これが異世界のOS! 電脳ウィロイド2000
王都ナガールの夜空に白い煙が舞い上がり月の光を覆い隠している。
昼間に起きた首無し令嬢事件の影響で、夜になっても混乱が収まらず、
王都各所で発生した火災の鎮火に手間取っていた。
この出来事はファリード王国史に残る大事件の一つとして数えられている。
事件の発端となった首無し令嬢であるセレスティーナの似顔絵が大量に発布され、全国指名手配となった。
賞金金額1万 G!
手配書を見た魔物退治を主な仕事をする冒険者と呼ばれる者が一斉に歓声を上げた!!
「1万Gだと これは・・・年収の20年、いや30年分か」
「し・・しかし!! このお尋ね者は・・・首がなくても死なないやつだぞ」
「殺せないのなら生け捕りだが・・ しかし・・かなりの魔力もちの魔導士らしいぞ! 勝てるのか!?」
「お・・俺なら! やってやるさ! 必ず捕えてやる!!」
冒険者の集まる冒険者協会では この手配書が配られると大騒ぎとなったのであった。
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一方・・・ファリード王国王都の王宮では 国王ヴラドゥスを前にして各閣僚が集まり
この恐るべき首無し令嬢事件に対しての対策会議が行われていた。
「王都は現在、警備隊を各所に派遣しており治安も安定化、火災も徐々に鎮火しているとの報告です」
「うむ! 王都の混乱は なんとか治まりそうだな」
「それにしても・・・ミティリア公爵家の最後の生き残りが あんな化け物だったとは!!」
「我が王家に弓引くミティリア公爵家の最終兵器として 育てられた娘だったのかもしれませんぞ」
「とにかく 危険な存在だ!! 現在、各騎士団を投入して追跡しているが・・心もとない!! 」
「各地の警備隊も投入すべきなのか!?」
「・・・・」
「安心するがよい!! 余はすでに群狼部隊を差し向けている」
「群狼部隊!?」
閣僚の多くは 噂程度に聞いていたが、国王から直にこの部隊の名前を聞かされるとは思わなかったのである。
その秘密部隊である群狼部隊が今! 動き出そうとしていた。
群狼部隊とはなにか!?
王室のごく一部のものにしか知られていない国王直属の秘密部隊。
わずか数人の構成ではあるが 王国中の不正を暴き、秩序を維持する特務機関!!
その特務機関のリーダーが・・・・ティナにオークの王子(仮名)だと勘違い!?されているクルス王子であった。
王国内ではダメダメ第三王子、各地に放浪してグルメ三昧であげくに太ってしまったと散々に言われ方をするが・・・
・・・・実は最精鋭である群狼部隊のリーダーである。
今、赤いマントをひるがえし、オークの王子(仮名)であるクルス王子は群狼部隊に首無し令嬢の追跡を命じると、
10体の黒い影が立ち上がり、疾風のごとく飛び去っていったのであった。
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腕に抱えられた生首のティナは高笑いしながら 王都を脱出した。
これだけの騒ぎをおこしながら・・・騎士も警備兵も追ってこない。
走る首無し死体というインパクトの勝利であった。
「ヒロインに不可能はない!!」
生首となったティナは、勝利宣言をした。
誰も聞いてないけど!!
ティナは王都をぬけ 人気のない森にはいったところで 大木の影で腰を下ろした。
「どうしましょう!? うちは首無し生命体になっちゃってるし!!」
冷静に判断すると これからの生活が大変である。
はたして、首が取れた状態でやっていけるのか!?
そんなことを考えていると・・・
脳内からピコーンと音がなり なにやら目の前にメッセージが表示された。
現実世界でメッセージ表示されているわけでもなく、脳内での表示である。
『 身体の修復をしますか(Y/N) 』
なにこれ・・・えっと!? 脳に埋め込まれた電脳ウィロイド2000とかいう機械!?なのかな
ティナはなんとなく Yのボタンを脳内にある第三の手と言うべきもので押した。
分かりやすく言えば パソコンのマウス表示のようなものである!!
『 生体プラント・身体再生プログラムを起動 』
ティナの手が勝手に動き、 私の頭を、首無し身体の上にちょっこんと乗せると、
なにか電気のようなものが体中を走った。
『 血管、神経、再生スタート!! しばらくお待ちください 』
脳内でなにやら表示された!!
