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最前線に一番弱い俺がいる  Where the Weakest Stands First  作者: 斎賀久遠
**第1章:拾われた盾、託された未来 **
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第五話:【名を持つもの】

結局、生き残ったのは俺だけだった。


他の奴隷たちは逃げ、刺され、踏み潰され、喰われていった。

一緒に走った奴の名前さえ、俺は知らない。


でも、俺は立っていた。

盾は歪んでいた。

左腕も折れているかもしれない。

けれど、意識だけは地面に落ちなかった。


「……ふーん」


声がした。


赤いドレスの上に旅用のコートを羽織った小柄な女。

目だけが異常に鋭かった。


「この子、気に入ったわ」


まるで花瓶でも選ぶように、俺を指さして言った。


「買い取るわ。名前がないのは面倒ね。そうね……『クロード』。それでいいわ」


「……はい?」と、誰かが呟いた。


周囲の貴族がざわついたが、すぐに空気が冷え込んだ。


「またですか、お嬢様」

「……ええ、またよ。文句ある?」

「いえ、ございません」


貴族たちは一歩引き、主人は肩をすくめただけだった。


俺は立っていた。

それだけなのに、名前がついた。


「クロード」


何度か呼ばれた気がした。

名前を呼ばれるという感覚は、

まるで遠くの霧の中から誰かが手を伸ばしてくるようで。


でも俺は、何も言えなかった。

ただ、立っていた。

それが、いつもの仕事だったからだ。

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