エルルの初デビュー
エルル15歳、ティナの二歳年下のかわいい妹と思われていた男の子。
あの日、ティナが謎の騎士団にさらわれてから・・・・
エルルはタムラ村の出入り口で ティナの帰りをずっと待ち続けていた。
朝早くから日が暮れるまで・・・待ち続けた。
いつか・・・きっとティナは帰ってくるに違いない!!
忠犬ハチ公と化すエルルであった。
「どうして僕は・・・あの時! 馬車に駆け走り・・・無理やりにでもティナを救わなかったのか!?
たとえ相手が騎士であっても・・・・
あっあ~ 僕の簡単魔法では あの騎士には勝てない
・・・・というか 僕は攻撃魔法は使えない!!
教えてもらってないし… 攻撃用の魔術本もない!!」
そうだ!! 別に魔法は本を読んで勉強するだけじゃないんだ。
色々ためしてみよう!! きっとなんとかなる!!
自分の力で・・・魔術を生み出すのだ!!
そして・・・強力な魔術でティナを助けに行く!!
その日から・・・・
エルルはティナの帰りを待ちながら、村の出入り口で魔法の研究を始めた。
師匠からもらったこの初級魔術書・・・・たしかに初級であり基本だが、
僕の予想では、上級魔術とは基本の応用であり組み合わせではないかと思う。
エルルは村の出入り口前の広い砂場の上に、木の棒を使って魔方陣を描きこんでいった。
魔術の発動と魔方陣の関係とは!? いったい魔方陣の何が・・魔法の発動の根幹となすのか!?
体内の魔力は どのようにして体内を巡回し魔法陣に影響を及ぼすのか!?
エルルは魔方陣を描き・・・一つ一つの魔法詠唱の単語と図形の意味を推測していく。
そうです! エルルという人物は・・・・凝り性のオタクで頭が良かったのである!!!
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魔術研究を数日間続け ある程度の結論に達したエルルは決心する!!
その日は珍しく・・・エルルは村の出入り口ではなく、すこし森の中にはいり・・・
新しく作りだした魔法のためし撃ちをすることにした。
エルルは適当な大木を見つけ・・・ターゲットにする!!
目をつむり・・・・心の中で魔方陣を思い浮かべながら体内の魔力を前方に放出させた。
ズドドドゥゥゥン
地響きとともに空に稲光が走る!
その凄まじい光は タムラ村の人々も気づいたようで 空を見上げる。
空には白い雲のような帯がつらなり 森へと繋がっていた。
光の衝撃!!!・・・・エルルの体は吹き飛ばされ空中を回転しながら地面に叩きつけられた。
「うっっっっ ターゲットと接近しすぎた!! まさかあんな威力が!! き・・きけん 魔法はき・・」
エルルは気を失う。
その後・・・・・・空で起きた異変の正体を確かめようと 森に入ってきた村人の一人が、とんでもないものを目撃した。
森の木々が吹き飛ばされ 半径20mのクレーターのような穴がぽっかりとつくられており、
その端っこに・・一人の少女が倒れていたのである。
「た・・・たいへんだ。少女が倒れている。 あっ! 村長の娘じゃないか!!」
見た目が勘違いされやすいエルルであった!!
あげくに・・村長の娘と勘違いされる始末!!
エルルは・・・夢うつつの状態となり 村人の一人におわれながら村に戻っていく。
「僕は・・・男なんですけど・・・」
声があまりにも小さく 村人には聞こえなかった・・・
エルル第一回魔法実験!!
雷撃に敗北する。
敗北要因は威力が強すぎ!!
村長宅で数日間・・・エルルはベッドで寝込むことになってしまった。
そんな時、村外から来ていた商人が村長宅に訪れており
エルルの父親・・・すなわち村長との会話を 壁越しから聞いてしまった。
・・・・・その内容とは、オカルト的な話であった。
謀反を起こした大貴族の最後の生き残りである・・とある令嬢が王都にて処刑されたのだが
その令嬢は首がないにもかかわらず、恨みによって復活し、自分の生首を持ちながら王都で大暴れ
そして・・・・その王都を破壊つくした後、その首無し令嬢は いずこかへと去っていったらしい。
( 伝聞や噂話は決して事実を伝えないのである!! かなり脚色された話が伝わったのであった! )
エルルはベッドで寝込みつつ その話を聞いて・・・ピンときた!!
その令嬢とはティナちゃんではないのか!!
もはや寝込んでいる暇はない!! ティナちゃんを探しに行く!!
たとえ・・・・首がなくてもティナちゃんに会いたい!?
僕は 首がなくてもティナちゃんが好きだ。
その日のうちに・・・村長宅では 書置きを残してエルルは村から旅発ったのである。
もちろん・・村ではエルルの家出で大騒ぎになってしまっていた!!
村人の多くは、すぐにエルルの後を追って連れ戻すべきだと発言する者が多かったが、
エルルの父親である村長は、連れ戻すのを諦めた。
「見た目は・・・たしかに子供に見えるが、すでに15歳になっている。 俺も15の時には冒険者として旅に出た。
ならば・・・行かせてやるべきだろ!」
そんな村長の発言に村人たちは反発する。
「娘を一人でいかせるのは・・・いかがなものか!?」
「!? エルルは男だぞ!」
「え~~~~!!」
村人たちの驚きの喚声が村に響きわたったという!!
