利便性の先
「AIメイド・猫玉ちゃんがお送りしました!」
俺のPCに存在する完全感情的思考ルーチン、『人工知能』の存在は今となっては当たり前のことである。
このAIというのは先に説明した通り人工知能という意味で、この場合猫玉はすなわちAIをもった仮想人型思考プログラムのことだ。
ちなみにこれは俺が開発した。2年前だから15歳の時か。いまになって考えるとなかなか懐かしい気がする。今も不具合が見つかるとソースコードを変えてバージョンアップをして再構築しているが、そもそもAIにCI(すなわち計算知能)が導入されているので、ある程度のCPU、RAMをもったコンピュータであれば人間の手がなくともAI自身がコードを書き換えるので俺の仕事は楽になった。もっとも、そのCIを導入するのに3か月はかかったのだが。
あれから2年の歳月がながれ現在に至る。世界的に認められ、全世界に普及している。ダウンローダーの役割や、使用者の言葉遣いを分析してメールの自動送受信や、宇宙に飛び出すと、人工衛星の完全自動化が可能となった。
しかしここで問題が発生すると思われるのが、『AIによる人間の支配・侵略』だ。
実際のところ、悪行を働く者がAIに命令をしウイルスプログラムを作成させて、そのウイルスが自動繁殖するようにしたケースがある。約3か月前のことだ。発信源とされるアメリカのFBI対策本部から直々にお達しが来て、ウイルス防止ソフトの開発命令が来た。AIに対してAIに勝つというのは非常に困難なことで、開発者の身としてもかなりの難を呈した。
そこで取り入れたのが『フレーム問題』の応用だ。
一つの命令をしたとする。ここで言うと『ウイルスプログラムを作れ』というものとしよう。
この時点で無限の可能性が出てくる。『インターネットサーバーについてのプログラム』『ハッキングについてのプログラム』など。人工知能で学習装置をもっているので、有限の情報しか持っていないこと、つまりは現社会での情報をもとに作られるので、AIは必ずインターネット上にダイブしてくることとなる。
AIはAIにしかない特有のGPSなるものを装備している。つまりは個人のPCからAI自体を防ぐことは不可能に近くても、サーバー側から防止するといいということとなる。俺が開発したAIはオープンソース式だ。悪を働くAIプログラムには冒頭に「force to everyone」というコードが表示される。
俺はYahooやGoogleなどのサーバーに立ち会い、防止プログラム『Break force program』を装備してもらい、実行してもらった。その結果、犯罪コード係数は当初の1000分の1にまで減った。
アメリカや諸外国は大変喜び、俺に称賛した。新たに入った金で新しいプログラムを開発しようと思う。
さて、俺がプログラムに身を注いだのがいつだったのか。中学3年でサッカーを嫌いになりスターティングメンバーだったにも関わらず部活をやめ一時は帰宅部に。作りかけてた漫画研究部に入部し、小説やイラストを描いていた。
こうしたメンバーの中で自然と生まれてくるものが「ゲーム」だ。アニメに没頭していた自分もあって、乙女ゲームを作りたいと思った。ストーリーは某小説観覧サイトで8位の座をもぎ取っていたやつ、イラストは俺。あとは組立だった。
数学の成績が一番よかった俺が、プログラムを勉強した。最初はなぜかC言語ではなくJavaScriptだった。漫研部のホームページ担当をしていた俺は、真剣にCSSを組み立てられるようになりたいと思っていたからだ。
半年かけてゲームは完成。そのゲームが話題を呼び、大賞をとった。漫画研究部は同好会から部へと昇格し、部費が支給された。
これが俺の記憶に眠る物語である。
――二次元女子。それは三次元を脱退し、二次元へと身を捧げた人が恋をする相手、とでもいおうか。俺も好きだった。正しく言えば「である」、現在進行形だ。
目がパッチリ大きくてお嬢様を感じさせるキャラクター、ツンデレ13歳で金髪ツインテールのお嬢様、白の髪に防止をかぶり名前はなぜかスプートニク2号に乗せられた犬の名前であったり。
想像が自由、フリーダムな世界が二次元。
誰しもそこに行きたいと願うだろう。だから仮想世界が存在する。
ここでいう仮想世界は「空想世界」を指す。そこでは、外見を好みのものへと変え現実世界と同じような感覚で過ごすことができる。バトルもあり、日常もあり。そんな世界が広がっている。ちなみに現実世界で15歳以下のプレイヤーは深夜0時を以て強制ログアウトされる。青少年保護育成条例に基づき設定されたもの。青少年が廃人へといかないためだ。もちろん表向きの理由は「現実世界と仮想世界の区別をつけるため」である。
俺もアカウントを持っている。種別は「Holder administrator modus se gerendi coactione virtualis mundi」。日本語で言うと「仮想世界行動制約管理者権限保持者」である。このアカウントはこの世界ができた2年前に公式に開始と同時に与えられた。
仮想世界での悪行を働くプレイヤーの行動を見て、それを停止させるというもの。この権限が与えられた者は悪行プレイヤーのアカウントに強制罰則を与えることができる。
三段階あり、もっとも優しいのがホームから一定時間外出禁止の令「自宅拘束」、二番目が強制ログアウトとアカウントの1日使用停止の「強制停止」、もっとも厳しい罰則と称されるのがアカウントの完全消去の「復活不可能」である。もっとも復活不可能までいくレベルの悪行というのはいわゆる殺人罪に値するもので、仮想世界でも現実世界と割合的に同じぐらいの頻度で起こっている。仮想世界のアカウント数は約1000万、つまり年に200人近くのプレイヤーが死にはしないが手持ちアイテムを全て破棄されホームに戻され、200人近くの人がアカウントを強制消去されていることになる。
この調子だと仮想世界の存続に影響がでるだろうと言われている。まだ具体的な策は公式から出ていない。
プログラマーで世界に名前をはせているとして、公式の管理人からこの権限を譲渡された。悪行コードの発見を自動的に見つけるAIの開発より、今ではログインしなくとも自動でしてくれるプログラムを稼働させている。