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三者三様の戦い方のようです その2

 それを後ろから眺めながら、スタルカは純粋に驚いていた。


(あの人……本当に強かったんだ……)


 ()()()()()()()()()()()()()()()はもう既に散々見てきた後だ、今更驚く程ではない。

 いや、それでも流石にゴブリン相手に鬼神の如く大暴れしている今の姿も改めて驚かされるものではあるが。


 だが、クロウシの強さについては今この瞬間までスタルカはずっと懐疑的であった。どうにも胡散臭い人間だと決めつけていた。

 〝大好きなお姉ちゃん〟であるカティはクロウシの強さを見抜き、認めているようだった。だけど、自分にはどうしてもそれがわからなかった。

 だから、口だけ達者でみんなを欺いている奴だとばかり思っていた。それもあながち間違いではないのだが。


 とはいえ、今実際この目で目撃したからには、素直に認めるしかない。

 クロウシは強い。お姉ちゃん程ではないが、それでも恐らく()()()()()()()()()()()()()()()()

 カティが討ち漏らしたゴブリンも決して少なくない。なのに、迫り来るそれを一匹もこちらに通すことなく迎撃し続けてくれている。


 しかし、それが崩れるのも恐らく時間の問題だろう。

 カティは確かに凄まじい勢いでゴブリンの大軍の中に食い込み、着実に相当な数を減らしている。クロウシもまあまあの数の屍を積み上げている。


 それでもやはり、あまりにもゴブリンの数は多すぎるようだった。

 このままだと程なく三人は包囲され、ゴブリンの大軍に飲み込まれてしまうだろう。そして、じわじわと擦り潰されることになる。

 スタルカですらそう予感出来た。誰かが一気に、広範囲への攻撃で数を減らしでもしない限り。


「…………」


 スタルカはそう考え、目をつぶった。

 カティに買ってもらったカエルさんワンドをぎゅっと両手で握り、意識を内面へ集中させる。


 実のところ、今のスタルカにあまり恐怖はなかった。

 確かに戦いに入る前は緊張していた。しかし、圧倒的な数のゴブリンを前にしてちょっと怯んでしまっただけだ。


 実際、()()()()()()()にとっては数が多いだけの魔物など恐るるに足りない相手と言えた。

 相性自体は恐ろしくいいのだ、()()()()()()()()()()という意味で。

 だから、少なくとも自分だけはこんなゴブリン相手に負けることはない。なので、怖がることもなく落ち着いていられる。


 そんなスタルカにとって今回唯一気がかりだったのは、()()()()()()()だった。

 自分だけが生き残ってもあまり意味はない。

 これはパーティーとしての戦いだし、自分はこの先そういう戦い方が出来るようにならなければならない。仲間と連携して戦うということを。


 ……出来るだろうか。その不安が実はかなり大きかった。


 自分の能力はお姉ちゃんを――お姉ちゃんがこれから集める仲間を、本当に助けることが出来るのだろうか。一緒に戦うことが出来るのだろうか。こんな忌々しく、歪な力で。

 それを思うと、スタルカは竦みそうになる。

 仲間を傷つけるかもしれない。足を引っ張るだけかもしれないという怯えと不安で。


 だけど――。

 今この光景を目にして、スタルカは思い直す。


 本当に、信じてみてもいいのかもしれない。お姉ちゃんの言葉を。

 お姉ちゃんが認めて仲間に引き入れた、クロウシの強さを。

 自分のことをこのパーティーの〝切り札〟だと言ってくれた、お姉ちゃんの期待を。

 そして何より、()()()()()()()()()()()()()を。


 今のままではジリ貧。このまま三人の内の一人が何もせず、ただ守られているだけならば。

 切り札が、切り札たる働きをしなければ。この状況をひっくり返すことは出来ない。


 だから。スタルカは意識を集中させて、タイミングを計る。


 お姉ちゃんは〝自由に思いっきりやれ〟と言ってくれたが、やはりただ無作為に放てばいいというわけではないだろう。

 一番効果的なのは、自分達がゴブリンに包囲されかかってから。それを押し返すのが、この戦いにおける自分の役割だ。


 そう考え、スタルカはその瞬間を見極めようとする。

 ついでに、能力の調整も同時に行っておく。範囲、最大――。威力、中程度――。


 そうして待っている内に、その瞬間は訪れた。

 カティがより敵陣深くへ食い込むにつれ、討ち漏らしが増える。

 増えたゴブリン達は数に任せてクロウシの側面を回り込もうとし始める。

 段々とクロウシの対処が追いつかなくなりだした、今この時――。


「――魔術を!! 撃つから!! 避けてッ!!」


 その呼びかけにどれほどの効果があるのかはわからない。

 が、とにかくぶっ放す直前にスタルカは大声でそう叫んでおいた。

 一応警告はした。自分の心にそう言い訳をしておくために。


 その声はどうにか届いたらしい。

 クロウシは未だ戦闘中で余裕のない様子ながらも、疑問を浮かべた顔でこちらを見てきた。

 それを確認してから、スタルカは能力を解放する。


「――轟雷の、雨!!」


 耳をつんざく轟音と共に、雷が雨のように降り注ぐ。スタルカを中心とした、戦場の広範囲へと。

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