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#5 修練場と異常事態

 *



「すごい…」


 私は現在”修錬場”なる場所に来ているのだが……その壮大なスケールに圧倒されていた。


 眼前に広がる巨大な空間、高校の体育館の4倍以上の広さはあるだろうか。天井もかなり高く、まるで海沿いにある某イベント施設のような広さをしている。それがレモラ王宮の地下にあるということが驚きだ。


「丘をくり抜いて作ったって…発想が凄いね」


「そうっすよねー。まぁ、魔術の成せる技って事っす」


「なるほど…」


 そんな場所にどうやって来たかというと、なんと昇降機に乗ってやって来たのだ。勿論手動で動かすタイプだが、あると無いとでは明らかにに違う。奥に階段も見えることから、この世界の人達も階段の昇り降りは大変だったのだろう。


 文明が意外にも進んでいることに感心していると、分厚い本を何冊も持ったアメリアさんが昇降機から歩いてきた。


「サリア、準備の方を宜しくお願いします」


 重たそうな本達を軽々と持ちながら指示を出すと、


「うっすー」


 サリアさんは走り出し、轟音と共に消えた。


「うわぁ!?」


 衝撃のような強い風が体を打ち付けて倒れそうになるが、


「っしょっと……お待たせしたっすー」


 いつの間に現れたサリアさんに受け止められ、転ぶことは無かった。


「え……?」


 突然の出来事に言葉を失っていると、目の前に大きな机が置いてある事に気が付く。


「サリア…?椅子はどうしたのですか?」


「あっ、すぐ持ってくるっす」


 サリアさんが再び走り出し、私は衝撃に備えようと身構えるが何もなく、代わりにとんでもない速度で走るサリアさんが見えた。


「…速すぎないですか?」


 思った事を口にすると、


「え…?あぁ、サリアはイグニア王国最速の方なんですよ」


 アメリアさんは笑みを浮かべ、誇らしそうに説明してくれる。


 サリアさんは文字通り誰よりも走るのが速いらしい。才能ある兵士だそうで良く伝令や斥候を任されるそうなのだが、今回はアメリアさんと私の為に来てくれたらしい。


 大変ありがたいのだが……それにしても速すぎる。目測だが、新幹線に乗ってる時にすれ違った新幹線よりも速く感じる。もしあの速度で近くを通られたら私は吹っ飛んでしまいそうだ。


 説明を聞き終わる頃には椅子が4脚置いてあり、机の上には羽根ペンと羊皮紙が用意してある事に加えてピッチャーと3つのカップが置いてあった。


「す、すごい……」


 何て優秀な助手なのだろう。必要なものが1分足らずで用意されてしまった…。


 感心の眼差しをサリアさんに向けていると、笑みを浮かべて私を見てくれた。可愛い……。


「ありがとうございますサリア」


「いえいえー!」


 お礼を言ったアメリアさんは向かいの席に座って何やら本を広げる。そして「ふんふん」と何回か頷いた後に、納得したような表情で私を見る。


「早速講義を始めましょう。どうぞお座り下さい」


「は、はい」


 言われた通り椅子に座ると、横にサリアさんも座ってきた。するとアメリアさんが若干だが呆れた表情を向ける。


「サリア?暫くは用事が無いと思うので、ご自身の仕事をして頂いて構いませんよ?」


「折角なんで見学するっすよ」


「…仕事をサボるのは良くありませんよ?」


 アメリアさんに疑いの眼差しを向けられたサリアは、目を逸らして口笛を吹く。


「まぁ良いでしょう…」


 アメリアさんは諦めた様子で溜息をつくが、こういったやり取りは日常茶飯事なのか直ぐに真面目な表情に戻る。


「先ずは…心力の基礎知識に加え、魔術の基礎知識を学びましょう」


「は、はい!宜しくお願いします!」


 学校での退屈だった授業とは違い、今から魔術知識が学べるということでワクワクしながら授業に望むのだった。



 *



 1回の小休止を挟んでざっと3時間強、魔術基礎知識講座は終わりを迎えた。前の世界では考えられなかった知識だが、意外にもすんなり頭に入ってきた事に驚く。それもこれもアメリアさんが聞き易く話してくれたお陰だ。