BGMが流れ、おまけに何かのCMまで映っている。
これは師匠のいた異世界のCMというものなのか!?
ちーーーーん!!
3分後になにやら音が鳴り、カップラーメンのようにティナの身体が出来上がった!!
頭と体が合体して、元の健康な体に復帰したのだ!!
背伸びをして 首をごりごりならす!!
完全合体!!
.
ティナ、復活し大地に立つ!!
「治ってる! 頭がくっついてる! 良かった!! これで人間にもどれた~」
大喜びではしゃぎまくるのだが・・・
でも なにやら体の調子が悪い。
体がしんどい!?
体がだるい!?
そうしているうちに、お腹がグ~となった
お腹がすいたのだ! 空腹だ!
たぶん 身体再生するために自己のスタミナを大量消費して・・・そのためにお腹がすいたのか!?
そう考えていると電脳からのサポート情報が入ってきた。
『 空間格納庫に食料がはいってます お使いください 』
なんのことやら分からないが
とりあえず「空間格納庫?」と口で唱えると
脳内に空間格納庫・アイテムの一覧表という項目が表示された。
これは 師匠がよく使っていた空間拡張という魔法だと思う。
大量の荷物を別空間に放り込み、荷運びを楽にするという便利な魔法なのだ!!
某青色猫ロボットのポケットのようなもので 大量の物資を保管できるのである。
「え! うちも師匠のように魔法が使えるの!? やったね!! 師匠のように大魔法使いになれるってことなのね!! 」
『 魔法使いにはなれませんよ!! これは・・・魔法ではなく科学です!! 』
電脳から即座の回答!!!!
「え~~!! 期待してたのに残念! でも魔法って科学じゃないの!? 」
ちょっと不満というか、落胆したけど・・・・
・・・・とりあえず 生首問題というトラブルも解決し・・・気分がよくなったティナは空間格納庫のアイテム欄をのぞき見る!!
なにやら 色々とアイテムが入ってるようだ。
そのアイテム欄の一番上に点滅表示しているものがあった・・・それはメモ用紙と書いてある。
そのメモ用紙を電脳内でボタンを押してみると・・・
そのメモ用紙の内容が表示された。
それは・・・師匠からの伝言だった。
{{この伝言をティナちゃんが読んでいるということは かなり危険な目にあったということだと思う。
すまない!! 僕がそばにいれば 危険な目にあわなかっただろうに・・・
この電脳システムは ティナちゃんが危険な状態が発生した場合、起動するような仕組みになっていたのだよ
だから、今のティナちゃんは 大変危険な立場にあると思う。 すぐに身をかくす必要があるだろう
僕はティナちゃんが必要であるであろう様々なアイテムを空間格納庫にいれておいたので・・・有効に使ってほしい。}}
・・・・師匠!!
というか私が危険にさらされているのに 助けに戻って来てくれるとかじゃないのね!!
ま~~いいか!!
師匠の遺言は・・・ありがたく賜りました!! (死んでないけど・・・)
とにかく・・・・このアイテム欄には・・・
服やら武器やら家具やら
割とたくさん入っている!!!
師匠の遺産としていただきます!(死んでないけど・・・)
感謝しないとね!!!
あっ! ・・・・食べ物発見!!
☆ 朝食セット 10/10
ボタンをポチッと押す!!!
すると・・・・・
自分の額から違和感を感じた。額からなにか光が放出されている!
そして 放出された光の先に・・・
テーブルが出現し そのテーブルの上に料理が並べられていたのだ!!
ピコ―――ン!!
『 ティナ様! これはあなた様の額に埋め込まれているデバイスでございます。様々な用途に使用できる便利なデバイスです 』
電脳からのメッセージを全く理解できないティナ。
デバイスって・・・なんだ!?
ま~いいけど! 便利なことだけは理解しました!!
とりあえずティナは空間格納庫から 出された料理をみた!!
「こ・・・これは ときおり師匠がつくってくれた不思議な料理じゃないか!!
でも・・腐らないのかな」
するとピコーンという音とともに電脳から答えが返ってきた。
『 空間格納庫内では 時間が停止してますので、食べ物は腐りません!! ご安心ください 』
「なるほどね!! 実にご都合主義な仕組みだ」
出来立て ほやほやの料理に思わず においを嗅ぐ。
この世界ではめずらしいご飯とみそ汁 焼きたての焼き魚。
「おいしそう!!」
食べる前に うちは試しに実験してみた。
「空間格納庫」と口に唱え、テーブルを手でさわると、テーブルと朝食セットは消滅し
アイテム一覧表にもどった。
「ほ~~ 出し入れ自由ってことね!! これで安心ってとこかな」
改めて、料理とテーブルを空間格納庫から取り出し、
暖かい日差しを照らす木漏れ日の中、うちはおいしく、料理を頂きました!!