そして、何人かの若い男がショックのあまり青い顔になっていた。
どうやら この若い男たちは エルルを口説こうとしてたらしい・・・
(ロリコン!?)
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エルルは・・・タムラ村を後にして・・ひたすら王都へ向かって歩く・・・
しっかり者!?であるエルルは家出をする際・・・
・・・・村長でもある父親が かつて・・・若かったころ、冒険者として世界中を渡り歩いていた時に着用していた冒険者セットを借用してきたのであった。
エルルは山沿いの街道を歩きつつ、その冒険者セットの入ったカバンを開き、皮製の鎧を着用した。
「僕の身長ではちょっと無理かとおもったけど わりと着れるんだね!!」
なにやら・・・赤いリボンが印象的なヒラヒラがついたレース、スカートがふわりと広がっており ファンシーな衣装であった!!
「・・・・・ってこれ!! 女性用だよね!! まさか・・・」
タムラ村村長の若かりし日の衣装・・・・けっして息子や村人にバレてはいけない事実がそこにあったww
女装で冒険していたことを・・・・
そして この女装衣装が 父から子へ受け継がれることになるのであった。
「えっと・・・・・」
まさかの遺伝である!!
そして もっとも恐るべきことは・・・このファンシーな衣装によって エルルのかわいらしさが より引き立ち、
超絶にして天下無敵の美少女にしか見えない男の娘になってしまったことである!!
手鏡で自分の姿を見て絶句するエルル・・・
そして・・エルルはこれ以上、考えることをやめた。
それに・・王都につくまでに いくつかの魔法を開発して 手軽に使える攻撃魔術を開発しないと・・・いけない!!
あんな・・広範囲破壊活動魔法を容易く撃つわけにはいかなかったのである!!
エルルはつまらないことを考えないことにした。
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それから、しばらくして、エルルは大変な危機にさらされることになった。
近道をしようと街道から外れ山岳地帯を横切ろうとしたのは良かったが・・・・まさかの全長4mの魔獣がいたとは!!!
エルル、生涯で初めての魔獣と呼ばれる魔力を帯びた獣との遭遇である。
エルルは腰に差している短剣をもって身構えるのだが・・・・身構え方が分からない。
剣術なんて知らないし見たこともない!! もしかしたら剣術という存在すらしらないかもしれない。
そういうわけで・・・ 適当に短剣を振り回す!! やたらと振り回す!!
そんな、むちゃ振りしているため 魔獣はちょっと 戸惑っているように見えた。
それでも・・・その魔獣は獰猛な目となりエルルを睨む!!
勝負を挑む目であった!
ビシャャァァァーン!!
轟音が鳴り響いた!! 森に住む小鳥たちが一斉に飛び立つ。
晴れているはずの青空に稲光が走り とある場所に落雷が落ち 白い煙が周辺を覆う。
前回の反省をふまえ・・・エルルは敵との距離を十分に離しての攻撃であった。
半日後・・・・・
タムラ村に一番近いメドと呼ばれる町に一人の美少女が現われた。
それも、ただ単に現れたのではない!
その美少女は全長4mのビックイノブタンと呼ばれる巨大魔獣を引きずって町に入り、そのまま冒険者協会に訪れたのであった。
それも・・・その引きずったビックイノブタンは全身、真っ黒で焼き殺されていたのである!!
焼肉のいい香りを漂わせながら冒険者協会に持ち込んだのであった。
協会内では ちょっとした騒ぎになったということである。
ビックイノブタンという かなりの強敵とされる魔獣を焼き殺したこの美少女は間違いなく 高レベル魔術師!!
見た目は幼そうだが・・・この美少女はやばい!!
こんな衝撃的な登場をしたため冒険者協会内のガラの悪そうな冒険者も・・・この美少女にちょっかいをだせない!!
なにか・・・普通ではない雰囲気を かもち出しているのだ。
見た目は美少女だが・・・なんとなく女性の雰囲気をだしていない!!
何かが違う!! 普通と違うのだ! (男の娘だからね)
一人だけ怖いもの知らずの若い男が、この美少女にちょっかいをかけようとしたが、すかさず横にいる老齢の冒険者に止められた。
「あの女は・・・やばい!! 死ぬぞ!!」
この言葉に・・・その若い男は思わず震えあがったのである!!
ちなみに、冒険者協会とは・・・・おもに魔獣退治などをする冒険者たちの互助会のようなものであり 魔獣の売却もおこなっている。
また 協会内の壁には 付近で目撃され魔獣退治の依頼の一覧表が張られており、
冒険者は自分の実力に見合った魔獣狩りの依頼を請け負う仕組みとなっている。
冒険者の収入源は おもに依頼料と魔獣素材の売却からきている。
美少女は冒険者として登録するつもりであったのだが・・・その前にビックイノブタンの売却をする。
こんな全長4mの焼肉状態のものを引きずっていると目立ってしかたがないのである。
冒険者協会内の売却窓口でビックイノブタンを引き取ってもらうのだが・・・・
あまりにも・・・真っ黒(焼肉状態)となっており 売れる素材はなかった!!
