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兄妹以上、家族未満。  作者: 木島冴子
真夜中は別の顔
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真夜中は別の顔4



父さんと真知子ママが出かけてから一週間。


あの日以来、藤吾は夜遊びを控えるようになった。


といっても、帰ってくるのは午後十時くらいだけれど。


学校が終わってからその間、遅くまで何をしているかは知らない。


気にならないといえば嘘になるけど、あたしは藤吾の義理の妹でしかない。


どこまで尋ねてよいものか、わからなかった。


食事は別々。


夕飯はあたしが作っていたのだが、帰りが遅いうえに、藤吾は外で食べてくるらしく、手付かずの夕飯ばかりが残り、作るのが馬鹿らしくなった。


朝はお互いに勝手に食べている。


登校時間も別々。もともと生徒会の用事で藤吾はあたしよりも早く家を出る。


会話は必要最低限。


まるで父さんと二人暮らしの時に戻ったように家は静かだった。


あたしが望んでいた平穏な日々。


けれど、少し物足りないような気がするのはなぜだろう。




「島崎の妹はお前か?」


下校時間。


校門を出たところであたしは五人の知らない男子学生に囲まれた。


声をかけてきたのは、眉とこめかみの近くにピアスをしている男。


制服からすると夏目学園の生徒ではない。


もう一人、茶髪の男も同じ制服を着ていた。


彼ら五人を全員知らないというのは正確ではないかもしれない。


五人のうち三人には見覚えがあった。


入学式の日、藤吾が喧嘩していた不良達だ。


「違います。寺山の妹ならそうだけど」


これは事実だ。


藤吾の名字は島崎から寺山になっている。


あたしの揚げ足をとったような言動にピアスの男はカチンときたらしい。


「同じだろう。俺達はやつに借りがあんだよ」


声を荒げて言った。


藤吾は他校生とも喧嘩しているらしい。


全くあきれる。


下校している他の生徒たちは、関わり合いを避けてあたし達を遠巻きに見ている。


「見せもんじゃねぇ」


恫喝するような一声で彼らを追い払う茶髪の不良。


「あたしをどうしようっていうんですか?」


手が震えるのを見られないように、ぎゅっと鞄を胸に抱く。


いざとなったら、この鞄をふりまわして逃げよう。


「大事な妹が傷つけられたら、あの男もいよいよ本性だすだろう」


夏目学園の制服を着た三人のうちの一人が言った。


「ムカつくんだ。おれ達と同じくせに、生徒会長? 笑わせる。いい子ちゃんの外面はがしてやりてぇ」


先日の一件で、藤吾からぶさいく面と罵られていた金髪が拳を鳴らした。


「無駄ですよ。藤吾…お兄ちゃんが、あたしを助けてくれるはずがない」


あたしは鼻白む。


藤吾の外面がいいのは不良達が言うまでもない。


事実、学校では仲の良い兄妹を演じつづけているのだから。


だが、一歩家に帰れば赤の他人。


学校での優しさなどかけらもない。


あたしのことなど大切に思っているはずがない。


「妹だろう」


金髪があたしを不思議そうに見た。


こいつら藤吾のことまるで理解していない。


「義理ですから」


「なんだ、お前もあいつの正体知っているクチか?」


ピアスの男が察した。


あたしはうなずく。


「だったら話早いじゃん。おれ達に協力……」


「いやです」


名案を思いついたかのように手をたたいた金髪の言葉をあたしは途中でさえぎった。


険しい視線が四方八方からそそがれる。


「あなた達に協力する義理はありません」


言ってから後悔した。


親の仇にあったかのような目つきでにらまれる。


「痛い目みないとわからないらしいな」


ピアスの男がすごみをきかせた声で言った。


そもそも、あたしを人質にして藤吾を脅そうとする卑怯な奴らだ。


藤吾にのされていた時は同情したが、女の子に暴力をふるおうとする輩に協力なんてできるわけない。


あたしの選択は間違っていない。


でも、いざとなると怖かった。


拳があたしに向かって下ろされようとしている。


とっさに目をつむり、手に持った鞄で反射的に顔をかばった。


なんで、あたしがこんな目にあわなきゃいけないんだ。


そもそも藤吾のせいじゃないか。


あたしの普通の日々を返せ、ばかやろー。


悪態ばかりついてしまうが、それでも、さいごに助けを求めたのは藤吾だった。


「修子っ」


空耳かと思った。


藤吾があたしの名前を呼ぶとは思っていなかった。


いつもの、ちゃん付けの馬鹿にした感じではなく、真剣にあたしの名前を呼んでいた。


「藤吾…お兄ちゃん?」


乙女のピンチに颯爽とあらわれた白馬の王子さまは藤吾だった。




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