な生徒そのものだ。


けれども、切れ長の目だけは猛獣のように鋭かった。


あたしは制止したことを後悔した。


こ、怖いよぉ。


「そ、それだけやれば、十分でしょ」


声が裏返ってしまった。


「なんや、あんた? 見たことない顔……いや、どこかで会うた?」


男は不良から手をはなし、あたしをまじまじと見続ける。


居心地が悪い。あたしは両手を握りしめ怖さに負けないようにする。


「会ったのは今日が初めてだよ」


「ふーん。して、なにか用?」


まるで今までのことなどなかったかのようにひょうひょうと男は言った。


「弱いものいじめて楽しい?」


あたしは地面に横たわる不良たちをさして言った。


「弱いものって…こいつらがぼくをここまで連れてきたんや、生意気ゆうてな。それに三対一やで、卑怯もんや」


悪びれもせずに言う。


「でも、暴力はいけないと…」


思います、と続けようとしたが「逃げろ」という声にさえぎられた。


男とあたしが話しているすきをついて、不良たち三人は脱兎のごとく逃げ出した。


ちょっと、あたし一人を置いていかないでよ。薄情者ども!


「あー、逃げてしもた。あんたのせいやで、これから楽しもうと思ったのに」


そして、なぜかこちらに近づいてくる男。


これはまずい展開。


とっさに建物内へ逃げようとしたが入口がわかならい。


逃げられない。


じりじりと下がるうちに壁際に追いやられていた。壁を背にして男と対峙する。


男はなめるような視線であたしを上から下まで見た。


「思い出した。あんた、寺山修子やろ」


「はぁ?」


どうしてあたしの名前を知っているのだろう。頭にハテナマークがうかんだ次の瞬間、あたしは何をされているのか分からなかった。


急にあごをつかまれ唇が重なる。


あたたかい唇の感触が半開きのあたしの唇から伝わってきた。


それが、あたしのファーストキス。


未知との遭遇。







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