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未知との遭遇1
神さま。仏さま。ああ、もうなんでもいいから。
どうしてあたしがこんな目に?
今日から学び舎となるはずの建物裏。
時間は午前七時半ジャスト。
あたしは見知らぬ男にファーストキスを奪われていた。
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四月六日土曜日、快晴。
午前六時三十五分。
やわらかな春の陽ざしが新品の白いカーテンからさしこむ。
台所では真知子ママが朝食の支度をしている。目玉焼きがジュージューと焼かれる音。トーストの香ばしい匂いがここまで漂ってきそうだ。
「修子ちゃん。朝ごはん、できたわよ」
部屋にいるあたしを呼ぶ真知子ママの声。
あたし以外の女の人の声が家にひびく違和感にはだいぶ慣れた。
「はーい。今、いきます」
あたしは返事をしながら、ふたたび鏡のなかに映る自分の姿に目を戻した。
最終チェックだ。
おろしたての制服は濃紺のブレザー。同じく濃紺のプリーツスカート。のりのきいた制服は少々動きづらい。
一年生をしめすワインレッドのリボンが襟元でゆれている。
スカートは中学の時より短めに。ウエストを2回折りこみ、ひかえめに太腿が見えるくらいにする。
うん。いい感じ。
中学はセーラー服だったからブレザーって憧れていた。
自分の大人びた姿に、にんまりと笑みがこぼれる。
あたし、寺山修子は今日から高校生だ。




