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最前線に一番弱い俺がいる  Where the Weakest Stands First  作者: 斎賀久遠
**第1章:拾われた盾、託された未来 **
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第三話:【余興の裏で】

前日の朝から、俺たちは運ばされていた。


木箱、テントの骨組み、簡易調理台、支柱用の杭。

“貴族様たちの余興のための戦場”を作るための、荷物だった。


俺たち奴隷は、雇われた冒険者に指示され、

その通りに、文句も言わず、手と足を動かす。


「そっち、早く組め!明日にはお貴族様がご到着だぞ!」


怒鳴り声の正体は、Cランクくらいの傭兵だ。

俺より数段上等な“使われる側”の人間。

だが、“死ぬ順番”で言えば、大して変わらない。


日が暮れるまでに、数十のテントが並んだ。

料理を出すための火床。

武器の展示用のラック。

そして、「観覧用の柵」。


貴族が安全に“モンスター狩り”を楽しめるように、

距離と高さが計算された地形が用意されていく。


俺たちは、戦場にいた。

でも、戦う権利はなかった。


「今年の獲物は何だ?また牙持ちか?」


「レティシア様が、“囮役に奴隷を使って試したい”と仰っていたそうです」


「おっと、また始まったか。変わらんな、あのお嬢様」


「ま、面白くなりそうだ。死ぬのは奴隷だしな」


設営が終わった夜、

俺たちは、野営地の外れにまとめられた。


寝床と呼ばれる、地面に敷かれた古布。

食事と呼ばれる、湯に浮いた黒い塊。


「明日、おまえらの中から囮を選ぶ。体力残しとけよ」


体力、残す……?

それがどうやって可能だ?


朝から木材担いで、杭打って、川で食器洗って、

腰が砕けるまで働いて、それでもまだ足りないと怒鳴られて——


それでも俺は、寝た。

次の日も前に立たされるのが、いつものことだったから。

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