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数字の可視化の先に待つ、数字の無価値化。

作者: ムクダム
掲載日:2026/07/03

 インターネットを閲覧していて一番腹が立つのは、馬鹿げたタイトルのネットニュースが目に入った瞬間だ。

 例えば、「〇〇歳大物俳優△△について所見」みたいなやつだ。誰のことを指しているのかはニュースを開いてみないと分からないという寸法である。

 タイトルに具体的な名前を書いてしまうと、その人物に興味がない人はニュースを読んでくれない可能性が高い。また、名前をボカすことで、誰のことを言っているのだろうと興味を抱きニュースを読んでくれるかも知れない。そう言った思惑でつけられたタイトルだろう。

 いずれにせよ、内容の出来不出来によらずに閲覧数を稼ぎたいという、さもしい根性のなせる所業であり、人間はこの程度の生き物なのかと悲しい気持ちになる。AIに作らせているのかも知れないが、そんなものを作ろうと発想すること自体がすでに悲惨である。AIよりも非人間的な人間がこの情報社会には溢れている。

 

 数の多いものほど利益に繋がり、ネット世界では再生数や閲覧数などが多いものが正義であるというのが考え方が浸透している。中身の是非よりもどれだけ数を稼ぐかが肝要だと思われているようだ。だから、明らかに非難されると分かっている行為を撮影した、いわゆる迷惑動画も後を絶たない。

 迷惑動画で名前を売り、それを足場に社会的地位を確立するような人間だっている。正しいか間違っているかではなく、ただ数を稼げば良いという思考になるから、目立つための悪行を平気で行ってしまう。欲求に忠実と言えばそれまでだが、理性を持った人間がやるべきことではないだろう。ただ、悲しいことに私たちの社会は理性を捨てた人間にとって心地よいものとして出来上がりつつある。

 これはネット世界特有のものではなく、新聞や週刊誌といった従来のメディア、それらに連なる多様な利害関係者によってじっくりと醸成されてきたものであり、ネットというツールはそれを加速させたに過ぎない。ネットがなくても人間はどんどん下劣になったであろうことは想像に難くない。

 初期のネット空間には旧来のメディアへのカウンターになりうる土壌があったが、結局は利用者が増えることで旧来的な思考に汚染され、その役割を果たせなくなったと思う。

 ネットそのものが広がりを志向する性質を持っている以上、汚染の危険は避けられないものだったのかも知れない。クローズドな空間で、知性と理性を備え、欲求を抑制出来る人間だけが集まれば理想的な社会が成立するだろうが、それこそ夢物語だ。


 何にせよ、人間は数を稼ぐことにその生涯を費やす。そして、現代社会、特にネット社会においては数値は限りなく可視化されている。ブログや動画サイトの閲覧数、SNSのフォロワー数など例を挙げればキリがない。

 より多く、より大きい数値を持っている人間が優位な立場を得ることが可能な社会となっているから、どんな手段を使ってでも数を稼ごうという思考に支配される。そこに後ろめたさを感じることすら困難になってくる。

 ところで、数の優位というのは他者との比較によって成立するものである。他人と横並びではより多くの利益を受けることができないのが数値の世界だ。

 だから、数値が可視化された世界において他人よりも少しでも多く数を稼ごうと躍起になるのだが、その競争が行き過ぎると数値の価値、信頼度が揺らぐことになるのではないだろうか。

 

 例えば、動画サイトの再生数を好きなように増やす何らかのツールが開発されたとする。少ない人間がそのツールを利用しているうちは問題ないだろうが、その存在が明るみになった途端、人々の数値への信頼は地に落ちる事になる。そんなもので数値がいじれるようになれば、数値によって他人との差別化はできず、数値の価値が成立しなくなるからだ。

 そうなるといよいよ動画の中身で勝負ということになるが、ここでまた問題が起きるように思える。数を稼ぐことだけに躍起になっていた動画製作者は、どんなものに価値があるのかということが分からない。さらに恐ろしいことに、動画を視聴する側も何が自分にとって価値があるか、大切かが分からなくなってしまっている。こうなると袋小路である。発信する側も受診する側も何を軸にして良いか判断が出来なくなるのだ。

 多くの人間が自分で自分の首を絞めて意識を失う。何とくなくそんな未来の足音が聞こえる。別に動画サイトに限った話ではなく、人間社会そのものに言えそうなことである。終わり

 

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