第5話、お父様と異母兄様
「お父様…何故ここに?」
「娘が怪我をしたのだから当然だろう」
「えっ…」
この父親がこんなこと言うなんて…頭でも打ったのだろうか。
自分で言うのもなんだが私は愛されていない。
お父様とお義母様にお異母兄様、あと多分アクティを除く使用人たちにも。
私は母親の顔を見た事がない。
多分亡くなってはいないと思うのだが、連絡も取れないので定かではない。
名前も、見た目も、優しいのか怖いのか、母親のことなのに私は何も知らない。
母は不幸な人間だ。
詳しくは私も知らないが、元はここで働いていたらしい。
そしてある日あの父親に襲われ、私を身篭り、産んで捨てられた。
私はそんなに生い立ちのせいか、大体の人に嫌われている。
なぜアクティは私に優しいのか…そう考えてしまうほどに私には人が寄り付かない。
いや本当に何故なんだろうか。
「おい、レイ!聞いているのか!」
「えっあっ…申し訳ございません、もう一度お聞きしてもよろしいでしょうか!」
何故父親にこんな敬語で話さなければならないのか…いや、貴族だからだけど。
元普通の日本人の私からしたらかなり変だ。
「チッ…お前は3日前に14歳を迎えたな」
「…はい」
「一応シルバート家の一員ではあるのだ、聖騎士になってもらわねば困るのに…なのにお前は怪我をしてドクターストップがかかっている」
「そーですね」
「チッ…」
この人舌打ちしすぎじゃないだろうか?チッチチッチ時計かな?
「チッ…お前今変なこと考えてなかっただろうな?」
「かか考えるわけないじゃないですか」
「チッまぁ今はいい…取り敢えず要約すると」
「はい」
「お前は今動けないから実戦的な修行はせず、座学をやってもらう」
「…つまりお勉強ですか」
「そうだ」
うっわぁ…滅茶苦茶面倒だ…しかも家庭教師みたいなの雇うんじゃない?
人と出来る限り関わりたくないんだけど…記憶取り戻したのとかバレるかもだし。
「じゃあこれで…あぁ、因みに先生はサルトだぞ」
「…え」
「じゃあさっさと治して修行するんだな」
そう言って父は退出した。
サルト…サルトアルは私の異母兄だ。
前まとめている時に聖騎士の一例に挙げた人。
正直私は滅茶苦茶サルトが苦手だ…あいつはナルシストなのだ、結構重症の。
しかもその方向性が自分をあげるのは勿論だが、周りを下げるのだ、特に私を。
○○に比べて僕は…みたいな感じ。
ただ父は実力重視だからか、サルトのそういう態度にも何も言わない。
何も言わないというか、父は家主である自分が1番だと思っているから、サルトのあの態度も子鳥のさえずりの様な物で気にしないのかもしれない。
そんなことを考えていると、ノック音が響いた。
今までの話的にもしかしてやつが来たのだろうか。
「…どうぞ」
そう私が言うと、即座に扉が開いた。
「やぁレイ!この美しき聖騎士の僕が君みたいな愚人に教えるとは信じられないが…父上の命令上仕方の無い事だ…僕の教えを感謝して聞くんだな!」
いくら血は繋がってないとはいえ異母妹を愚人扱いしたぞこの人…だから苦手なんだよなぁ…
「そんな顔をするなんて…この僕に失礼じゃないかい?」
「あーはい申し訳ございません」
「まぁ僕の寛大な心で許してあげよう…さて、今日からレイの勉強が始まるねぇ…ちゃんと優秀な僕に着いてくるんだぞ?あっはっはぁ!」
一言一言が長い…ただこんなんだけど優秀な方ではあるからなんか…なんかなぁ…
「お異母兄様に教えて頂けるなんて光栄ですわー」
「はっはっは!そうだろう!さぁ早速始めよう!」
こういう相手は持ち上げれば取り敢えずは良いんだ…元社畜舐めんじゃねぇぞ…
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冬休みに突入したので更新早くしたい…できる気がしないけど