第15話、バイト先
「こっ…ここかぁ」
私はギルドで紹介されたお店『ランドルーシェ』の前に来ていた。
お店は…なんというか、ピンクだ。変な意味とかではなく。
全体的にピンクじみていて、パステルな感じの色で統一されている。
窓から見える店内は、やっぱりパステルで、白黒なメイド服が少し浮いている。
「私、ここで働くかもなの…?」
嫌だ…いや別にメイド喫茶で働いている人がどうこうではなく、着るのが嫌だ。
でも私身長…ホールって言われてるから、絶対あの服を…アクティのよりかなりフリフリミニスカ露出高い…
「おーい」
そんな事を考えていると、急に扉が開き声をかけられた。
「へ?あっはい!」
「自分なんなん?ずっと店前でぼーっとしとるけど…」
まさかの関西弁…そっか、ゲームでは未実装だったけど、日本っぽい国もあったな…確か、大和だっけ。
「えっと…私、レイって言います…」
「レイ…あぁ!従業員希望の子やな?入ってや…あっでも、店内動物禁止やねん」
「あっすいません…ココミル、暫く別行動できる?」
「んみゃー」
ミルクがひと鳴きして腕から降りると、ココアも降りてどこかへ走り去って言った
「ほー…賢い子やね、まぁ入りや、バック行くで」
「あっはい!」
関西弁のお姉さんに連れられ、バックヤードへと入る、やっぱりパステルだ。
「まずは自己紹介やね、うちの名前は香山優奈。名前から分かると思うんやけど、大和出身やで、よろしゅうな、レイ」
「あっよろしくお願いします、香山さん」
「ほー…うちの名前の発音間違えへんなんて、ここら辺の奴にしては珍しいなぁ…あっ優奈でええで」
「じゃあ優奈さんで…珍しいですかね」
間違えないのは当たり前だし、前世の私には関西出身の友達がいた、だからそれなりに慣れている。
「おもろい新人が入ったもんやな」
「新人というか…まだ面接段階ですけど」
「ん?あぁ採用や採用」
「えっ」
まだ面接してないんだけど?
「なはは、なんでって顔しとるなぁ、やっぱ自分おもろいわぁ」
「ええ…」
「すまんて、いやなぁ?今従業員不足やねん、よっぽど変なやつで無ければ、余裕で採用やで、自分可愛ええ顔しとるしな」
「はぁ…そうですか」
「じゃあ…せやな、3日後とかどうや」
「出勤日ですか?」
「せやせや、予定空いとるか?」
「まぁ来たばかりですし…なんも入ってないですよ」
あっでも宿探しはしないと…
「ほな3日後の16日やな、他に何か質問ある?」
「あっ質問はないです…あの、ここら辺に宿ってありますか?」
「宿かぁ…安いところやと少し遠いな…持ち金はどんくらいなん?」
「えっと…約50000ラムですね」
ラムとはこの世界の通貨で、円と同じ考え方だ。
「ほなうちで働く事も含めると…『宿屋 ムルーシュ』やな、ここの近くにあるで。」
「ありがとうございます!」
「ええよこんぐらい。大事な従業員やからな」
「…優奈さんってもしかしてですけど、店長だったり…」
「ん?せやで、言うてなかったか?」
「はい…優奈店長」
「ほー…ええなその呼び方、優奈店長…ええなぁ…」
優奈店長のツボに刺さったのか、いい笑顔でええな…と繰り返している。
「優奈店長…」
「なんや?!なんでも言うてや!」
こっ興奮状態だ…そんなにこの呼び方が気に入ったのだろうか。
「いえ…これからよろしくお願いします」
「うちこそ!よろしゅうな、レイ…いやレイちゃん!」
「れっ…レイちゃん…ですか?」
「だめやったか…?」
「いえ!そう呼ばれたことが殆どなくって!」
今世は勿論、前世ではお姉ちゃんくらいしかそう呼んでいなかった…お姉ちゃん今頃何してるんだろ、悲しんでないといい…
いやあの人は絶対悲しんでるな。なんだったら発狂してそう。
「レイちゃん?どうしたんや?」
「いえ…なんでもないです、少し故郷の人を思い出してて…」
「ならええねんけど…」
「あはは…取り敢えず私は宿に行ってみます。3日後の…何時ですか?」
「せやなぁ…色々と教えたいし、6時30分くらいやろか」
「朝ですね…分かりました、じゃあ私はこれで」
「またなーレイちゃん」
「はい、優奈店長!」
バックヤードを裏口から抜け、大通りに出る。
あっそういえば宿の場所聞くの忘れてた…取り敢えずギルドに戻ろうかな…聞けるし。
来た道を戻り、ギルドに向かう。
そういえば、優奈店長って苗字…香山だっけ?日本…じゃなくて大和って平民にも苗字あるんだなぁ…いや貴族時代に習った気もするな…全然覚えてないけど。
まぁ昔のことはいいんだよ、うん。取り敢えずギルドに向かおう…なんか忘れてる気がするんだけど、まぁいっか。
お読み頂きありがとうございました。
感想等ありましたら励みになるので是非。
うち自身標準語だし、関西の友人もいないので、関西弁どこかおかしいかも…ご了承ください