 現在は1時間程の大休憩に入りアメリアさんも席を外したが、私はというと講義の復習を行なっていた。


「うん……!」


 うむ、分かり易い。これなら暇な時でも復習できるだろう。私は”日本語”で書かれた羊皮紙を手に取り、自分で作成したメモを眺めて嬉しい気持ちになる。


 でも本が読めなかったのは残念だった。みんな私の知る言葉で話すもんだからてっきり文字も一緒だと思ったのだが……イグニア王国では、公用語である”ロマリア語”というものを使っているらしく、私は全く読むことできなかった。


 魔術の知識を深めながら言葉も学ばなければいけない事実に憂鬱になりながらも、私は仕方ないと息を吐く。


 切り替えて引き続き復習を行っていると、


「お、勉強っすか、偉いっすね」


 休憩から帰ってきたサリアさんが声を掛けてきた。


「お茶どうぞっす」


 サリアさんはいつの間にかお茶を淹れてくれたようで、コトっとカップを置いてくれた。サリアさんは自分の分も淹れていたようで、飲みながら「どうぞ」と手で合図してくれる。


「あ、ありがとうサリアさん」


 折角用意してくれたのでいただく事にしよう。カップに口をつけてお茶を飲み始めると、サリアさんは疑問の色を浮かべて私を見る。


「因みになんすけど…アカリデス様っておいくつっすか?」


「私…?18の年だよ」


 教えた直後、


「うぉ!同い年じゃないっすか!」


 サリアさんはびっくりした様子になり、嬉しそうに顔を寄せてくる。


「え、そうなの?」


「私もこの間に18歳になったばかりなんすよ!」


 すると椅子を寄せてきて、背もたれが体の前に来るように座る。


「奇遇っすねー!誕生月はいつっすか?」


「えっと……6月かな」


 イグニア王国に前の世界のような年月の概念があるか分からないけど、とりあえず本当の事を答える。


「えぇ!?私も6月なんすよ!奇遇っすね!」


「そ、そうなんだ!」


「いやー、これは運命っすね」


 サリアさんは何故か目を瞑って頷き始める。


「う、運命?」


「友達になる運命っす!」


 そして表情をパッと明るくさせ、ぐいっと顔を寄せてきた。


「と、友達……」


「はぁい!」


 距離感の近さに驚きつつも、友達と言われて今までの学生生活を思い出してみる。


 友達か……。派手目な娘達とは連んでいたけど、他人への悪口でしか盛り上がっていなかった。それを考えると、胸を張って友達と言える人はいないような気がする。


 ふとサリアさんと目を合わせると、彼女はニコッと笑ってくれた。


 とっても良い人そうだ。明るいし、今日お会いしたばっかだけど、嫌味も一才言われない。


「ま、まだ今日会ったばっかだけど、友達でも良いのかな?」


「え?良いと思いますけど?」


「そ、そっか、じゃあサリアさんとは友達だね!」


「えぇ!友達っす!」


 その後、サリアさんとは互いの学生時代についての話をした。そこで分かったことなのだが、イグニア王国の人は10歳で学校に入学し、17歳になると卒業になるらしい。まさかの7年生に驚きながらも、私がいた世界の学校について話すと「小さい頃から学校に行くなって大変すねー」とサリアさんは感心した様子だった。


