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ディラックの海の彼方で



 世界には2つの世界が存在する。



 『A』


 と


 『B』



 この2つは、互いに相対関係にあると言われている。


 どちらが本物で、どちらが偽物ということはない。



 例えば、Aの世界ではマヨネーズという「存在」がなくても、


 Bの世界ではマヨネーズが存在している。



 そんな具合に、


 私たちが普段当たり前のように生活している世界とは別に、


 同じようで、それでいてどこか微妙に違うもう1つの世界が、存在していた。


 世界は、元々2つに分かれていたのだ。


 物質と、反物質の境界に於いて。



 如月アスカは、


 幼馴染の四宮大輔と一緒に、ある日、学校の帰り道を歩いていた。


 談笑する2人の影の横で、道路に飛び出した1匹の猫がいた。


 アスカは猫を助けようと足を動かし、寸前のところで猫を捕まえ、


 無事、命を助けることに成功したのだが、


 代わりに自分の足が、自動車の車輪に巻き込まれてしまう。



 その事故をきっかけに、彼女は両足を切断するという大怪我を負ってしまった。



 助けられた猫はずいぶんと衰弱していて、肋骨が浮き上がるほど痩せ細っていた。


 見たところ怪我はなさそうだったが、からだ中が汚れ、街中を彷徨い歩いてるような猫だった。


 歩くのもやっとな様子に見かねた大輔は、一時的に家に連れて帰ることにした。



 しかし、親の反対で猫を飼うことはできず、やむを得ず、保健所に預けに行くことを決意する。


 その頃アスカは無事に手術が終了し、長い入院生活が始まったばかりだった。


 大輔から、その後の猫の安否についてを聞かされたアスカは、それなら私が引き取るという話を、大輔に持ちかけた。


 アスカの両親もそれに賛成した。


 保健所に預けても、無事に生き延びられるかどうかわからないし、顔にアザのような模様があって、ブサイクな猫だったためだ。


 どうせ、誰も引き取らないだろう。


 せっかく助けた命が無駄になるくらいなら、


 我が家に引き入れよう


 という話になったのだった。



 猫の名前は、ミーと名付けられた。


 なぜその名前になったのかというと、首輪にそう書かれてあったからだ。


 元々は飼い猫だったのだろう。


 人間を見ても怖がらないし、年齢的にも10歳は迎えているような、老猫だった。


 どういう経緯なのか、飼い主とは離れ離れになった可能性が高かった。


 捨てられたのか、


 迷子になったのか。


 アスカとその家族たちは憶測を交えながらも、猫の新しい飼い主になる。


 


 その「猫」が、


 「B」の世界からやって来た存在だということを知らずに。

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