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最前線に一番弱い俺がいる  Where the Weakest Stands First  作者: 斎賀久遠
**第1章:拾われた盾、託された未来 **
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第四話:【余興】

「囮役は…そうだな、五人もいれば充分か。こいつらでいい」


指を鳴らす。

名前は呼ばれない。

名前で呼ぶ価値がないからだ。


「お前ら、岩陰の方を走れ。吠え声を上げて。そうすれば、あのモンスターはこっちに来る」


貴族たちは、狩りの準備をしていた。

とは言っても、装飾の多い弓と、飾りのついた防具を身に着け、笑っているだけ。


「失敗したら?」

「……別に、どうでもいいだろ」


それが“余興”だ。

命の重さは、彼らの退屈よりも軽い。


猫背のまま、俺も岩場へ向かう。

他の奴隷が震えてる。

ひとりが小さく、呟いた。


「……俺は行かない」


そう言って背を向けた男は、


次の瞬間、背中に矢を受けて倒れた。


貴族のひとりが、微笑みながら弓を引き直していた。


「……うーん、あまり面白くないな。外したと思ったが」


血が、岩に広がっていく。

誰も声を上げなかった。


「さて、残りは四人か。逃げないように」


挿絵(By みてみん)


俺は、無言で走り出す。

足場が悪い。

でも、叫ぶ。吠える。

どうせどこかで吠えることになるなら、ここで済ませる。


——そして奴らの“獲物”が、動いた。


地響きと共に岩が崩れる。

黒い巨体が唸る。


俺の方へ、一直線だった。


「ああ…やっぱり俺か」


膝が笑った。

呼吸も、笑った。

でも、盾は落とさなかった。


たとえ“余興”でも。

俺は、立ってみせる....。

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