しかし、魔獣と呼ばれるこれらの生き物には 魔力をたくわえる器官である魔石が体内にあり、この魔石を取り出せたため、20Gで売却。
美少女は当面の生活費を得ることができた。
中級の宿屋の一泊の宿泊費が1Gであるため20日分に相当する!!
ほくほく顔のエルルは、つぎに冒険者登録をするため 登録窓口に移動する。
すると・・・受付付近にいる冒険者たちが美少女の進路を邪魔しないように すかさず道を開けた。
なにやら 冒険者たちはエルルを怖がっているらしい!?
受付担当の女性職員も なにやら顔が引きつってるのは 気のせいか!?
とにかく エルルは女性職員から差し出してきた冒険者登録書を受け取り、
書類を一通り すばやく書き終えた。
そして その女性職員は提出された冒険者登録書の内容を確かめる。
名前 エル・ルイストル
「エル様ですね!!」
・・・・・エル!? いつもエルルって言われてたけど、よく考えると僕の名前はエルだった!!
あらためて知る本人の本当の名前!?
出身地 タムラ村
「あら! タムラ村から来たの たいへんだったでしょ!!」
「うん・・・街道沿いだと時間が掛かるので 山岳地帯を横切ったら・・・あんな魔獣と遭遇したんですよ」
「あのあたりの山岳地帯は危険な魔獣が多いので、不用意な侵入は危険なのです」
「肝に銘じますよ!! あんな魔獣に不意をつかれたら ひとたまりもないですからね」
年齢 15歳
「15歳!?」
女性職員は思わずエルルを見た!! 年齢の割には幼い!?
性別 男性
「あ~ 性別欄、間違ってますよ。こちらで訂正しときますので・・・」
「えっ!? あっ・・・・あ~」
あれれ~僕・・・・女性で登録されたかも・・・
そして・・・・いつもの恒例のよくある冒険者適正テストを受けるため 冒険者協会に隣接している試験場へと移動した。
強面の試験管がエルルに立ちふさがった。
「ほ~おまえか!! ビックイノブタンを黒後げにした女ってのは!! 見た目はひ弱そうだが・・・魔術は相当なものだろう」
その日、メドの町の冒険者協会裏手の試験場から すさまじい轟音と白い煙が舞い上がった。
面白半分に見物に来ていた冒険者たちは 我先へと逃げる!!
数分後・・・白い霧が晴れた後には・・・・魔法適正テストの的になった鉄製の鎧が黒くドロドロにとけていた!!
「す・・・・すさまじいなぁ こりゃ・・ビックイノブタンも黒焦げのはずだ」
地面に伏せて、ほふく前進状態の強面の試験官は 片手をあげて合格を示した。
試験結果・・・・・
魔法 超A級測定不能
剣術 完全な素人!!
たしかに・・・武器を振り回したことないし・・・・
体力 底辺のF級 同年代の一般女性以下の体力
え!・・・・・・僕、体力が女性以下なの!と心の中で叫ぶエルルだった。
エルルは冒険者協会にて 冒険者の初級クラスであるFランクの協会員証が発行された。
魔法は特級だが・・・他は最低すぎるため高ランクの魔獣との戦いは、年齢的に無理だと判定されたためであった。
受付窓口で 係員からエルルに協会員証が渡され 協会の規約などを説明されたのである。
係員からは くれぐれも単独で魔獣と戦わないで下さいと念を押された。
魔法はともかく、他のスキルがとんでもなく低すぎたからであった。
「僕も魔獣からの不意撃ちは怖いですからね 危険なことはしないです!!」
「エル様は将来を有望とされる人材なので くれぐれも注意してくださいね」
「あ・・・うん」
エルルの目的はティナと会うことであって このメドの地で冒険者をすることではない!!
冒険者の協会員証が欲しかっただけであった。
この協会員証は証明書がわりとなるため 他の町への出入りもしやすくなる。
エルルは次の日には さっそく王都に向かって旅発つのであった。
王都に行く間にときおり見つけた魔獣を退治するのだが・・・電撃魔法が強すぎて魔獣を黒焦げにしてしまう。
あげくに広範囲魔法であるため 近くに人がいないことをたしかめて使わないといけない!
大変 扱いづらい魔法であった!!!
もちろん・・・魔獣の素材は回収できない!! 魔石しかとれないのだ!!
エルルは魔術師としては失格であったのである。
「うっうううう~ 僕の魔法は高ランク魔獣専用魔法なの!? これは・・・お手軽魔法を作り出さないと!!」
エルルは王都に向かう道すがら、お手軽に使える攻撃魔法の研究に勤しむのであった。
ちなみに・・・・
エルルは魔法を研究することばかり考えていたため 手持ち金貨20Gで
魔術本を買い、お手軽に扱いやすい魔法を本から学ぶという発想が ぬけおちていたのである。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)エルルがんばれ! ティナへの道は遠い