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【悲報】俺が無双するほど世界が滅びる件。追放されたゴミ拾いが記憶を代償に聖遺物をリサイクルし続けたらいつの間にか最強に  作者: 龍朔太郎


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第5章:ギルドへの再臨――レオンの「英雄補正」

王都の冒険者ギルド『黄金の盾』。

そこは、ダンジョンから帰還した英雄たちの凱歌と、高価な酒の香りに満ちていた。


「ガハハ! 見ろよこの輝きを! あの『ゴミ拾い』を切り捨てた途端、運気が爆発したんだ。これが俺の、真の『覚醒』ってやつさ!」


酒場の中心で、レオンが真新しい「金色の甲冑」を誇示していた。

その装備は、彼が以前使っていたものとは一線を画していた。装飾の一つ一つが脈動するように明滅し、装備者の意志を先回りするかのように、最適な重みで体に馴染んでいる。

レオン自身、この力の正体には気づいていない。

ただ、「今日は妙に体が軽い」「剣を振れば勝手に急所に吸い込まれる」といった全能感に酔いしれているだけだ。その瞳の奥で、時折、意思の介在しない無機質な銀色の光が明滅していることにも。


「本当よ。ヴァンという不純物がいなくなって、ようやく世界が私たちを正当に評価し始めたのよ」


ミリアもまた、透き通るような白銀の杖を手に、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

ギルドの冒険者たちは、彼らの「覚醒」を疑うことなく称賛し、拍手を送る。誰もが、死んだはずの「ゴミ拾い」のことなど、一秒も思い出してはいなかった。

その、賑やかな扉が開くまでは。

キィ、と重厚な扉が軋んだ。

逆光の中に立つ、漆黒のコートを纏った人影。

その人物が一歩踏み出すたびに、ギルド内の喧騒が、潮が引くように静まり返っていく。


「……何の騒ぎだ? 葬式にしては、随分と騒がしい」


低く、温度のない声。

レオンとミリアの顔から、一気に血の気が引いた。


「バ、ヴァン……!? なぜ、お前がここに……。第90階層で、確実に死んだはずだろうが!」


「残念だったな。ゴミ箱の中身が、溢れ出してしまったらしい」


僕は、背中に背負った「巨大な袋」をギルドのカウンターに叩きつけた。

ドォォン! と建物全体が揺れるほどの衝撃。袋の口からこぼれ落ちたのは、地上ではお目にかかれない高純度の魔導鉱石や、失われたはずの古代遺物の破片――すべて【万物錬成】で最高品質に精錬された『ゴミ』だった。


「素材の換金に来た。それと……このギルドにある『不運』と『呪い』をすべて買い取りたい」


受付嬢が恐怖に凍りつく中、レオンが震える手で剣を抜いた。


「ふざけるな! 幽霊か何か知らんが、お前のような不浄な存在がギルドの敷地を踏むこと自体、許されることじゃないんだよ!」


レオンが剣を振り上げる。その瞬間、僕は奇妙な光景を目にした。

レオンの意志とは無関係に、彼の肘の角度、足の踏み込みが、機械的な精密さで「最適化」されていく。


――【システム警告】世界の免疫機能『英雄補正ヒーロー・バイアス』を確認。

――【解析】対象:レオンは、世界OSによる直接介入を受けています。……本人は自覚していません。

――【警告】対象の装備は「聖遺物」。装備者の神経系をハッキングし、バグ(あなた)を排除するための『自動戦闘端末』として機能しています。


「なるほど。レオン……お前はただの馬鹿じゃなく、世界に『都合の良い駒』として作り替えられたわけか」


レオンの攻撃が放たれる。

それは、彼が一生かかっても到達できないはずの、神速の領域だった。


「――死ねえッ!」


レオンが叫ぶ。だが、その叫び声と、彼の体の動きはわずかにズレていた。彼の体は、彼自身の意志よりも速く、世界に動かされている。

僕は、その「世界が導いた正解の軌道」を、指先一つで弾き飛ばした。

キンッ! と、物理法則を拒絶する音が響く。


「……なっ!? 俺の、この『覚醒』した一撃を……っ!」


レオンの背後に、巨大な「光の輪」が浮かび上がる。

世界は彼を負けさせない。彼が空振れば空間を歪めて当てさせ、彼が傷つけば強制的に治癒のログを流し込む。

レオンの表情が、一瞬だけ空洞になった。自分の体が勝手に動き、見覚えのない超高等スキルを連発し始めたことに、戸惑いと、それ以上の「万能感」が彼を飲み込んでいく。


「……ハハ、ハハハ! そうか、これこそが俺の真の力! ヴァン、お前のようなゴミが勝てる相手じゃないんだよ!」


レオンの瞳から、人間らしい光がさらに一段階、消えた。

――【代償確認】世界の介入を突破するための演算を開始します。

――【代償】あなたの記憶から『仲間と背中を預け合った際の信頼感』を永久に焼却します。


「……ああ、捨てろ。もう、重荷でしかない」


脳の奥で、かつてレオンの背中を守ろうと誓った青臭い記憶が、黒い霧となって消え去った。

代わりに、僕の視界にはレオンを操る「光の糸」がはっきりと見えた。


「お前の『運命』を、今から『ゴミ』として拾い上げてやる」


僕は【万物錬成】を発動させた。

レオンに注がれる「世界のエネルギー」を、そのまま掴み取り、圧縮し、ただの「重り」へと書き換える。


「……っ、ぐあ!? 身体が……重い……!? なんだ、これ……!」


レオンが床に膝をつく。世界は彼を助けようと、さらに膨大な光を注ぎ込むが、僕はその光さえも「素材」として吸収し、ギルドの床一面を覆う『魔力の重圧』へとリサイクルした。


「世界がお前を甘やかすほど、僕にとっては最高の『燃料』になるんだ」


僕は、懐からリサイクルで作った「呪いの金貨」を数枚、レオンの足元に放り投げた。

それは、彼の『英雄としての価値』を侮辱するための端金だ。


「……レオン、お前は今、世界で一番価値のない『神の操り人形』だ。自分の力だと信じ込んでいるその光、いつかその光に食い殺されるぞ」


レオンは金貨を拾おうとしたが、指先がピクリとも動かない。

ギルド内の人々は、圧倒的な力を見せるヴァンと、無様に震えるレオンを交互に見ている。誰もが「レオン様が負けるはずがない」という困惑と、ヴァンの放つ「異物」の威圧感に支配されていた。

世界はまだ、レオンを捨ててはいない。

むしろ、ヴァンという脅威を排除するために、レオンをより強力な「怪物」へと改造しようと、深層でうごめき始めていた。


「……拾う者だよ。世界が捨てた価値も、世界が守ろうとする偽善も、全部僕が拾って終わりにしてやる」


僕は換金の手続きを終えると、背中を見せてギルドを後にした。

背後では、レオンの頭の中で「世界の意思」が、彼自身の思考を模倣して囁き続けていた。


(殺さなきゃ……。アイツを殺さなきゃ……俺が、俺でいられなくなる……)


それは、勇者の覚醒ではなく、人間としての崩壊の始まりだった。

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