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籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした  作者: 狭山ひびき
籠の鳥王女と魔法使い

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魔法師団長への褒章 2

お気に入り登録、評価などありがとうございます!


本日、三回目の更新です!

「ってことがあったのよレーヌ」

「はいはい。もう百万回くらい聞きましたよ、その話」


 あれから十三年。


 十八歳になったわたしは、レーヌにふわふわすぎる髪を結ってもらいながら、子供の頃の思い出を語っていた。

 小さかった体はすらりと伸び(と言っても、お姉様たちと比べると小柄な方なんだけど)、ふっくらとした頬の輪郭はちょっとシャープに、おっとりとした雰囲気の緑色のたれ目は健在だけど、だいぶ子供っぽさはなくなった。

 これでもう少し胸とかお尻にお肉がつけばすっかり大人の女性になったと胸を張れるのだけど、いかんせん、体型はまだ子供っぽい。


 お兄様やお姉様たちは「エジュはまだまだお子様だから、体も中身の成長に合わせているんだろうね」なんて冗談交じりに言うのだけど、中身はだいぶ淑女だと思うの。

 だって、王女として学ばなくてはならないお勉強も全部学び終えて、今は花嫁修業として得意な刺繍の腕を磨いているところだもの。

 まあ、花嫁修業と言っても、嫁ぐ相手は決まっていないのだけど。


 ……それもこれも、お父様やお兄様たちが過保護すぎるからだわ!


 お父様とお兄様たちはわたしのことをいつまでも子供だと思っていて、口を揃えて「エジュに結婚はまだ早いよ」なんて言うの。

 だけどわたしはもう十八歳よ?

 上のお姉様は十七歳の時に公爵家に嫁いだわ。

 二番目のお姉様だって、十九歳の時に隣国の第二王子に嫁いだもの。

 それなのに、十八歳のわたしは、まだ婚約者もいないの。おかしいじゃない?


 ……でも、いきなり結婚相手が決まっても困るんだけどね。


 だって、わたしの心は五歳の時から決まっている。

 可愛いマノンを助けてくれて颯爽と去って行ったシャルルに、わたしはすっかり心を奪われてしまったのだから。


 シャルルと会えたのはあとにも先にもあの一回だけだけど、シャルルは今はこの国で右に並ぶものなしの大魔法使いだから、彼のことはよく知っているわ!

 小柄だった彼は見上げるほど大きくなったみたいで、いつも黒いフード付きの魔法使いのローブを着ているのよ。

 そしてフードを目深にかぶって、誰にもその顔を見せようとしないんだって!


 ……なんてミステリアス!


 シャルルの噂には「大男」だとか「顔が醜いらしい」とか「根暗」だとかろくなものがなかったけれど、それはきっと、みんなが彼を妬んでいるからよ。才能のある人は妬まれるんだもの。

 もちろん、わたしはただの噂だって信じているけれど、好きな人が悪く言われるのは面白くないじゃない?

 だからことあるごとに、五歳の時にシャルルに助けてもらった話をしてまわっているのよ。


「エドウィージュ様がどれだけシャルル魔法師団長のことが大好きなのはわかりましたけれど、しっかりしてくださいませ。今日はその大好きな師団長様の凱旋パーティーですよ」

「もちろんわかっているわ!」


 わたしが大好きなシャルルは、一年前から二番目の姉が嫁いだ東の隣国ドゥファンの戦争に加勢しに行っていた。

 ドゥファン国は数年前に東の大国に戦争を仕掛けられて、いよいよ国境が落とされそうになり、我が国ブラン王国に応援要請が入ったのだ。


 ブラン王国は小国だけど、大陸一の魔法大国。

 我が国が誇る魔法師団は、大きな兵力を抱える大国でも迂闊に手が出せないほどに警戒されている。

 愛娘が嫁いだこともあり、お父様は何が何でもドゥファン国が落とされるわけにはいかないと、要請に応じて魔法師団を派遣したの。


 そして、我が魔法師団が国境を攻め落とそうとしていた相手国を撃退、ついでに彼ら側の国境付近に大ダメージを与えて停戦に持ち込み、昨日、凱旋帰国を果たしたのだ。そのお祝いパーティーが今晩開かれるの。

 中でも魔法師団長という地位にまで上りつめたシャルルの活躍はすさまじいものがあったらしい。

 だから今日のパーティーでお父様がシャルルに褒賞を与えると言っていたわ。


 ……ふふふん、これでシャルルが素敵な方だってみんなもわかるわよね。あ、でも、それで求婚者が殺到したらどうしよう……。


 好きな人には幸せになってもらいたいが、まだ心の準備ができていない。

 お幸せに、とシャルルの結婚を笑って祝福できるようになるまで、彼にはもうちょっと独身でいてほしいと思うのは傲慢だろうか。だってシャルル、もう二十二歳だし……。


「エドウィージュ様、楽しみなのはわかりますが、そのように百面相をなさっているとお化粧ができませんよ。口紅を塗るのを失敗して、こーんなに大きなお口になるかもしれません」

「それは困るわ!」

「では、はい。きりっと」

「きりっと!」

「……ぷっ」

「ちょっとレーヌ、笑うなんてひどいわ! きりっとしてるのにっ!」


 きりっとしろと言われて言う通りにしたのに!


「すみません、その顔があんまりにも、おも……可愛くて」

「今面白いって言おうとした?」

「してません」


 にこっとレーヌが誤魔化すように微笑んだ。

 もう、そんな顔で誤魔化そうとしてもわかっているのよ。絶対「面白い」って言おうとしたわ!

 レーヌはわたしの専属侍女である。

 わたしが九歳のころから一緒にいるレーヌは二十三歳。そろそろ身を固めてもいい頃なのに、「エドウィージュ様が心配ですからね」と言って、まだ結婚するつもりはないらしい。

 長年一緒にいて、わたしの遊び相手でもあったレーヌとは気心が知れた関係だが、こうしてたまに揶揄って来るのが問題だ。


 ……きっとわたしに威厳が足りないせいね。きりっと!


「ぷっ!」

「レーヌっ!」


 真面目な顔をしたのになんでまた笑うのか。

 そんなわたしとレーヌのやり取りを遠くから眺めていた愛猫マノンは、くわっと大きく欠伸をして――


「けっ」


 変な鳴き声で鳴いた。





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