プロローグ
新連載開始します(≧▽≦)
どうぞよろしくお願いいたします!
「わ、わわわ、わたしは、たたたた食べても、おおおお美味しくありませんよ⁉」
わたし――小国のくせに「魔法大国」なんて矛盾した二つ名をつけられているブラン王国の第三王女エドウィージュは、何度もどもりながら、覆いかぶさって来る男を見上げた。
わたしのふわふわと波打つ金髪は白いシーツの上に広がり、それを男の手が先ほどから透くように撫でている。
つい先ほど、わたしをベッドに押し倒した暴挙から考えると信じられないくらいに優しい手つきに、わたしは絶賛大混乱中だ。
背の高い男である。
濃い紫色の髪に、黒い瞳。
前身は漆黒のローブに覆われている。
白い肌にほっそりとした頬。男性にしては首筋が細いことから考えると、きっと騎士ではないと思う。というか、白すぎる肌には日差しはあまりに不似合いで、あまり外に出ない文官とか、研究者とかそういった類の職業ではないかと思った。
そんなことを、つらつらと考える余裕があるのは、男がわたしを押し倒した体勢のまま動かないからだ。
さっき、「いっそ、食べてしまおうか」などと不穏な言葉をつぶやいていたが、聞き間違いだったのかもしれない。
……そ、そうよね? 人が人を食べるなんて……それこそ、『深海の美女』伝説くらいでしか知らないもの!
『深海の美女』とは、わたしが子供の頃にすっごく気に入って何度も何度も読んでいたおとぎ話のことである。
海の底には美女がすんでいて、その血肉を食べると不老不死になるという伝説を描いたおとぎ話だ。それを聞けばホラーな感じがするが、なんてことはない。ロマンチックな恋物語である。不老不死を求めて海に出た王子が溺れかけ、それを助けた深海の美女と恋に落ちる物語だ。
わたしが知る中で人が人の血肉を口にすることが書かれていたのは、このおとぎ話くらいなものなので、きっと現実にはそんな人はいないはず。
第一わたしは小柄で、胸もお尻もささやかで、お腹もぺったんこなので、食べるお肉はあんまりないと思うし、きっと美味しくない。
だから食べる云々は聞き間違いのはずだ。
だけど、そうならばどうしてわたしはベッドに押し倒されているのだろう。
「あ、あああのぅ?」
男は、じっとこちらを見下ろしたままである。
時折悪戯をするようにわたしの髪を指に巻き付けるくらいしかしない。
……この人は一体何をしたいのかしら?
というか、いったいどうやってここに入って来たのだろうか。
ここは、わたしが今夜泊まることにした宿の一室である。
セキュリティもしっかりしている宿なのに、わたしがお風呂から上がったらこの男が部屋にいた。
入り口には鍵をかけたはずだし、続きの部屋には侍女のレーヌもいる。
護衛騎士のジェラルドも、都築部屋ではないが隣の部屋で待機しているはずだ。ジェラルドは耳がいいので、小さな物音でもすぐに反応するはずなのに、彼がやってくる気配はない。
押し倒されるときに、ちょっと大きな音がしたにも関わらず、だ。
……何かが変だわ。
わたしの部屋で大きな音がすれば、レーヌやジェラルドがすっ飛んでくるはずなのに。
わたしはじっと男の顔を見、それからピンときた。
「あなた――」
「やっと気づいたか」
男がホッと安堵をにじませた顔をする。
わたしは大きく頷いた。
「魔法使いね‼」
「…………ハァ」
男がこれ見よがしなため息をついた。
さっきの安堵の表情も一変し、あきれたような、それでいてどこか悲しそうな顔をしている。
「もういい、王女。時間切れだ」
「え⁉」
男が、吐息がかかるほどに顔を近づけてきて、言った。
「たとえどこへ逃げようとも、俺は絶対に逃がさない。たとえ世界の果てだろうと追いかけて、必ずその足に枷をはめてやろう。俺から逃げる足など、必要ないだろう?」
黒い瞳を暗く暗く染めて、男は――
「な、ななななな……」
わたしの顎を掴むと、そのまま徐々に顔を近づけてきて……。
「何を言っているの――⁉」
危ない人だわーっと叫んだわたしは、その勢いのままに――……
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