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第4話「街の灯の下で」

迷宮の石門を抜けた瞬間、

肌にあたる空気が変わった。

ひんやりした地下の風から、

どこか埃っぽい、けれど生きた街の匂いへ。

「……帰ってきたな。」

リアが呟くと、エナが笑った。

「うん! 初任務成功、ってやつ?」

「まだ実感ないけどな。」

カイルが肩をすくめる。

彼らは《霧の渓流》での依頼を終え、

ギルドのあるアステリアへと戻ってきたばかりだった。

ギルド

扉を押し開けると、

夕方のギルドは喧噪に満ちていた。

報告書を書く者、酒をあおる者、依頼掲示板を睨む者。

冒険者たちの匂いが充満している。

受付のリネアが顔を上げた。

栗色の髪をきっちりまとめた彼女は、柔らかく微笑んだ。

「お帰りなさい、リアさん。報告書は?」

「これで全部です。渓流の異変は沈静化しました。」

「確認しますね……」

手早く書類をめくるリネアの目が、一瞬だけ細められた。

「“灰の霧”の発生……ですか?」

「はい。小規模でしたが、確かに存在してました。」

「……そうですか。実は他の探索隊からも、似た報告が出ています。

 特に北東の森付近。灰色の霧と、低温現象が――」

「それって、“灰の祠”のある区域じゃないか?」

カイルが思わず口にした。

リネアは言葉を濁した。

「その名を……誰から?」

「ただの噂だ。ギルドが封鎖してる場所だろ?」

「……今は詳細はお話できませんが、あまり近づかないでくださいね。」

リネアは微笑んだが、目だけは笑っていなかった。

市場と屋台

報告を終え、三人は街を歩いた。

夕暮れ、屋台の明かりがともりはじめる。

焼き串、薬草茶、果実酒の香りが入り混じる。

「はぁー、生きて帰ってきた味だぁ!」

エナが串焼きを両手に持ってはしゃぐ。

「おい、歩きながら食うなよ。」

リアが呆れると、カイルが笑った。

「いいじゃねぇか。次の任務までくらい、楽しめ。」

彼らの笑い声が夜の街に溶けていく。

その瞬間だけは、冒険者ではなくただの若者だった。

酒場の片隅で

ふと、通りの先から声が聞こえた。

「おい聞いたか? “灰の影”の噂。」

「またかよ。どうせ幽霊話だろ。」

「いや、今度は“人の形”してたらしいぜ。銀髪の女でよ。」

リアの足が止まる。

(……銀髪の、女?)

心臓が音を立てた。

だが、声の主たちは笑いながら酒をあおり、話題を変えてしまう。

「……リア?」

エナが心配そうに覗き込む。

「いや……なんでもない。」

リアは小さく首を振った。

だが、胸の奥に小さな熱が灯っていた。

夜、宿の窓辺

夜風が窓を揺らす。

遠くに見える迷宮の塔は、月光を反射して青白く光っていた。

リアは剣を傍らに置き、静かに呟く。

「姉さん……いったい、どこにいるんだ。」

その瞳には、決意の炎が宿っていた。

明日も潜る。

今度こそ――“その影”の正体を確かめるために。

――迷宮の奥で、何かが動き出していた

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