第5.5話 --ある日の討伐隊2--
森に剣と魔法の音がこだました。
先頭を走るのは、勇者アレン。金の縁取りのマントを翻し、剣を構える姿は誰が見てもリーダーとわかる。
すぐ後ろで盾を構えるのが、剣士ロイク。大柄な体に似合わず軽快に動き、敵を引きつける。
少し離れて詠唱を始めるのは、僧侶サム。低く落ち着いた声が響き、回復の光が仲間を包む。
そして後衛に立ち、結界を張るのが魔法使いミラ。杖の先が淡く輝き、敵の牙を弾き返した。
アレン:「ロイク、左!」
ロイク:「了解!」
剣が閃き、最後の魔獣が倒れた。
すぐにサムが回復の光を走らせ、ロイクの肩の傷が消える。
サム:「はい、これで大丈夫です。」
ミラ:「おかげでこっちも魔力を温存できました。」
アレンは剣をおさめ、短く頷いた。
アレン:「よし、今日はここで野営だ。無理に詰めない。」
ロイク:「助かる。昨日の反省会で肩の回復が進んだばっかりだしな。」
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火がぱちぱちとはぜる。
四人は自然に焚き火を囲んで座った。
以前は黙々と食べていた干し肉も、今では誰かが冗談を言い、笑い声がこぼれる。
アレン:「さて、軽く反省会しよう。ルールは覚えてるな?」
ロイク:「まずは褒めるからだろ。」
ミラ:「じゃあ私から。アレンの指示が速かったです。前線が崩れずに済みました。」
アレン:「ありがとう。サムの回復も早かった。」
サム:「ミラの結界が揺れなくて助かりました。」
ロイク:「お前ら褒めすぎで逆に照れるぞ。」
アレンは笑い、紙に簡単にメモを取った。
アレン:「改善点は……俺、次は早めに休憩入れる。昨日よりずっと動きがいい。」
ロイク:「俺も盾の位置をもう少し下げる。長時間持っても肩がもたない。」
サム:「僕は祈りの札の配置を変えます。詠唱が速くなります。」
ミラ:「じゃあ私は魔力残量を必ず報告。今日は七割残ってます。」
全員が頷き、場が少し温かくなる。
火の粉が舞い上がり、サムがふっと笑った。
サム:「こうして言葉にすると、明日も頑張ろうって気になりますね。」
ロイク:「ま、うまい飯も食えるしな。」
ミラ:「食事、ちゃんと味わえるようになりました。」
アレン:「……じゃあ今日は早めに休もう。夜番は二時間交代だ。」
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翌朝。
薄明るい草原に、焚き火の残り火が煙を上げている。
朝食を終え、全員がそろって荷物をまとめた。
ミラ:「魔力、今日は満タンです。」
サム:「肩の痛みも取れました。」
ロイク:「俺は今日、盾を落とさねえぞ。」
アレンは剣を肩に担ぎ、仲間を見渡す。
アレン:「じゃあ行こうか。昼前に一度休む、忘れるなよ。」
ロイク:「へいへい。」
四人の足音がそろい、草原を踏むリズムが心地よく響いた。
昨日までの重たい沈黙はなく、軽口が飛び交う。
反省会で積み上げた言葉が、確かに彼らをつないでいた。




