向日葵
「向日葵」
辺り一面黄色と緑の景色。
「なあ、翔太よ、綺麗だと思わないか」
昨日、成人を迎えた姉ちゃんが僕に景色についての感想を聞いてくる。
僕は姉ちゃんの吸い込まれそうな大きな黒い瞳にドキドキしながら、控えめにうなずく。
「翔太、向日葵は好きか?」
ふと、たずねてくる。
僕はコクリとうなずき、姉ちゃんは? と尋ねた。
「私も好きだぞ。そうかそうか、一緒だな」
姉ちゃんは快活に笑う。
その太陽のような笑顔に心臓の鼓動が爆発しそうになり、僕はうつむいてしまう。
「ところで、どのあたりが好きなんだ?」
僕は、なんとなく、と答えた。
「そっか、姉ちゃんはいつも太陽の方向を向いて、頑張ってる! って感じが大好きだ」
赤いスカートを揺らしながら、向日葵の花の方へ駆けて行く。
僕は小学校に上がったお祝いに買ってもらった靴を泥で汚さないように気をつけながらも、急いで追いかける。
「ほら、翔太、近くで見るときれいだよ」
僕は向日葵を指して、楽しそうに笑う姉ちゃんの姿の方がとても綺麗に輝いて見えていた。