 その後もアメリアさんの髪が綺麗な話とか、お互いの髪質が似てると言った話で談笑していていると、サリアさんがある提案をしてきた。


「あの…私のことは”サリア”って呼んでくださいっす」


「え…?」


「同い年なんすから、親しみを込めて呼んだ方が仲良くなれるっす!」


「そっか…そうだよね」


 この世界で初めてできた友達だ。前の世界では友達と呼べる人は殆どいなかったから、この繋がりを大事にしよう。


「宜しくねサリア?」


「宜しくっすアカリデスさん!」


 私の呼び方は”アカリデスさん”となった。様付けで呼ばれると変な気分になってたからありがたい。


 アメリアさんが戻って来るまでの間、私はサリアとの会話を楽しむのだった。



 *



「それでは、実際に魔術の発動を行なってみましょう」


 講義が再開し、待ちに待った時間がやってきた。


 魔術か……私は水が出してみたい。喉が乾いたら飲めそうだし、いつでもどこでも手が洗えそうだ。


「先程申しました通り、魔術の発動には”心力場”にて”術式”を描く必要があります」


 アメリアさんの説明を聞き、座学で習った事を思い出す。


 確か…”心力場”って言う、目に見えない感覚のような器官に意識を向け、”魔術言語”っていう特別な文字の羅列を組み合わせてから"術式"ってのを描けば魔術が"発動"できるんだよね?術式は数学の公式のようなもので、発動はその”答え”ってアメリアさんが教えてくれた。


「先ずは心力場に意識を向けてみましょう」


「分かりました」


 心力場に意識を向けると言うことは、心力の循環を知覚することだと講義で言っていた。つまるところ、”結びの儀式”で感じた不思議な感覚こそが心力らしい。


 だったら話は簡単だ。一度経験した感覚を再び呼び覚ますだけ。


 体の内側に意識を向けると、すぐに心力場を知覚することができた。前と一緒で、体の中を不思議なエネルギーが循環しているような感覚を覚える。


「できました」


「では次に、循環する心力で魔術言語を描いてみましょう。今回描いていただくのは…」


 アメリアさんが本を開いて見せてくれる。


「25文字ある魔術言語の1文字目です。先ずはこれを描いてみましょう」


「分かりました…」


 私は再び心力場に意識を向ける。そしてアメリアさんに見せてもらった魔術言語を描こうとした瞬間、あの感覚が襲ってきた。


「うっ……」


 不安、恐怖、怒り。ありとあらゆるネガティブな感情が一つになって襲ってくる。


「…アカリデス様?」


 結びの儀式の時も感じた不快感が身体中を巡っていき、次第に痛みへと変わっていく。


「うっ、うぅ、うガァ……!!?」


 痛い痛い苦しい。体が裂けそう。


「アカリデス様っ!!」


 頭が縦に割れそうな痛みを感じる中、必死な声が聞こえてくる。


「アカリデス様…!受け入れるのです!!」


 この声はっ、アメリアさん……?