「なんてすばらしいの!!・・・口の中で・・ご飯とみそ汁が盆踊りをするようなハーモニー感!?」
どこかのグルメアニメのようなセリフを喋ってみたりする。
ティナは充実な食事によって感無量の気持ちにひたりきり そして・・・身体再生によって失われたスタミナもみるみる回復した。
「まんぷく!!! 完全回復!スタミナok」
ティナは椅子に腰かけ お腹いっぱいになった腹をポンポン叩きながら・・青空を見る。
風で流れる雲を見ながら・・・・・気持ちよくなったティナはゆっくり目をつむり・・・
目をつむると・・・・・真っ暗になるのではなく、なにやら電脳表示され情報が羅列されたのだ!!
そして・・・ビコーンの音とともに
『 ティナ様 なにか御用でも!? 』との音声が・・・・
・・・・ものすごく人に見られている気分!!
なにこれ!? 脳の中に誰かがいるみたい!!
「あ~~ やっぱし いや!! ものすごく違和感!!
頭の中に話しかけられるのって・・・ものすごく いや! 心が読み取られてるみたいで いや!!」
ピコーンの音とともに電脳から返答が来る。
『 わたくしはAIなので 生命体ではありません 気にする必要はないです! 』
「どうみても 人に話しかけられてるようにしか思えないのだけどね!!」
『 それなら空間格納庫内にあるドローンロボを出してくだされば、電脳から通信を飛ばし、そのドローンの口から話すことができますよ
そうすれば 違和感なしに会話ができます 』
「ほへ~!!」
ティナは「空間格納庫」と唱え アイテム一覧表を脳内に表示させた。
『 アイテムグループ欄の中のドローンを検索してみてください 』
「どれどれ・・・・ 色々なものが羅列されているね!!」
☆ 兎ドローン
☆ コアラドローン
☆ 馬ドローン
☆ 馬車ドローン
☆ 鶏ドローン
☆ 鳩ドローン
「とりあえず・・・コアラドローンを選択してみるね」
すると・・・・目の前のテーブル上に・・・・コアラ!?
まんだら模様をした新選組的和服を着たちょっと太り気味なコアラが 腰に手を当て何かポーズをした格好で登場した。
身長は30cmほど・・・愛嬌がありかわいい!?コアラ
「あらっ~かわいい こんなぬいぐるみが欲しかったのよ! 」
『 えっと わたくしはぬいぐるみではなく・・・・電脳ウィロイド2000ミレニアムです・・ 』
脳内の電脳からではなく、愛らしいコアラの口をパクパクしながら答えてきたのである。
これなら 脳内に別人格がいるのじゃないかと錯覚しないですむ!! それになんてかわいらしいの!!
名前ももっとかわいらしくしないと・・・
「うん 電脳ウィロイドなんて・・・かわいくない名前はだめ!! ウィロイドだから・・・ ロイちゃんね ロイちゃんよろしく」
ティナはコアラドローンの頭をなでなでする。
なんてさわり心地がいいんだろ!!
大きさの割には軽いよね! これなら腕にしがみつかれても なんともないわぁ
『 え・・・うん わたくしはロイです ロイでよろしく!』
なんだかAIなのに不満気味のようだったが・・・結局は名前をロイと納得したようだった。
その後 一日中、ティナはロイを抱きまくって 森の茂みを転がりまくった。
いいおもちゃを手に入れて ご機嫌なティナである。
「なんて かわいいんだろ・・・エルル君にも・・・見せてあげたい」
その時・・・やっとエルル君のことを思い出した。
色々なことがありすぎて タムラ村やエルル君のことをすっかり忘れていた!!
「・・・・・きっと うちがタムラ村にもどると 村にとって迷惑になるよね・・・
調子に乗って色々やっちゃったし~ 間違いなくうちは指名手配・・・・
ほとぼりがさめるまで 当分は村に帰れないし・・・エルル君とも会えない!!」
ティナの目に涙がこぼれるのであった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)次回は忘れかけていたエルルの話