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2015年 冬 電話

2015年 冬 電話


携帯電話を持つ手に力が入る。やってはいけないことをしているのは十分分かっている。それでも我慢ができなかった。


昼間は旦那の家業の手伝い、夕方には家に帰り夕飯の支度と義母の面倒。それの繰り返し。妹と食事をしても、夕方には絶対帰る、それが絶対だった。義母は歳をとるにつれて当たりがきつくなっていた。旦那も少し苛立ち気味ではあるが、さすがに母親なのでそこまで強くは言えないようだった。


義母のことは元々嫌いなわけではない。ただ義父が亡くなった後同居を決断したはいいが、やはり一緒に住むとなるとどんな人でも嫌な部分が見えてきてしまうものだ。子供達が大学に通うようになり、1人暮らしをそれぞれすると言って出て行ってからは状況が余計ひどくなったように思える。


気づかないうちに溜まっていたストレス。それは周りから見ても一目瞭然だったらしい。ついこの間由美に会った時、1枚の紙切れを渡された。


「こんなことするのは違っているのはわかってる、でも今のみちをほっとくわけにはいかない。これでみちの気持ちが軽くなるなら、私は悪者になったっていい」


そう言われて渡された紙切れ。直樹の携帯番号が殴り書きで書かれた紙切れ。一度は捨ててしまおうと思った紙切れ。気づけばその紙切れを取り出し、番号に電話をかけていた。


「もしもし?」


聞き慣れた声。声を聞いて超えてはいけない境界線を片足超えてしまったことに気づく。頭の中では早く電話を切らなくてはと分かっていながらも行動には写せない。


「ごめん、直樹」


ごめんという言葉が出たのは、直樹に家庭があることを知りながら電話したからでも、旦那や子供たちのことを思ったからでもない。自分の弱さ、今になっても直樹にしがみついてしまおうとしていることに対してだった。我ながら自己中心的だとも思う。


「んー、みちか。お前何してんだ? 俺に連絡しちゃいけないだろ」


少し強い口調にハッとさせられた。


会話時間1分未満。ほぼ20年ぶりの会話は短いが、現実を受け止め、頭を整理するのには適度な長さだった。


そしてまた何もなかったかのように普段の生活に戻る。


今の時代はソーシャルメディアなどで誰がどんなことをしているのかが一瞬でわかってしまう時代。

個人的な意見ですが、昔の恋人についてなどは、風の噂で聞くくらいが美しい記憶を美しいままにできるのではないかと思います。


ちなみに由美が直樹の携帯番号を知っていたのは、由美の旦那さんがお医者さんで直樹と仕事場で関わったことがあるからだとか。由美は長年直樹の電話番号を知ってはいましたが、みちには伝えてませんでした。

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