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きっかけ

ダン!

一瞬、何が起こったのか理解することが出来なかった。

三人程集まっている少年の真ん中を、誰かが通り過ぎたような気がした。


「な、何だ?」


その正体に気付くのに、少年達は時間をかけ過ぎた。

およそ10秒の出来事。

それだけで、今回の勝負に決着がついてしまった。


「……弱いな」

「何!? ……って、どこから声が……」

「ばーか。お前らの後ろだよ」

「「「!?」」」


間違いなく、由雪の声だ。

その声は、少年達の背後から聞こえてきて。

その声は、少年達をあざ笑うかのように、馬鹿にしたような口調で。

聞こえてきたと同時、少年達の腹部が異常なまでに痛みを発していた。


「うぐっ!」

「お、お前……何を……」


尋ねずにはいられなかった。

意味も分からない超常現象を身をもって味わってしまったのだ。

その理由を聞かないわけにはいかないだろう。

由雪は、その質問に対して少年達を鼻で笑った後に答える。


「簡単な話だ。お前達と同じで、魔術を使ったんだよ」

「バカ、な……お前は魔術を使えない、はず……」

「使えないんじゃない。使わなかっただけだ。今までは魔術が使えなかったお前達に合わせてやってただけだよ、雑魚共が」


そう告げると、由雪はそのままその場から立ち去って行く。


「ま、待て!!」


静止を求める声を無視して、由雪はそのまま少年達の視界から消えた。



~Side由雪迅~


つまらない。

まったくもって、手ごたえがない。

せっかく魔術が使えるようになったと言うからそれなりに力を出してやったと言うのに。


「なんだあの弱さは……」


弱い。

そう、アイツらは弱過ぎた。

準備運動にすらなりえない。

一言で言い表すとしたら、雑魚。

もはや雑魚とも称したくはなかった。

雑魚でも一分はもつことが出来るだろうに、実に情けない。


「さすがは飼いならされてきた犬だけはある。愛情に身を任せ過ぎると、ここまで衰えるものなのだな」


親からの愛情を受けているからこそ、奴らは弱いんだ。

孤独程強いものはないだろう。

親という存在を見捨て、友という存在に呆れている程の覚悟が必要となってくるのだと、俺は勝手に思っていた。

本当の強さはそこにある。

この時の俺は、勝手ながらそんな事を考えていた。


「はぁ……」


それに。

人間は付き合っていて面倒なだけだ。

慣れ合うのなんて勘弁してもらいたい。

孤独であれば、他人の心配を受ける必要もないし、する必要もない。

故に、気楽だ。


「……」


そのはずだった。

なのに、どうして俺はあの時、あの人物に関わろうとしてしまったのだろうか?

まったくもって理解出来ない感情であった。



それは少年達との戦いから数日後の話だ。

俺はいつも通り小学校に通っていた。

一応義務教育ということもあって、通わざるを得なかったのだ。

本当ならこんな場所にもいたくないのだが……そのせいで教師達が家まで来るのも面倒だった。

対応に困るだけだ。

俺はいつも窓際の席に座っている。

一度席替えをしてからずっと、この位置だ。

だから俺に関わろうとする人物は一人もいない。

それでいい。

それが一番気楽で、一番落ち着く。


「はい。今日は皆さんに転校生を紹介します!」


その日、俺達のクラスに転校生がやってきた。

だからどうだって話でもないし、第一俺だって関わるつもりもなかった。

どこぞの漫画の主人公みたく、ご都合主義的に隣の席が空席であるわけでもない。

そんなくだらない夢を見る程、俺は落ちぶれちゃいなかった。

ただ一つ、気になることがあると言ったら……。


「え、えっと……寺内麻美です。家庭の事情でこの街にやって来ました。皆さん、どうぞよろしくお願いします!」


緊張した面持ちであいさつをする、寺内。

軽く容姿を説明すると、白くて長い髪。

幼い面持ちながら、成長したら美人になるだろうと思われる整った顔立ち。

そして……俺よりも数センチは低いだろうと思われる身長。

恐らく、女子の平均身長よりも2,3cmは低いだろう。

そんな容姿のことなどどうでもいい。

それだけで一目惚れしている奴らもいたが、そんな奴らは関係ない。

ただ一つ、俺が気になったのは、彼女が纏うそのオーラ。

ただの人間が纏うそれではなく、もっと次元が違うもの。

すなわち、力。


「(アイツ……何かの力を持ってるんじゃないか?)」


そう。

結局俺が寺内麻美に興味を持ったのも、単にその力が気になったからだ。

別に寺内が抱えている事情や気持ちなんてどうでもいい。

ただ、彼女が纏うその力に惹かれていたのだ。

あわよくば、その力を自分の物にしようとまで考えていたのだ。

だからこそこの日、俺は初めて自分から他人に構おうと考えたのだった。


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