 儀式の時のように痛みを受け入れると、荒ぶっていた”心力”は穏やかな循環に戻るのだった。



 *



「心力場を知覚できないならまだしも、心力自体が宿主を襲うなんて…」


 自分の身に起きたことを話すと、アメリアさんは眉間に皺を寄せながら険しい表情を浮かべる。


「………」


 時折ボソッと何かを言ったと思ったら、直ぐに口を閉じて机を睨んでいる。そんなアメリアさんを見て、私は少し惨めな気持ちになってしまう。


 どうしよう…私の事で真剣に考えてくれているのに、当の私は何もしていない。アメリアさんの言葉を待っているだけだ。


 ……駄目だ。私も何かしないと。


 そう思いアメリアさんから貸してもらった魔術言語の本を広げ、例題のような術式を覚えようとすると、誰かに右肩を叩かれる。


「え…?」


 右を見ると、少し怒ったような表情を浮かべるサリアが私を見ていた。


「アメリアさんが真剣に考えてくれてるんすよ?一人で勝手にやっちゃ駄目っす」


「ご、ごめんなさい…」


 サリアに注意されたので本を閉じる。そしてアメリアさんが話し出すまでの5分間、私は何もやらずにただ待つのだった。


「……もう一度試してみましょう」


 惨めさを一段と感じる中、アメリアさんが声を掛けてくる。


「え…?」


「先程と同じで構いませんので、もう一度お願いします」


 ……またあの激痛を味合わないといけないのか。ちょっと嫌だな……でも救世主を引き受けた以上、魔術の発動は必須事項だ。嫌とは言えない。


 私は憂鬱な気分になりながらも、魔術言語を描こうとするが結果は変わらず、再び激痛に襲われるだけだった。


「はぁ…はぁ…」


 流石に2回は辛い……。そう思いながら肩で息をしていると、


「どうぞっす…」


 気を遣ってくれたのかサリアがお茶を出してくれる。


「あ、ありがとう……」


「…いえ」


 お茶を飲むと、明らかに元気が無くなっているサリアが目に入る。早々につまづく私を見てガッカリしてるのか、それとも心配してくれているのか。どちらにせよ、私は不必要な心配を二人に掛けてしまっている。救世主の称号を持っているのに、なんで私はできないんだろう……。


 自分を惨めに思っていると、アメリアさんはお手上げと言った様子で首を横に振る。


「やはり分かりませんね…」


「アメリアさん…?」


「こんな事を言えば快く思わない方もいますが、”心力”というのは力に過ぎません。空気のように意志を持たず、水のように漂っているだけの存在ですから、心力が一人でに動くことなんてあり得ません。宿主がいて初めて動きがあるものです」


