独占放送についての余談
放送は大反響を持って迎えられた。
みんないい加減流行に飽きてきた事でもあるし、理屈を並べて無茶を言う「彼」について少々嫌になってきたところでも有るからだ。
そして「彼」の元には沢山とは言えないが、まぁ色々な人々が集まった。
日本国君主の彼はその放送を見て、部下の官僚に問い合わせた。
部下も同じく見ている所で誠意調査中という返事。
お役所仕事は概ね非効率的というのが相場だが、彼も知らない内に彼自身が一つの権力なっていた彼のおかげでありえないほど効率的に動いた。
結果、一家が心中したというのは事実
高税を求められていたのも事実、
ただし、彼が言わなかった事実としてその一家は不法移民などを低賃金労働で働たらかせて何人か行方不明が出ているという事実と、それをもめ消す見返りに東北公が税という名の賄賂を求めていた事。
この二つは後日正式に発表され、東北征伐という事で軍を利用しての制圧が即日決定された。
これは正義の戦いだ。彼はそう思った。これこそ私が求めていたものだと。
そして彼にとって運が良かった事として、彼が起こした東北征伐のおかげで世間の注目が少なくなった事。
戦争と一人の英雄の何方がニュースバリューが有るかと言えば、英雄の方が分が悪く、それが丁度良い隠れ蓑になった。
そして彼が発表しなかった彼の事が一つだけある。
彼はもちろん異世界からの来訪者などではない。妄想癖をこじらせてここまで来て、精神病棟に送り込むのはかわいそうという事で家から放逐されたただの妄想狂だ。
この世の中そうそうファンタジーなどない。正義に溺れる彼はそう一人で笑った。