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24.三つ子の秘められた能力

 女の人の年齢を無闇に聞いてはいけないと思っていたレオンだったが、ニナに自分の齢を質問されたので、それをきっかけに聞き返した。


「俺の年齢? 十八だけど、みんなは?」


 もちろんこの年齢は事実ではなく、体に合わせるため、サラリーマンだったときの年齢と厨二の真ん中を取った値である。


「いや、みんなレオンより下だよ。リーナは十七、うちは十五、ルイーザ達は十三」

「リーナって俺より年下なんだ」

「背がでかいから、よく間違えられる」

「三つ子はもっと下かと思っていた」

「背がちっこいし、しゃべり方が幼いからそう見えるだけ」

「なるほど」


 話が終わってニナは畑に(うね)を作っていたが、ふと思いついたように顔を上げて、土を耕すレオンに声をかけた。


「そうだ。レオンさ。今日、町に行ってみないか?」

「町?」

「ドリッテシュタット」

「是非行ってみたい」

「なら、野菜の搬入に付き合ってくれ」

「了解」


 それから二人がマリアとエマを手伝って、キャベツに似たコールと呼ばれる野菜を荷車に積んでいると、ルイーザがみんなの所へ駆け寄ってきた。


「今日はドリッテシュタットに行かない方が良い」


 ルイーザの言葉に首を傾げたのはレオンだけだった。


「そうか! なら、キュルビスに積み替えてツヴァイテシュタットに行くか!」


 エマの一言で荷物の積み替えが始まった。腑に落ちないレオンは、忙しく積み替えるエマの背中へ問いかけた。


「なんで行き先を変えるんだ?」

「ルイーザのお告げは外れたことがないんだよ!」

「外れたことがない? まさか、未来予知が出来るとか?」


 レオンは、服の後ろが引っ張られるので振り向くと、服をつまんでいるニナが無言で頷いた。


「マジか……」

「まじ?」

「本当かって意味」

「それ、黒髪族の言葉?」

「うーん、その言葉は引っかかるが、まあ、そんなところか」

「ルイーザって未来が見えるんだ。それに、めちゃくちゃ計算が速い」

「本当に?」


 ニナがルイーザを手招きして質問する。


「今日あのコールを売るのをやめてあっちのキュルビスを売ると、いくら損する?」

「3銀グロシェンと2と1/2ペニヒ」


 ニナ言い終えた途端に即答だ。


「そこでビックリしているレオンに説明してあげな」

「うん。コールは80個あって売値が1と1/2ペニヒだから12銀グロシェン。キュルビスは70個あって売値が1と1/4ペニヒだから8銀グロシェンと7と1/2ペニヒ。だから」


 レオンは目を白黒する。


「なんで野菜の数まで分かるんだ?」

「見ればすぐに分かるよ」

「あれを見ただけで?」

「うん」

「一瞬で?」

「うん」

「一応聞くが、こっちの銀グロシェンは良貨じゃない方だよな?」

「うん。ここでは良貨なんか流通してないよ」

「計算が速いのは分かった。物の数まで瞬時に把握できるのは驚いたが。で、確認だが、未来に何が起こる?」


 ルイーザが眉を曇らせる。


「道の途中で山賊が出る」


 数日前に自分を襲った山賊の顔を思い出したレオンは、身震いがした。


「そいつら、こっちにまで来ないよな!?」

「来ないよ」


 安堵するレオンにニナが得意げな顔を向ける。


「これがルイーザの能力さ。でも、欠点がある」

「欠点?」

「体調の具合が悪いと能力が発揮出来ない。だよな、ルイーザ?」

「うん」

「なるほど。勘が冴えないって感じか」

「ううん。勘じゃない。目の前にパーッと景色が浮かんでくるの。それが、具合が悪いと何も浮かばないの」



 その後、レオンはアロイジアが人の心を読めて、動物――それはドラゴンも含む――と会話が出来きて操れることを知った。そして、ブレンダは相手の魔法を無力化出来ることを知った。この無力化は、どんな結界をも破壊できるのだという。


 レオンが三つ子の能力を知った頃、畑仕事をしている最中にニナが近寄ってきて耳元で囁いた。


「妹達の能力のことは、誰にも言うなよ」

「わかった」

「絶対だぞ」

「これでも口は堅いから心配するな。……しかし、恐ろしい能力を持っている三つ子だな」


 ニナが(うな)()れて溜め息を吐いた。


「父ちゃんがこの能力を知って、隠すのに苦労していたんだ。分かるよな?」

「ああ、もちろん」

「妹達が人前でうっかり披露しそうになるから、父ちゃんいつもヒヤヒヤしていた」

「だろうな。俺が親だったら、毎日が冷や汗かいて胃が痛くなる」

「だから、レオンも妹達が何かしでかしそうになったら、止めてくれ」

「了解」

「それに妹達は素直で、人を疑うことを知らないから、悪い奴らに利用されるんじゃないかと心配なんだ」

「気持ちは分かる。もし連れて行かれそうになったら、俺が守ってやる」

「よろしくな」


 ニナが立ち去ろうとするので、レオンが呼び止める。


「ちょっと聞いていいか?」

「何?」

「三つ子の能力を俺に隠さなかった理由だが」

「理由?」

「アロイジアが俺に最初に会ったときから俺の心を読んでいたんだろ? ってか、何を考えている奴か、アロイジアに調べさせたんだろ?」

「……察しが良いな、レオンって」

「なに、前から青いエプロンの子がこっちを見ていることが多くて気になっていてな」

「バレないようにしてろって言ったんだが」

「それは無理だろ。相手の心を読むってことは、近くにいないと出来ないだろうから」


 レオンがニヤッと笑う。


「で、ニナから見て、俺は合格点をもらったって訳だ」


 ニナも口角を吊り上げる


「レオンは勘が鋭いな」

「年の功だ」


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