◆始まりは一匹のうさぎ
「んーっ、今日もいい天気」
森の中を鼻歌を歌いながら歩いているのは、月を思わせる淡い黄金色の長い髪が印象的な少女。
名前を、ルナという。
「絶好のお花見日和だね。でも・・・・・・」
今は桜の咲く季節。
そこでルナはお花見でもしようと森の中に来たのだが…
「お花、一つもないじゃない。もしかして私、道間違えた? おかしいなぁ…違う森だったかなぁ…」
いや、道以前に来るべき場所を間違っている。
お花見したいのであれば森じゃなくて近所の公園にでも行くべきだろう。
「ま、いっか。もう今日は帰ろうっと」
くるっと後ろを振り返って着た道を戻ろうとしたルナは何かを見た。
白くて長い耳がピクピクと動いていてまぁるい胴体、まぁるい目。
これは…
「うさぎ…? わぁ可愛い。うさちゃん、こっちおいでー?」
可愛い生き物に目がないルナはその場にしゃがんで両腕を広げた。
が。
うさぎはぴょんぴょんっと飛んで1メートル程ルナから離れた。
「あ、待って!」
ルナが一歩近づいた。
うさぎは少し後ろに下がる。
ルナがもう一歩近づいた。
うさぎも――――。
「あ」
一瞬の出来事だった。
うさぎはぴょんぴょんぴょんっと飛び跳ねてどこかにいってしまった。
「・・・・・・・・・・・」
しょうがないか。もう帰ろう。
そう思ってルナは来た道を戻ろうとした。
「わっ!?」
突然、何者かが足に纏わりつく。
ふわふわしてて小さい生き物。
「うさ…ちゃん?」
ぴょんっとルナから離れ、彼女を見上げた後、また離れてルナを見上げ首を傾げる仕草をするうさぎ。
「もしかして私について来いって言ってるの」
そうだ、と肯定するようにうさぎは耳を立てた。