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1・始まりの日
私の幸せは、大切なものは簡単に壊れてしまった。
私が生まれたのは、小さな地図にも載っていないような辺鄙な村だった。
森に囲まれた旅人もあまり来ないような所で
村の大人達は殆どが老人ばかりで、子供は片手で足りる程しかいない静かな村。
それでも、私には大切な故郷で大好きな両親が住む大切な場所だった。
「お母さん、終わったよ」
殻を剥き終わった、イアの実の入った籠を抱き抱えてお母さんに見せる。
イアの実の殻は凄く固いが、お湯で茹でると子供でも簡単に剥けるように柔らかくなる。
籠いっぱいに入ったイアの実を見せるとお母さんはエプロンで手を吹いてから頭を撫でてくれた。
「お疲れ様、ありがとうね。レイ」
お母さんが私の名前、レイクレシアの愛称で私を呼ぶ。
田舎の村人につけるような名前ではないような気がするが、この名前は大昔に神々に使えた7人の英雄達の一人の名前なのだ。
眠りと死、夜を守る黒の神に使えた黒の魔導師“アーテル”、レイクレシア・アーテル。
お母さんは私に、レイクレシアの様な立派な人間になってほしいと思ってつけたのだと言っていた。