「だったら私は自分の意志で自分を攻撃していることになります。でもそんな意思はありません…。向こうから勝手にやってくるんです」


 するとアメリアさんは「うーん」と難しそうに唸った後に、諦めたような表情で私を見る。


「アカリデス様のお力は未知の事も多いですから、そういった事もある……と納得するしかありませんね」


「そう…ですか」


「ですがこのままだと先に進みませんから、できるまで何度も挑戦するしかありませんね」


「………」


 正直もうやりたくない。疲れるし、痛いんだもん。だからと言ってやらないわけにはいかないけど…このままやっても意味はない気がする。


「……アメリアさんは」


「なんでしょう?」


「アメリアさんは最初から術式を描けていたんですか?」


 心力場で術式を描くヒントになるんじゃないかと質問すると、アメリアさんは思い出すように斜め上を見る。


「私の場合はアカリデス様と違って、心力場を知覚するのに何日も掛かって苦労した記憶がありますが……術式は直ぐに描けるようになりましたね」


「はぁ」


「強いて言うなら落ち着きが大切ですかね」


「落ち着きですか……サリアは?」


 隣にいるサリアに同じ質問をすると言いたくなさそうな表情を浮かべるが、少し間を置いた後に話してくれた。


「うーん……私の場合はどっちも苦労したんすよ。特に術式は1ヶ月以上も描けませんでした」


 サリアも最初は苦労したんだ…そう聞くと少し安心する。


「でも”ある方法”を試したら、すんなり出来るようになったんすよ」


「ある方法?」


「それはっすね…」


 サリアが何か言おうとした瞬間、修練場が小さく揺れた。


「ん……?地震っすか?」


 揺れは徐々に大きくなり、修練場の壁から軋むような音が聞こえる。


「な、なに……?」


 まるで何かが迫ってくるような揺れに不安な気持ちが抑えられなくなり、横にいたサリアの腕を思わず掴むと、


「アカリデスさん……」


 優しく手を添えてくれた。


「…何か異常が起きたようです」


 アメリアさんは机の向こうで不審そうに辺りを見回すが、その間にも揺れが徐々に大きくなる。


「サリア、上の様子を見てきてくれますか?」


「え…あっ、了解っす!」


 アメリアさんの指示を聞いたサリアは私から手を離し、そのまま階段口の方へと走って行ってしまった。


「あ…」


 サリアのお陰で和らいでいた不安な気持ちが大きくなり、私は手持ち無沙汰になってしまって体を縮めた直後、大きな地響きが起きた。


「きゃあっ!?」


 怪獣の足音のような地響きで修練場が大きく揺れ、私は椅子から転げ落ちてしまう。


「アカリデス様っ!」


 するとアメリアさんが駆け寄って来てくれ、手を差し伸べてくれる。


「お怪我はありませんか…?」


「は、はい、大丈夫です……」


 アメリアさんの腕を掴んで立ち上がろうとした時、2回目の大きな揺れが起きる。


「きゃっ!」


 その拍子に体勢を崩してしまい、アメリアさんの胸元に飛び込んでしまう。


「あっ、ご、ごめんなさい!」


「いえ……危ないですから掴まってて」


「え…?あ、はい…!」


 私は地面にへたり込みながら体重をかけると、アメリアさんは両腕でぎゅっと抱きしめてくれた。


「あ……」


 温かい……。結びの儀式で感じた温もりが体に伝わってきて安心感を覚えた直後、3回目の大きな揺れが起きる。


「うぅ……」


 経験した事のない揺れに絶え間ない恐怖が湧いてきて、私は思わずアメリアさんの胸元に顔を埋める。


「アカリデス様……」


 するとアメリアさんが私の頭に手を添えてくれ、安心させるように撫でてくれた。


「大丈夫…何があろうと私がアカリデス様をお守りします」


「アメリアさん……」


 その言葉で再び安心感を覚えていると、


「大変っすよ!!」


 サリアの慌てた声が聞こえてきた。


「緊急事態っす!!首が何本もあるどでかい蛇みたいな化物がレモラ王宮に向かってるっす!!」


「な、なんですって!?」


 アメリアさんが狼狽した声を上げる。


「街の南の方からすごい速度で近づいてきてるっす!あと数分もすればここに到着するっす!!」


「宮中の状況は!?」


「混乱の真っ只中っす!皆さん慌てまくってますよ!」


「状況は分かりました……サリア!」


「何すか!?」


「サリアは私を抱えて上まで連れていってください!昇降機は使えなくなる可能性もあるので階段でお願いします!」


 アメリアさんは私の頭を撫でる手を止め、力強い声でサリアに指示を伝える。


「私を下ろし次第、宮中の方々を抱えて修練場まで避難させてください!ここは滅多に壊れませんから、一時的な避難場所になる筈です!」


「承知っす!」


 アメリアさんは私から手を離し、遂には立ち上がってしまう。


「あっ……!」


 恐怖で思わず手を伸ばしそうになるが、切羽詰まった様子のアメリアさんを見て手を止める。


「あ、あの、私は何をすれば!」


「アカリデス様はこのまま避難をしてください!」


「え…」


「どうかご無事で!」


 アメリアさんはサリアに抱えられ、そのまま姿が見えなくなってしまった。


「あっ……」


 この場に一人取り残され唖然としていると、地響きと共に大きな揺れが起きた。


「うわぁ!」


 へたり込んでいた私は地面に手をつき、倒れないようにバランスを取る。


「う、うぅ……」


 しかしあまりの恐怖に加え、私は惨めさで涙を流してしまう。


 何やってんだろ私……こんな場所で一人泣いて。魔術もできないから助けにも行けないで。仕方ない筈なのに、渦巻いている不安な気持ちが惨めさを加速させる。


 ……私は本当に救世主なの?朝起きてメイドさんにお世話してもらって、出てきた食事を食べるだけ食べて。穀潰しじゃないか。


「………違う」


 私は救世主だ。称号をもらって高待遇を受ける責任がある。私は皆んなを救う為に召喚された。だったら力が無くたって役に立たないといけない。それが使命であり、私の役目だから。


「……うん」


 こんな気持ち、前の世界で感じた事が無かった。いつも周りに流されている癖に、認められないことがあれば我儘になってしまう。私はそんな奴だった。


「でも……」


 私はこの世界にきて"良い人"に変わろうと思った。だったら……。


 私は涙を手で拭い、バランスを取りながら何とか立ち上がる。そして恐怖と不安を感じながらも、昇降機に向かって走り出すのだった。



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