番外編 --カリスの和平サポート大作戦--
ご覧いただきありがとうございます。
1日2話以上の更新を目指しています。
多くの人に届くように、評価だけでもよろしくお願いします。
朝の和ら木。
陽の光がカウンターに差し込み、三郎は今日も静かに準備をしていた。
カリスは珍しく張り詰めた顔で、紙束を抱えて現れる。
カリス:「三郎さん! 今日は“和平協定の最終準備日”です!
わたしも正式にお手伝いに行きます!」
「……ああ、例の会場の設営ですね。えっと、カリスさんが?」
カリス:「はいっ! 勇者さんたちに負けていられません!
“世界を救うには裏方から!”ってアルベルトさんも言ってました!」
ワタまる:「ぽふー(いやな予感)」
「ハハッ…。テンション高すぎるけど、大丈夫かな…。」
---
【和平準備・午前の部】
会場――中立区アークフェリア。
和平協定の署名式を前日に控え、
勇者アレンたちは本来警備のため、そして本番の立会人として
集まっていたのだが、やることが無さすぎて、
机の配置や装飾物のお手伝いをしていた。
ロイク:「……あれ、テーブルクロスが全部風で飛んでないか?」
サム:「ああ、さっき“風がこもって暑そうだから”って言ってた誰かが窓を全開に――」
ドゴォォォォンッ!!
カリス:「風通し完璧ですねっ!!」
ミラ:「……完璧に飛んでったわね。」
三郎が遅れて遠くからやってくる。
「おはようございま――って何この惨状。」
アレン:「ハッ…ハハ…、ま、まぁ、カリスさんらしいな……。」
---
【昼の部】
和平の象徴となる花壇の植え替え中。
夜の民の使者たちも手伝いに来ていた。
カリス:「この“光る花”いっぱい植えられてて、
光ったらきっと華やかですね! 夜でもキラキラ!」
ミラ:「あ、それ摩力で光るから、カリス様が触ると――」
ボフン!
光の煙が上がり、一面の花がピカピカと点滅し始めた。
カリス:「す、すごいっ! まるで夜空みたいですよ!!」
ロイク:「まぶしすぎて誰も前見えねぇよ!!」
サム(祈りながら:「落ち着け、落ち着け……花壇の精霊よ……鎮まれ……。」
ワタまる:「ぽふーー(目ぇチカチカするぅぅ)」
---
【夕方の部】
混乱を収め、ようやく机と花壇が整ったころ。
勇者アレンが軽くストレッチしながら微笑む。
アレン:「……まぁ、これも全部“経験”だな。」
ロイク:「経験も多すぎたら体がもたねぇ。」
ミラ:「でも、笑って片付けられるのが、和平の現場って感じね。」
三郎は雑巾をしぼりながら、少し笑った。
「カリスさんの“完璧”って、なんか人を動かす力ありますよね。」
カリス:「えっ!? ほんとですか!? じゃあ次は“署名の火花エフェクト”を――」
全員:「やめてぇぇぇぇぇ!!」
---
【夜の和ら木】
無事に準備を終えた一同が、店で打ち上げをしていた。
カリスは頬を赤らめながら、湯気立つカップを掲げる。
カリス:「ふふっ……でも、結果的に全部間に合いました!
だから、これって“成功”ですよねっ!」
「……まぁ、結果オーライです。」
ミラ:「カリス様がいなきゃ、笑いの絶えない現場にはならなかったわ。」
アレン:「そうだな。緊張が解けたぶん、きっと明日はうまくいく。」
サム:「“和ら木の加護”ってやつですかね。」
ワタまる:「ぽふー!(次回予告:カリス、署名台を爆破!?)」
カリス:「えっ!? 爆破なんてしませんよぉっ!? ……多分!」
全員:「多分て言うなぁーー!!」
薪がぱちりと鳴り、笑い声が響く。
明日、世界はひとつになる。
だがその前夜、世界はすでに――笑いで一つになっていた。




