流星群が降る日に
以前投稿した作品に「星空指数100」というのがあります。その前身ともなる作品がこちらです。短編ですが、それを今回投稿してみました。
一年前の夏、俺はこの場所で君と出会った。
今年も好条件だって。もしも叶うなら、君ともう一度見たい。ペルセウス座流星群を。
一年前、大学3年の夏だった。天文部員だった俺は、ペルセウス座流星群の観測会を楽しみにしていた。部員のみんなと、この七尾天文公園で観測する予定だった。天体望遠鏡とカメラの準備も万端だったのに、前日の飲み会で部員の仲間達は食中毒。飲み会に参加しなかった俺は、1人だけで観測することになった。
流星群が流れ始めた。一つ、また一つと。
俺は天体写真を撮ろうとカメラのシャッターを開いた。するとそこへ1人の女性が来て、
「あの、そのカメラで流星群を撮ってるんですか?」
と俺に話しかけてきた。
「え?はい」
俺は答えた。すると、その女性は、
「今年の流星群、すごくきれいですよね。新月だから星がよく見える」
と言った。俺はその人の横顔が、なんだかとても切なく見えた。
「星、好きなんですか?」
俺はそう聞いてみた。
「あんまり詳しくないけど、星ってなんだか神秘的で好きです。ホント願いが叶うんじゃないかって思っちゃいます」
と彼女は答えた。
「叶うさ!」
俺は、ついかっこつけて言ったら、彼女は少し笑顔になった。
「あ、俺は大学の天文部員で仲間と観測会する予定だったけど、みんな来られなくなったから1人で来たんです。名前は高野しゅうじです。21歳、おとめ座」
つい自己紹介してしまった。
「私は山野ゆきです。22歳の新人看護師。今日は彼と来る予定だったけど、彼が体調不良で私1人で来ました」
なんだ、彼氏がいるのか、、。
続けて彼女は、
「あの、お願いがあります。この天体写真を一枚いただけませんか?」
と涙目になりながら言った。俺は、
「いいよですよ」
と返事をしたが、彼女がなぜそんな悲しそうな顔をするのか気になった。
「私の彼、星がすごく好きなんですけど、今入院中で」
「え、病気?」
俺は率直に聞いてしまった。
「はい。実はいつ急変してもおかしくない状態で、どうしても今日の写真を見せてあげたくて、、」
彼女は真剣だった。俺はもちろん写真をあげるつもりだった。
「見て!まるで降ってくるみたいですよね。すごく素敵な天体ショー。その彼が早く良くなるように俺も願います」
「ありがとうございます」
彼女が微笑んだ。俺は今日初めて会った彼女を、なぜだか笑顔にしてあげたい気持ちでいっぱいになった。
俺たちは、無言で流星群をずっと眺めていた。そして写真が仕上がったら俺が連絡するという約束で別れた。
後日、なかなか良い仕上がりの天体写真を早く彼女に見せたくて電話をしてみた。しかし、彼女は電話に出ない。何度もかけた。あんなに恋人に見せたがっていた天体写真なのに、、。
月日は流れ、俺は大学4年になり、就職活動の毎日で、たまに天文部に顔を出して仲間と過ごしていた。
そして今年もやってきた夏。
「先輩、明日のペルセウス座流星群の観測会はいつもの天文公園でやりますから、就活の息抜きにでも来てくださいよ」
と、後輩から誘われた。そう、1年前の夏、山野ゆきという女性をただ笑顔にしたくて一緒に星を見ていた。あれから恋人は元気になったのだろう。俺からの電話に出なかったのだから、もう写真は必要ないってことだったのかも。
「先輩、天体ショー始まりましたよ」
でも、もしも叶うなら君ともう一度見たい。
「あの、あなたが撮った天体写真、一枚いただけませんか?」
「え?」
俺は驚いた。振り返ると、あの彼女がいた。そこには満面の笑顔で流星群を見ているゆきさんがいた。ゆきさんはつぶやいた。
「彼は大好きな星になった」と。
俺は、ゆきさんがいつまでも笑顔で、星になった恋人をずっと見ていられるように星の魅力を教えてあげたいと心から思った。
最後までお読みいただきありがとうございました。




